脂質は、どのくらい摂るかだけでなく、どんな脂肪酸を摂るかによって、心臓の病気や糖尿病などとの関係が変わります。この記事では、脂質全体の摂り方と、飽和脂肪酸・n-6系脂肪酸・n-3系脂肪酸・トランス脂肪酸それぞれと生活習慣病との関係で分かっていることをまとめます。
数値と考え方は、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の脂質の章と脂質異常症の章に基づいています。
脂質全体の摂り方
2025年版では、脂質の目標量を、1日に摂るエネルギーの20〜30%としています(1歳以上、男女同じ)。
- 上限の30%は、飽和脂肪酸の摂りすぎによる生活習慣病を防ぐために決められています。脂質を30%までに抑えれば、飽和脂肪酸も上限の7%を超えにくいと考えられています。
- 下限の20%は、体の中でつくれない必須脂肪酸(n-6系・n-3系脂肪酸)が不足しないように決められています。
脂質の少ない食事(脂質から摂るエネルギーが30%未満)では、血液中の総コレステロールとLDLコレステロールが下がることが示されています。日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、LDLコレステロールが高い人に、脂質から摂るエネルギーを20〜25%にすることを勧めています。
3大栄養素のバランスはPFCバランスとは?を確認してください。
飽和脂肪酸と生活習慣病
飽和脂肪酸は体の中でつくれるため、必須の栄養素ではありません。2025年版では、飽和脂肪酸は血液中のLDLコレステロールが高くなる高LDLコレステロール血症の主な危険因子の1つで、心筋梗塞などの循環器の病気の危険因子でもあるとしています。
飽和脂肪酸を多く摂る人で病気や死亡が増えるかどうかを調べた研究をまとめると、はっきりした関連は見られなかったという報告もあります。一方で、飽和脂肪酸が血液中の総コレステロールやLDLコレステロールを上げることは、大人でも子どもでも明らかです。そのため、2025年版では目標量(上限)を、成人で1日のエネルギーの7%以下としています。
飽和脂肪酸を減らす食事を実際に続けてもらった研究もあります。コクランの系統的レビュー(2020年)は、2年以上続けた15のランダム化比較試験(約5万7千人)をまとめています。飽和脂肪酸を減らすと、心臓や血管の病気の発生をまとめて数えた場合に17%少なくなりましたが、全体の死亡や、心臓や血管の病気による死亡はほとんど変わりませんでした。減らした飽和脂肪酸の代わりに、多価不飽和脂肪酸や炭水化物を摂ることが役立つと考えられるとしています。
詳しくは飽和脂肪酸とは?を確認してください。
n-6系脂肪酸と生活習慣病
n-6系脂肪酸は体の中でつくれない必須脂肪酸で、日本人が摂るn-6系脂肪酸の98%はリノール酸です。
2025年版によると、長い期間追跡した観察研究をまとめた分析では、リノール酸を多く摂ると心臓の病気(冠動脈疾患)が少ない可能性が示されています。一方で、n-6系脂肪酸を増やす介入試験をまとめた分析では、意味のある関連は見られませんでした。n-6系脂肪酸そのものの働きよりも、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置きかえる効果が期待されています。
詳しくはn-6系脂肪酸とは?を確認してください。
n-3系脂肪酸と生活習慣病
n-3系脂肪酸も必須脂肪酸で、α-リノレン酸、EPA、DHAなどがあります。
- 心臓の病気:EPAやDHAを多く摂る人で心臓の病気(冠動脈疾患)が少ないという観察研究は多くありますが、介入試験をまとめた分析は、この考えを必ずしも支持していません。ただし、中性脂肪やLDLコレステロールが高い人たちでは、EPAとDHAで心臓の病気が減ったという分析もあります。
- 糖尿病:介入試験をまとめた分析では、EPAやDHAなどと2型糖尿病の間に意味のある関連は見られませんでした。
- 中性脂肪:魚由来のEPA・DHAのサプリメントでは、血液中の中性脂肪が平均30mg/dLほど下がりました。
詳しくはn-3系脂肪酸とは?を確認してください。
トランス脂肪酸と生活習慣病
トランス脂肪酸は、LDLコレステロールを上げ、HDLコレステロールを下げます。2025年版によると、同じ量を摂った場合、LDLとHDLの比への影響は飽和脂肪酸の2倍ほどです。
日本人の成人が摂っている量は平均でエネルギーの0.3%ほどで、大多数がWHO(世界保健機関)の目標を下回っており、ふつうの食生活では健康への影響は小さいと考えられています。それでも2025年版は、1日のエネルギーの1%未満に抑え、1%未満でもできるだけ少なくすることが望ましいとしています。脂質の多いお菓子の食べすぎなど、偏った食事では注意が必要です。
トランス脂肪酸は、油脂を加工するときにできるもののほか、牛肉や乳製品にも微量に含まれます。どんな食品に含まれるかは脂質の種類とは?で説明しています。農林水産省によると、日本では、食品に含まれるトランス脂肪酸について、表示の義務も濃度の基準値もありません。飽和脂肪酸やコレステロールについても、表示の義務はありません。
脂質異常症のある人は
脂質異常症は、心筋梗塞や脳梗塞の危険因子です。2025年版の脂質異常症の章では、食事と血液中の脂質の関係を次のように整理しています。
- LDLコレステロールを上げるもの:飽和脂肪酸、食事からのコレステロール
- LDLコレステロールを下げるもの:飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置きかえること、水溶性の食物繊維
- 中性脂肪を上げるもの:糖質(果糖などの糖類を含む)の摂りすぎ、アルコール
食事の具体的な注意は脂質異常症の食事とは?を確認してください。
旧版の記事では、2015年版の食事摂取基準をもとに、多くの研究の数値(ハザード比など)を紹介していました。2025年版で確かめられない数値は削除し、現在の考え方に合わせて書き直しました。
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