モリブデンは摂りすぎても速やかに尿として体の外に出ていくため、健康な人では、ふつうの食生活で過剰症が問題になることはほとんどありません。
この記事では厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)などをもとに、モリブデンを摂りすぎたときに起こることをまとめます。
モリブデンの耐容上限量
成人の耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)は、年齢にかかわらず男性で1日600µg、女性で1日500µgです。小児・乳児、妊婦・授乳婦の耐容上限量は設定されていません。
モリブデンは穀類や豆類に多く含まれるため、日本人の摂取量は欧米人よりも多く、平均で1日225µgです。大豆製品を多く使う献立では1日300µgを超えることもあります。穀物と豆類を多く食べる厳しい菜食の日本人の献立を調べた研究では、平均で1日540µgを摂っていましたが、健康障害は見られませんでした。また、4人のアメリカ人に1日1,490µgのモリブデンを24日間摂ってもらった実験でも、有害な影響は認められていません。
2025年版の耐容上限量は、このアメリカの実験と日本の菜食の献立の研究を合わせて判断して決められました。小児・乳児、妊婦・授乳婦は、十分な報告がないため設定されていません。設定されていないのは、いくら摂っても安全という意味ではありません。
モリブデンの摂取基準についてはモリブデンの機能・役割と食事摂取基準を確認してください。
モリブデンを摂りすぎたときの症状
モリブデンの急性中毒では、下痢をともなう胃腸の障害が起こり、昏睡や心不全で死に至るとされています。慢性中毒では関節の痛みや高尿酸血症など、痛風のような症状が起こることがあります。
食事から体重1kgあたり1日0.14~0.21mgのモリブデンを摂っていた人に、高尿酸血症と痛風のような症状が見られたという報告もあります。ただし、アメリカの全米研究評議会は、この症状にモリブデンが関わっているかは疑わしいとしています。
米国オレゴン州立大学ライナス・ポーリング研究所の解説によると、この痛風のような症状の報告は、食事から1日10~15mgのモリブデンを摂っていたアルメニアの人たちのものです。職場でモリブデンにさらされた作業者で、血液中の尿酸とセルロプラスミン(鉄を酸化する酵素)が増えたという報告もあります。一方、1日1.5mgまでの量では尿酸は上がらなかったとする研究もあります。
サプリメントで起きた急性の中毒の報告は1例だけです。成人男性が18日間で合計13.5mg(1日300~800µg)を摂り、幻覚をともなう急性の精神症状やけいれんなどの神経の症状が出たとされています。
ふつうの食生活での摂取量
ふつうの日本人の食生活では、モリブデンを推奨量の10倍近く摂っていることになります。2025年版の食事摂取基準では、献立を考えるときにモリブデンの摂取に気をつける必要は事実上ないとされています。
モリブデンと銅の関係
ライナス・ポーリング研究所の解説によると、草を食べる反すう動物では、モリブデンを摂りすぎると消化管の中で硫黄とモリブデンの化合物ができ、銅の吸収が妨げられて、命に関わる銅の欠乏が起こります。
人では、1日500µgと1,500µgのモリブデンで尿に出る銅が増えたという初期の研究があります。ただし、より新しく厳密に管理された研究では、健康な若い男性8人が1日1,500µgまでのモリブデンを摂っても、銅の栄養状態に悪い影響はありませんでした。
サプリメントで摂るときの注意
ライナス・ポーリング研究所の解説によると、推奨量より多く摂ると健康によいという根拠は今のところありません。上で説明したように、日本人はふつうの食事から推奨量を大きく上回るモリブデンを摂っており、不足することはほとんどありません。モリブデンの働きのためにサプリメントで補う必要は、ふつうの食生活をしている人にはほとんどないと考えられます。
サプリメントを使うときは、食事から摂る分と合わせて耐容上限量を超えないようにしてください。大豆製品の多い献立では、食事だけで1日300µgを超えることもあります。
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