脂質の働きと1日の摂取量は?目標量(エネルギーの20〜30%)と飽和脂肪酸・n-3系・n-6系の基準

健康辞苑アイコン 脂質

脂質は、炭水化物・たんぱく質と並ぶ三大栄養素の1つです。この記事では、脂質の働きと、1日にどのくらい摂ればよいか(食事摂取基準)を、脂質全体と飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸の表で説明します。数値と考え方は、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の脂質の章に基づいています。不足した場合と摂りすぎた場合の影響も紹介します。

 

脂質とは

脂質は水に溶けず、有機溶媒(アルコールやエーテルなど)に溶ける化合物です。栄養の面で大切な脂質は脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、糖脂質、ステロール類(コレステロールなど)です。

脂肪酸は炭素と水素がつながった鎖の端にカルボキシ基という部分をもつ分子で、炭素の数は4〜36です。脂肪酸はエネルギー源として使われ、細胞膜の材料にもなります。

脂肪酸は、炭素どうしの二重結合の数で次のように分けられます。

  • 飽和脂肪酸:二重結合がない
  • 一価不飽和脂肪酸:二重結合が1つ
  • 多価不飽和脂肪酸:二重結合が2つ以上。n-6系脂肪酸(リノール酸など)とn-3系脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHAなど)がある

2025年版で基準が決められているのは、脂質全体、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸の4つです。種類の詳しい説明は脂質の種類とは?単純脂質・複合脂質と飽和・不飽和脂肪酸、n-3系・n-6系の違いを確認してください。

旧版の記事では、脂質の構成を示した古い図を載せていましたが、2025年版に合わせて文章で説明し直しました。

 

脂質の機能・役割

脂質は細胞膜の主な材料で、エネルギーをつくる主な材料の1つでもあります。脂肪酸は1gあたり、炭水化物やたんぱく質の2倍以上のエネルギーをもつため、人の体はエネルギーをたくわえるときに、優先して脂質の形でためると考えられています。

脂質は脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)やカロテノイドの吸収を助けます。コレステロールは細胞膜の材料になり、肝臓で胆汁酸に変えられます。

n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸は体の中でつくることができず、不足すると皮膚炎などが起こります。そのため、必須脂肪酸と呼ばれています。

 

脂質の食事摂取基準

食事摂取基準の指標(推定平均必要量・推奨量・目安量・耐容上限量)と、不足・摂りすぎのリスクの関係を示した図

1歳以上では、1日に摂るエネルギーのうち脂質から摂る割合の目標量(生活習慣病の予防のために目指す量)が、%エネルギーで示されています。乳児には目安量が決められています。

脂質の食事摂取基準(%エネルギー)

年齢等 男性 女性
目安量 目標量 目安量 目標量
0~5(月) 50 ─ 50 ─
6~11(月) 40 ─ 40 ─
1~2(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
3~5(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
6~7(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
8~9(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
10~11(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
12~14(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
15~17(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
18~29(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
30~49(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
50~64(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
65~74(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
75以上(歳) ─ 20~30 ─ 20~30
妊婦 ─ 20~30
授乳婦 ─ 20~30

※範囲はおおむねの値を示したものです。

目標量の上限の30%エネルギーは、飽和脂肪酸の目標量の上限(成人で7%エネルギー)を超えないと期待される量として決められています。下限の20%エネルギーは、必須脂肪酸の目安量を下回らないように決められています。

たとえば1日に2,000kcalを摂る人では、20〜30%は400〜600kcalにあたり、脂質1gを9kcalとすると約44〜67gになります(目標量の%から計算した例です)。

飽和脂肪酸の食事摂取基準

飽和脂肪酸は体の中でつくることができるため、必須の栄養素ではありません。一方で、血液中のLDLコレステロールを増やす主な原因の1つで、心筋梗塞などの循環器の病気の危険因子でもあるため、目標量(上限)が決められています。

飽和脂肪酸の食事摂取基準(%エネルギー)

年齢等 男性 女性
目標量 目標量
0~5(月) ─ ─
6~11(月) ─ ─
1~2(歳) ─ ─
3~5(歳) 10以下 10以下
6~7(歳) 10以下 10以下
8~9(歳) 10以下 10以下
10~11(歳) 10以下 10以下
12~14(歳) 10以下 10以下
15~17(歳) 9以下 9以下
18~29(歳) 7以下 7以下
30~49(歳) 7以下 7以下
50~64(歳) 7以下 7以下
65~74(歳) 7以下 7以下
75以上(歳) 7以下 7以下
妊婦 7以下
授乳婦 7以下

※コレステロールには目標量は決められていませんが、いくら摂ってもよいという意味ではありません。脂質異常症の重症化予防のためには、1日200mg未満に留めることが望ましいとされています。

※トランス脂肪酸は必須の栄養素ではなく、摂取量は1%エネルギー未満に留め、それより少なくてもできるだけ低く留めることが望ましいとされています。

飽和脂肪酸の上限は日本人の摂取量の中央値をもとに、成人で7%エネルギーとされています。WHO(世界保健機関)など海外のガイドラインでは、上限を10%エネルギーとしているものが多くあります。

2年以上続けたランダム化比較試験15件(約5万9,000人)をまとめたコクランの系統的レビュー(2020年)では、飽和脂肪酸を減らすと、心臓や血管の病気の発症が合わせて21%少なくなっていました。ただし、死亡(すべての原因による死亡や、心臓・血管の病気による死亡)には、ほとんど差がありませんでした。飽和脂肪酸を減らした分を、多価不飽和脂肪酸や炭水化物に置き換えるのがよいと考えられています。詳しくは飽和脂肪酸とは?1日の目標量と摂りすぎによるコレステロール・心臓病への影響を確認してください。

n-6系脂肪酸の食事摂取基準

日本人が摂っているn-6系脂肪酸のほとんど(98%)はリノール酸です。

n-6系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

年齢等 男性 女性
目安量 目安量
0~5(月) 4 4
6~11(月) 4 4
1~2(歳) 4 4
3~5(歳) 6 6
6~7(歳) 8 7
8~9(歳) 8 8
10~11(歳) 9 9
12~14(歳) 11 11
15~17(歳) 13 11
18~29(歳) 12 9
30~49(歳) 11 9
50~64(歳) 11 9
65~74(歳) 10 9
75以上(歳) 9 8
妊婦 9
授乳婦 9

詳しくはn-6系脂肪酸(オメガ6・リノール酸)とは?働きと1日の目安量、心臓病・血圧との関係を確認してください。

n-3系脂肪酸の食事摂取基準

n-3系脂肪酸には、植物油に多く含まれるα-リノレン酸と、魚介類に含まれるEPA・DHAがあります。

n-3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

年齢等 男性 女性
目安量 目安量
0~5(月) 0.9 0.9
6~11(月) 0.8 0.8
1~2(歳) 0.7 0.7
3~5(歳) 1.2 1.0
6~7(歳) 1.4 1.2
8~9(歳) 1.5 1.4
10~11(歳) 1.7 1.7
12~14(歳) 2.2 1.7
15~17(歳) 2.2 1.7
18~29(歳) 2.2 1.7
30~49(歳) 2.2 1.7
50~64(歳) 2.3 1.9
65~74(歳) 2.3 2.0
75以上(歳) 2.3 2.0
妊婦 1.7
授乳婦 1.7

詳しくはn-3系脂肪酸(オメガ3)とは?EPA・DHAの働きと1日の目安量、多く含む食品を確認してください。

旧版の記事では、2015年版の表(50〜69歳、70歳以上の区分など)を載せていましたが、2025年版の表に改めました。

 

脂質が不足した場合の影響

脂質を極端に減らすと、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)が吸収されにくくなります。また、必須脂肪酸(n-6系・n-3系脂肪酸)が不足すると、皮膚炎などが起こることがあります。2025年版では、口から食事をとれない人などで、このような欠乏症が報告されています。

旧版の記事では、脂質が不足すると「疲れやすくなる」と書いていましたが、2025年版で確かめられなかったため削除しました。

 

脂質を摂りすぎた場合の影響

脂質には、耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)は決められていません。目安にするのは目標量の上限(30%エネルギー)です。平成30・令和元年の国民健康・栄養調査では、18〜29歳と30〜49歳の女性で、脂質の摂取量の中央値が30%エネルギーを超えていました。

2025年版によると、脂質の総量と関係がはっきりしている生活習慣病は多くありません。関係がみられる場合も、脂質がもつエネルギーの多さや、脂質に多い飽和脂肪酸、脂質を減らすと増えやすい炭水化物(特に糖)の影響によるところが大きいとされています。

体重については、脂質を減らす食事を調べた介入試験のメタアナリシスで、脂質が少ないことが、体重の低さや体重の減少と関連していたと報告されています。ただし、その効果はもともとの太り具合によって違うとする総説もあります。

心臓や血管の病気については、介入試験をまとめたメタアナリシスで、脂質の総量を減らしても発症や死亡に有意な差はみられませんでした。脂肪酸の種類を調整することや、脂質を減らして飽和脂肪酸が減ることで、発症のリスクが下がる可能性が示されています。脂質は量だけでなく、どの種類の脂肪酸を摂るかにも気をつけることが大切です。脂肪酸の種類と病気の関係は脂質の摂り方と生活習慣病の関係は?飽和脂肪酸・n-6系・n-3系・トランス脂肪酸と心臓病、コレステロールや中性脂肪が高い人の食事は脂質異常症の食事とは?LDLコレステロール・中性脂肪を下げる食べ方と控えるもので説明しています。

 

脂質を多く含む食べ物

脂質は、植物油、バター、マーガリン、肉の脂身などに多く含まれています。n-3系脂肪酸のEPA・DHAは魚介類に、α-リノレン酸は植物油に含まれています。

文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年から、脂質を多く含む主な食品の値を抜き出しました。

主な食品の脂質の量(可食部100gあたり)

食品 脂質(g)
調合油 100
マーガリン(家庭用、有塩) 83.1
有塩バター 81.0
マヨネーズ(全卵型) 76.0
くるみ(いり) 68.8
アーモンド(乾) 51.8
和牛サーロイン(脂身つき、生) 47.5
豚ばら肉(大型種、脂身つき、生) 35.4
ポテトチップス 35.2
ウインナーソーセージ 30.6
さんま(皮つき、生) 25.6
まさば(生) 16.8
鶏もも肉(若どり、皮つき、生) 14.2
鶏卵(全卵、生) 10.2

※成分表の「脂質」の欄の値です。

同じ肉でも、部位によって脂質の量は大きく違います。豚肉(大型種、生)では、ばら(脂身つき)が100gあたり35.4gなのに対し、ヒレ(赤肉)は3.7gです。鶏肉(若どり、生)も、もも(皮つき)の14.2gに対し、むね(皮なし)は1.9gです。ウインナーソーセージやポテトチップスのような加工食品やお菓子にも、脂質は多く含まれています。

飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸を多く含む食品は、上で紹介したそれぞれの脂肪酸の記事で表にしています。

関連記事

脂質の種類とは?単純脂質・複合脂質と飽和・不飽和脂肪酸、n-3系・n-6系の違い

脂質の摂り方と生活習慣病の関係は?飽和脂肪酸・n-6系・n-3系・トランス脂肪酸と心臓病

食事のコレステロールは1日どのくらいまで?多く含む食品と卵・心臓病の関係、脂質異常症の人の目安

飽和脂肪酸とは?1日の目標量と多く含む食品、摂りすぎによるコレステロール・心臓病への影響

n-6系脂肪酸(オメガ6・リノール酸)とは?働きと1日の目安量、多く含む食品と心臓病・血圧との関係

n-3系脂肪酸(オメガ3)とは?EPA・DHAの働きと1日の目安量、多く含む食品

トランス脂肪酸とは?多い食品と1日の目安(約2g)、体に悪いといわれる理由

脂質異常症の食事とは?LDLコレステロール・中性脂肪を下げる食べ方と控えるもの

PFCバランスとは?理想の割合(目標量)とグラム数の計算方法

三大栄養素の食事摂取基準一覧|炭水化物・たんぱく質・脂質の目標量とバランス

 

タイトルとURLをコピーしました