必須ミネラル-ヨウ素の不足と生活習慣病と病気

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慢性的なヨウ素欠乏は、甲状腺刺激ホルモンの分泌亢進、甲状腺の異常肥大、甲状腺腫を起こし、甲状腺機能を低下させます。妊娠中のヨウ素欠乏は、死産、流産、胎児の先天異常、先天性甲状腺機能低下症による胎児甲状腺機能低下を招きます。重度の先天性甲状腺機能低下症は全般的な精神遅滞、低身長、聾唖、痙直を起こすことがあります。妊婦や乳幼児はヨウ素不足になると成長に大きな問題を残すことになってしまいます。重度の神経学的障害を伴わず、甲状腺の萎縮と線維化を伴う粘液水腫型胎生甲状腺機能低下症を示すこともあります。

 

がん(生活習慣病)

ヨウ素やビタミンB12は遺伝子の修復にかかわると言われており、欠乏することにより、がん抑制遺伝子の修復ができず、がんになるリスクが高まる可能性があります。慢性ヨウ素欠乏症では、濾胞性甲状腺がんのリスクが上昇する報告があります。一方、日本人を対象にした甲状腺がん発症の報告では、閉経後の女性でヨウ素を含む海藻類をほぼ毎日食べるグループは、週2日以下しか食べないグループに比べて甲状腺がん、特に乳頭がん発症リスクが上昇してるので注意が必要です。

 

甲状腺機能低下症(ヨード欠乏症)

ヨード欠乏症は、ヨウ素の摂取不足によって生じる甲状腺機能低下症です。甲状腺ホルモンの欠乏を改善しようとして体内では脳下垂体から甲状腺刺激ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺が肥大する症状が知られています。発展途上国ではヨウ素を含む甲状腺ホルモンの摂取不足により甲状腺ホルモン自体を合成できないことが甲状腺機能低下症の原因なっています。その他、手術による甲状腺を摘出や放射線療法により甲状腺機能を廃絶により甲状腺機能低下症となります。

クレチン症の多い地域を調査すると、児童はクレチン症でなくても知能テストでヨード欠乏のない地域に住む児童に比べてIQが約10%度低下している神経発達障害が起こることが知られています。また、母体における軽度から中等度のヨウ素欠乏症によっても、小児の注意欠陥・多動性障害のリスクが増大することも確認されています。成人では、軽度から中等度のヨウ素欠乏症により甲状腺腫が起こるほか、甲状腺機能低下症に続発して精神機能障害や作業生産性の低下がみられます。

 

クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)

ヨード欠乏症の典型例は妊娠中にヨード欠乏状態にあった母親から生まれた小児に見られるクレチン症です。生まれつき甲状腺のはたらきが弱く甲状腺ホルモンが不足する疾患です。発生頻度は3000-5000人にひとり程度と推定されています。出生後の早期には、元気がない・哺乳不良・体重増加がよくない・黄疸の遷延・便秘・手足がつめたい・泣き声がかすれているなどの症状が現れることがあります。長期的には身体の成長や知的な発達が遅れてしまうことが報告されています。

クレチン症は粘液水腫型クレチンと神経病型クレチンに大別されます。

粘液水腫型クレチン
粘液水腫型クレチンは成人の甲状腺機能低下症に見られるような粘液水腫を伴い、成長遅滞と軽度の知能低下が起こります。成長すると低身長で知恵遅れの成人となるがある程度の自立が可能です。

神経病型クレチン
神経病型クレチンでは、重度の知的障害、四肢の痙性麻痺、聾唖、斜視などの身体障害を伴い、起立、歩行などの日常動作も困難になります。

現在日本では新生児マススクリーニング検査がおこなわれており、事前に発見することが可能です。

 

 

ヨウ素の摂取基準については必須ミネラル-ヨウ素の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

ヨウ素の過剰摂取については必須ミネラル-ヨウ素の過剰摂取による副作用(過剰症)を確認してください。

 

 

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