ナトリウム(塩分)の効果・効能と不足欠乏の症状

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ナトリウムは必須ミネラルになります。主に食塩という形で食べ物や飲み物からナトリウムを摂取していて、体重の約0.15%を占めています。ナトリウムは体液のうち細胞の外にある細胞外液の主要な成分です。ナトリウムは、カリウムとともに水分調整、細胞内外の物質交換、筋肉や心筋の弛緩に作用し、神経の刺激伝達に働きかける役割があります。このため、体内の水分量の調整、細胞機能の維持、筋肉の収縮・弛緩、神経機能の維持などがナトリウムの主な効果になります。

 

ナトリウムの効果・効能

 

水分量の調整

ナトリウムには水分量を調節する効果があります。水分量の調整は浸透圧と容量で調整されていて、どちらもナトリウムが関わっています。

浸透圧の調節
浸透圧はナトリウム濃度に反応します。浸透圧に変化が生じると、その情報が視床下部に伝わり、浸透圧が上昇していれば抗利尿ホルモンの分泌が増加し、それが腎臓に作用して集合管からの水の再吸収が促進されます。再吸収された水によって体液中のナトリウム濃度が薄められ、浸透圧は一定に保たれて正常化します。逆に浸透圧が低ければ、抗利尿ホルモンの分泌は抑制されて、集合管からの水の再吸収を抑制します。このため、ナトリウムには浸透圧を一定に保つのに関わります。

容量の調節
容量は体液のナトリウム量の増減に反応します。水分量ではなく細胞外液のナトリウム量を増減させることで、ナトリウムによって保持される水も含めた体液量の調節します。塩分を取りすぎるとむくみが発生するのはこの影響によります。調節系に深くかかわるのがレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系です。細胞外液の量が増加すると、頸静脈洞にある受容体がそれを感知して、アルドステロンの分泌を抑制するとともに心房性ナトリウム利尿ペプチドを増加させます。アルドステロンの低下により腎臓でのナトリウムの再吸収が抑制され、心房性ナトリウム利尿ペプチドによってナトリウムの腎排泄が増え、結果として細胞外液のナトリウム量が減少して、それによって保持される水も減少します。このため、ナトリウムには体液量を正常に調節するのに関わります。

 

細胞の浸透圧調節・機能維持

細胞内にはカリウムが、細胞外にはナトリウムが多く存在してバランスをとっています。浸透圧とは水や溶媒を引っ張る力の強さのことで、水に溶ける溶質の濃度によって決まり、濃度が濃いほど浸透圧は高くなります。細胞の外側と内側には、ナトリウムやカリウムなどの電解質を含む体液とよばれる水分があります。細胞の外側のある体液は細胞外液といい、内側にある体液を細胞内液といいます。細胞外液にはナトリウムが多く含まれて、る細胞内液にはカリウムが多く含まれています。このふたつの成分の濃度バランスを正常に保つことで、細胞の機能は調節されています。ナトリウムとカリウムのどちらかの濃度が濃くなると、濃度を一定にするために細胞膜を通して濃度の薄い方から濃い方へ水分が流れます。ナトリウムが不足すると細胞外液中の水分が細胞内に移動するために循環血液量の減少が大きくなり、ナトリウム欠乏性脱水をおこす可能性があります。

 

酸性とアルカリ性の調節

血液は通常、pH7.4の弱アルカリ性ですが、激しい運動をすると酸性になり、pH7を切ると呼吸困難、pH6.8以下になると死亡に至ります。ナトリウムは酸を中和し、血液のpHを正常に保つ効果があります。pH値とは水溶液の酸性・アルカリ性の度合いを示すもので、7が中性、7以上はアルカリ性、7以下は酸性とされます。体液のpH値は7.4(±0.05)の範囲内で一定になるように保たれていて、酸塩基平衡が崩れ酸性側に傾き7.35以下になることをアシドーシス、塩基側に傾き7.45以上になることをアルカローシスといいます。酸塩基平衡が崩れると下痢、嘔吐、脱水状態などの症状が現れます。ナトリウムは酸を中和する効果があるため酸塩基平衡の維持に関わっています。

 

血圧の調節

体の体液ではナトリウムの濃度が決まっており、その割合を超えて塩分を摂取すると、血漿浸透圧が上昇します。
このため、高くなったナトリウム濃度を薄めようとして水を補給しようとします。濃度を下げようと水分が体に入って血液量が増えるため、血管内の圧力が上がり、血圧が高くなります。この状態が続くと高血圧症になります。逆にナトリウムが低くなると血液循環量が減少して血圧が低くなり、脱水症状を起こす可能性があります。

 

神経の機能維持と情報伝達

五感による情報伝達は神経細胞の細胞膜に存在するイオンポンプを介して、ナトリウムとカリウムが入れ替わるときに生じる電気信号を通して行われます。体内のナトリウム濃度が下がると、電気信号が良好に伝わらなくなり、正しい情報伝達が行われなくなります。その結果、めまいやふらつき、昏睡症状を招く可能性があります。

 

筋肉の収縮・弛緩

ナトリウムは筋肉の収縮や弛緩に関わります。筋肉を収縮させようとすると、ナトリウムは細胞外から細胞内へ、カリウムは細胞内から細胞外へ移動します。この移動により電流が発生し、筋肉細胞が刺激されるシグナルとなり筋肉が収縮します。筋肉が弛緩させようとするときには反対の反応がおこります。ナトリウムとカリウムのバランスが崩れると、筋肉が正常に動かなくなってけいれんを起こす可能性があります。また、不整脈や全身の脱力感といった症状が出る可能性があります。

 

吸収の補助

ナトリウムは消化された栄養素が小腸から血液中に溶け込む補助の役割を担っています。糖質はブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸になりますが、ブドウ糖やアミノ酸が小腸粘膜から吸収される際に、ナトリウムと一緒に細胞内に取り込まれます。ナトリウムが不足した場合、ナトリウム欠乏に陥る可能性があります。

 

ナトリウムの不足・欠乏の症状

次の傾向や病気・症状に心当たりのある方はナトリウムが不足している可能性があります。

 

脱水症状に関連した症状

のどの渇き、口の中が乾く、食欲不振、嘔吐、めまい、立ちくらみ、倦怠感、頭痛、低血圧、麻痺、頻脈、意識障害、皮膚の色が青白くなる、体温の低下などの症状がみられます。特にスポーツ・運動をしている人、おう吐や下痢をしている人は注意が必要です。

 

低ナトリウム血症に関連した症状

軽度の場合、個性の変化、嗜眠、錯乱などの主として精神状態の変化の症状が出る可能性があります。重度の場合、昏迷、神経筋の興奮性亢進、反射亢進、痙攣、昏睡などの症状が出る可能性があります。

 

筋肉に関連した症状

痙攣、不整脈などの症状が出る可能性があります。

 

神経系に関連した症状

精神不安定、精神障害、昏睡状態などの症状が出る可能性があります。

 

 

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