ビタミンB12は、葉酸とともに正常な赤血球をつくり、神経の働きを保つのに欠かせないビタミンです。この記事では、ビタミンB12が不足すると起こる病気(巨赤芽球性貧血や神経障害)とその検査・治療、生活習慣病との関係、不足しやすい人をまとめます。
数値と考え方は厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づき、症状や原因はMSDマニュアル家庭版「ビタミンB12欠乏症」と国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報(ビタミンB12)で確かめています。
ビタミンB12の不足で起こる病気
巨赤芽球性貧血(悪性貧血)
ビタミンB12は、葉酸とともにDNAの合成に関わっています。不足すると赤血球が正常に育たず、大きく未熟な赤血球ができて貧血になります。これを巨赤芽球性貧血といいます。胃から出る内因子(ビタミンB12の吸収に必要な物質)が足りないために起こるものは、悪性貧血と呼ばれます。
貧血はゆっくり進むため、重くても症状が軽いことがあります。顔色が青白い、疲れやすい、力が入らないといった症状が出て、重くなると息切れやめまい、動悸が起こります。
ビタミンB12は肝臓に多く蓄えられているため、不足が始まってから貧血が出るまでに3~5年かかることがあります。
神経障害
ビタミンB12が不足すると、神経にも障害が起こります。手足のしびれやピリピリ感、感覚が鈍くなる、ふらついて歩きにくいといった症状で、腕よりも脚に先に出やすいとされています。進むと、錯乱、いらいら、気分の落ち込みが起こり、さらに認知症のような状態になることもあります。
貧血は治療で通常6週間ほどで回復しますが、神経の症状が長く続いた場合は、治療しても残ることがあります。手足のしびれなどが続くときは、早めに医療機関を受診してください。
症状の詳しい説明はビタミンB12不足の症状を確認してください。
高ホモシステイン血症
ビタミンB12は、葉酸とともに、ホモシステインというアミノ酸からメチオニンをつくる反応に必要です。ビタミンB12が不足すると、血液中のホモシステインが増えます。ホモシステインが高いことは動脈硬化の危険因子とされています。
ビタミンB12欠乏症の検査と治療
検査
MSDマニュアル家庭版によると、ビタミンB12の不足は、ふだんの血液検査で大きな赤血球が見つかったときや、手足のピリピリ感・感覚が鈍くなるといった神経の症状があるときに疑われます。疑われるときは、血液中のビタミンB12の値を測ります。葉酸の不足でも大きな赤血球ができるため、ふつうは葉酸の値もあわせて測ります。
高齢の人では、原因の多くは胃酸が少ないことなどで深刻なものではないため、ほかの検査をしないことが多いとされています。若い人では原因を調べるためにほかの血液検査をすることがあります。内視鏡(胃カメラ)で、内因子をつくる胃の細胞が傷んでいないかを調べることもあります。
治療
治療では多い量のビタミンB12を飲み薬で補います。値が元に戻り、保たれているかを、定期的に血液検査で確かめます。
ビタミンB12の値がとても低いときや、神経の症状があるときは、筋肉への注射で補います。値が戻るまで数週間、毎日または毎週注射し、その後も原因の病気が良くならなければ、月1回の注射を続けます。
ビタミンB12の不足と認知症の両方がある高齢の人では、多くの場合、治療しても認知の働きは良くならないとされています。
生活習慣病との関係
2025年版では、ビタミンB12の摂取と生活習慣病の発症予防や重症化予防との直接的な関連を示す報告はないとされ、目標量は決められていません。
ビタミンB6・葉酸・ビタミンB12のサプリメントで血液中のホモシステインを下げた試験をまとめたコクラン・レビュー(2017年)では、約7万人の結果から、心筋梗塞や死亡は減らず、脳卒中がわずかに少なかっただけでした。旧版の記事では、ビタミンB12が動脈硬化や心臓病、脳卒中を予防すると書いていましたが、この結果をふまえて改めました。
旧版の記事にあった、ビタミンB12の不足で不眠症になる、うつ病になるといった記述も、根拠が確かめられないため削除しました。
ビタミンB12が不足しやすい人
高齢の人
高齢になると、萎縮性胃炎などで胃酸が少なくなる人が増えます。食品中のビタミンB12はたんぱく質と結びついていて、胃酸の助けで離れてから吸収されるため、胃酸が少ないと吸収が悪くなります。2025年版では、高齢者でビタミンB12の栄養状態の低下と神経障害との関連が報告されていると紹介しています。一方、サプリメントのビタミンB12は、胃酸が少なくても吸収されやすいとされています。
胃や腸の手術・病気がある人
- 胃を切除した人(内因子がつくられなくなる)
- 自己免疫性の萎縮性胃炎がある人
- 小腸の吸収部位を切除した人、肥満の手術(減量手術)を受けた人
- 小腸の終わりの部分に炎症がある炎症性腸疾患など、吸収が悪くなる病気がある人
薬を飲んでいる人
糖尿病の薬のメトホルミンや、胃酸を抑える薬は、ビタミンB12の吸収を下げることがあります。メトホルミンについては、系統的レビュー(2016年)で、使っている人は血液中のビタミンB12が低い傾向があり、一部の人は欠乏や境界域になるため、値を確かめることが望ましいとされています。気になる人は自己判断で薬をやめず、医師に相談してください。
動物性食品を食べない人
ビタミンB12は植物性食品にはほとんど含まれません。動物性食品をまったく食べずサプリメントも使わない人は不足しやすく、その母親の母乳で育つ赤ちゃんも欠乏しやすくなります。
予防のための食事
ビタミンB12はレバー、貝類、魚、肉、卵、乳製品などの動物性食品に含まれます。2025年版では、食事1回で吸収できるビタミンB12はおよそ2.0µgまでと推定されているため、1回にまとめて摂るよりも、毎食少しずつ摂るほうが望ましいとしています。
ビタミンB12は吸収量が体の仕組みで調節されるため、耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)は決められていません。
ビタミンB12の摂取基準についてはビタミンB12の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。
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