ヨウ素は必須ミネラルの1つになります。体内では合成できず、食事から摂取する必要があります。ヨウ素は特に甲状腺に多く含まれ、その機能を助ける働きがあります。甲状腺では甲状腺ホルモンの成分として使用されます。ヨウ素は甲状腺を剌激して代謝速度を調節する甲状腺ホルモンの成分として、モノヨードチロキシン、サイロキシン、トリヨードサイロニンを合成します。甲状腺ホルモンは交感神経に作用してエネルギー代謝、心臓の調整、血圧の調整、脳の発育、たんぱく質の合成などにも関係しています。成長ホルモンにも深く関連し、皮膚や毛髪を健康にするほかに脳や神経系の働きにも影響を及ぼします。甲状腺が正常に機能するためにも重要な役割を持っています。また、コレステロールの低下、動脈硬化の予防,脂肪の燃焼効果などがあります。なお、ヨウ素は基礎代謝を高めることから、甲状腺の機能が異常に高まり基礎代謝が過度に上がるバセドウ病などの治療の際には、ヨウ素の摂取が制限されることがあります。
ヨウ素不足すると甲状腺ホルモンの生成不足により、甲状腺の肥大、甲状腺腫、精神発達の遅滞、甲状腺機能低下症、クレチン症、成長発達異常、舌の巨大化、嗄声、動作の緩慢さなどが起こる可能性があります。
ヨウ素の効果・効能
代謝を促進
ヨウ素が関連する甲状腺ホルモンは、全身の臓器に作用して身体の機能を正常に働かせるための様々な働きをします。甲状腺ホルモンは身体のほとんどの組織に作用して、酸素の消費量を増加させ、基礎代謝量を高める働きがあります。また、交感神経系に作用し、心臓の収縮力や心拍数を高めたり、血圧を調節したりします。これにより、体温を高める効果もあります。糖質、脂質、たんぱく質の代謝を促すため、糖値の上昇や血中コレステロール、中性脂肪といった脂質を低下させる効果もあります。このため、動脈硬化の予防やダイエット効果もあります。
糖代謝
小腸の腸管からのブドウ糖の吸収し、糖新生および肝グリコーゲン分解を促進します。このため、血糖上昇、各組織での糖の利用の促進し、糖新生の増加を行うことで血糖を増す効果があります。
脂質代謝
肝臓においてコレステロール、リン脂質、中性脂肪の合成を促進します。同時にコレステロールの分解、排泄、中性脂肪の分解や遊離脂肪酸の放出も促進します。このため、脂肪燃焼とコレステロールを低下させる効果があります。
たんぱく質代謝
ヨウ素を成分に含むサイロキシンは血中に最も多い甲状腺ホルモンでエネルギー代謝、たんぱく質の合成と分解を促す効果があります。
成長促進
ヨウ素は代謝を促進することで、皮膚や髪、爪を維持する効果があります。また、神経細胞の発達や末梢組織の成長にも関わるため、神経細胞を形成して、脳の発育を促す働きがあります。また、タンパク質から骨や骨格筋を作る働きもあります。ヨウ素は胎児や乳幼児にとって正常な発育のために重要です。ヨウ素が不足した妊婦では、甲状腺機能に障害を生じ、精神・神経や身体の発達に障害のある子供が生まれるという報告もあります。成長の促進に関わるため、乳幼児や成長期の子どもには特に必要な成分です。
神経系の維持
ヨウ素は神経伝達物質などのドーパミンなどのカテコールアミン、メラニン、成長ホルモンの生成を補助する働きがあります。また、中枢神経の神経細胞の発育を促し、神経発生、神経の移動、神経細胞の軸策や樹状突起の形成、髄鞘の形成、神経接合部の発生、神経伝達物質の調節など脳の発達に必要です。特に神経細胞の髄鞘の発育に必要です。不足すると精神活動が低下します。また、ヨウ素の不足による甲状腺ホルモンの生成不足で、精神発達の遅滞、クレチン症、成長発達異常などが起こります。特にクレチン症はヨウ素欠乏に起因する疾患です。母親のヨウ素欠乏を主な原因とし、胎児に精神障害と神経系の障害を伴う成長不全をおこします。
ヨウ素の不足・欠乏の症状
次の傾向や病気・症状に心当たりのある方はヨウ素が不足している可能性があります。
甲状腺機能低下症
常に眠い、記憶力の低下、倦怠感、だるい、やる気が出ない、皮膚の乾燥、寒がり、夏でも汗をかかない、むくみ、体重の増加、脱毛、便秘、月経や妊娠などの異常の症状があります。
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
新生児期の早期には黄疸が続く、便秘、ヘルニア、巨舌、かすれた泣き声、手足の冷感など症状があります。長期的には知能低下や発育障害になります。
成長発達異常・発育不全
成長の遅れ、精神的発育が遅れなどの症状がでる可能性があります。
甲状腺関連
甲状腺の肥大、甲状腺腫などがあります。
その他
肥満、運動機能減退などの症状が出る可能性があります。
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