必須ミネラル-ナトリウム(塩分)過剰摂取による副作用(過剰症)

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日本人の食事には食塩を使用した調理法が多く用いられているため、ナトリウムの過剰摂取が考えられますが、体に必要な量のナトリウムを上まわって摂取した場合、摂り過ぎた分は体外へ排泄され、通常はナトリウムの過剰摂取を心配する必要はありません。ただし、慢性的な過剰摂取の場合は、ナトリウムを体外へ排泄しきれずに体内に蓄積してしまう可能性があります。食塩の摂取量が多い人ほど、脳卒中や心疾患などの生活習慣病や胃がんのリスクが高まる可能性があることが報告されています。ナトリウムの過剰摂取の症状では、消化器症状、高ナトリウム血症、うっ血性心不全、浮腫があらわれることがあります。また、過剰摂取により高血圧になり、それに伴う動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞、腎臓病などのさまざまな疾病を誘発する原因ともなります。

 

ナトリウムの摂取基準についてはナトリウムの機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

 

ナトリウム過剰症

 

高血圧

体の血液のナトリウム量が多くなると、濃度が平均化されるように細胞内の水分が血液中に移動します。これにより血流量が増え、手足を中心に身体全体のむくみや高血圧になります。高血圧とは、世界保健機関(WHO)の基準数値によると、最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上の両方、またはどちらかが高い状態をいいます。高血圧には本態性高血圧症と二次性高血圧症2種類あります。本態性高血圧症の原因は、遺伝や加齢、塩分の摂り過ぎ、過度の飲酒、肥満、ストレスなどが考えられます。二次性高血圧症の原因では、急性腎炎、慢性腎炎、腎盂腎炎などの腎臓の病気があります。

高血圧症自体の症状に目立った症状はありません。初期の症状では、頭痛、めまい、肩こり、手足のしびれ、動悸、耳鳴り、疲れやすいなどがあります。血圧が急に上昇した場合、激しい頭痛や吐き気、嘔吐が起こる可能性があります。高血圧を放置すると、さまざまな合併症を併発し、脳梗塞、脳出血、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、腎疾患、心臓病、腎障害など重大な病気の原因になります。

摂取量に関連した研究では、1150mg/日(食塩相当量約3g/日)以下のグループで血圧が低いことが示され、ナトリウムの排泄量と血圧との正の相関関係が認められた報告があります。このため、ナトリウムの過剰摂取は高血圧などのリスクをあげる可能性があります。

なお、2013年の世界保健機関(WHO)の一般向けのガイドラインでは、成人は食塩5g/日未満の目標値が強く推奨されています。

 

動脈硬化

体の血液のナトリウム量が多くなると高血圧になります。高血圧が続くと、血液の圧力に耐えるために動脈の血管壁が厚くなり、血液が流れる内腔は狭くなります。また、血管が硬化するため、血管内壁が傷つきやすくなります。この状態はコレステロールなどの脂質がたまりやすくなり動脈硬化を起こしてしまします。

 

心疾患・不整脈

ナトリウムとカリウムは心筋の細胞内外の間を移動する事で電気刺激のシグナルを心筋細胞に伝え、これにより心筋の収縮と拡張が行なわれています。ナトリウムの過剰な状態が継続すると心筋におけるシグナルが正常に伝わらなくなり、心臓の鼓動が不規則になる不整脈になる可能性があります。また、不整脈により心疾患を引き起こす可能性があります。

 

脳卒中

カリウム摂取量に対してナトリウム摂取量が多いと心臓病や脳卒中などで死亡するリスクが高くなる研究報告があります。また、食塩10.4gに相当する1日4g以上のナトリウムの過剰摂取は、虚血性脳卒中のリスクをあげる研究報告があります。

 

がん(癌)胃がん・鼻咽頭がん

塩漬けの魚が鼻咽頭がんのリスクを増加させる報告があります。また、胃がんの関係について多くの報告があり、塩漬けの食品、食塩は胃がんのリスクを増加させる可能性が高いとされています。。日本人を対象とした研究では、食塩摂取量が胃がん罹患率や死亡率と正の関連を示しています。塩物は塩分が高く、ニトロサミンなどの発癌物質が含まれています。胃ガンは、ヘリコバクター・ピロリ菌による感染と胃の慢性的な炎症によってリスクが増大する傾向にあり、高濃度の塩分は、胃の細胞内膜に損傷を与えてヘリコバクター・ピロリ菌への感染とガン促進遺伝子損傷のリスクを増加させます。ナトリウムに発癌性があるという報告は認められませんが、塩漬け食物などのナトリウムの過剰摂取は胃ガンなどのリスクを増大させる可能性があります。

 

浮腫・むくみ

体の血液を含む砂防外液のナトリウム量が多くなると、濃度が平均化されるように細胞内の水分が血液中に移動します。血液の水分量が増えることで体にはむくみの症状が現れる場合があります。また、ナトリウムは腎臓の排泄によりコントロールされていて、腎機能の異常で体内ナトリウム量が増加すると、体内での水分保持量が増えます。体内に余分な液体が蓄積するため浮腫と呼ばれる身体の一部や全身に腫れるような症状があらわれます。このため、ナトリウムの過剰摂取と腎機能障害によって浮腫が発生するといえます。

 

高ナトリウム血症

高ナトリウム血症とは溶質に対して水分が不足し、血漿ナトリウム濃度が145mEq/Lを上回ることです。このため、過剰なナトリウムの過剰摂取は高ナトリウム血症になる可能性があります。高ナトリウム血症の主な症状は口渇です。主な徴候は,脳細胞収縮による中枢神経系機能不全に起因し、錯乱,神経筋の興奮,痙攣,昏睡が起こる可能性があります。進行した場合、クモ膜下の出血を伴う脳血管障害、静脈血栓症などで40〜60%の確率で死亡します。

 

 

ナトリウムの不足・欠乏については以下をご覧ください。

ナトリウムの不足と生活習慣病と病気

ナトリウムの効果効能と不足欠乏の症状

 

 

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