マンガンの摂りすぎで起こること|神経障害、菜食の人の注意と耐容上限量

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健康な人では、ふつうの食生活でマンガンの摂りすぎが問題になることはありません。ただし、マンガンは穀物や豆類などの植物性食品に多く含まれるため、厳しい菜食など偏った食べ方をすると摂りすぎになる可能性があります。

この記事では厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)などをもとに、マンガンを摂りすぎたときに起こることをまとめます。

 

マンガンの耐容上限量

耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)は、成人の男女とも1日11mgです。日本の菜食の人では、1日10mg近くを摂っている可能性があるとされています。

小児・乳児、妊婦、授乳婦の耐容上限量は設定されていません。ただし、妊娠後期に血液中のマンガン濃度が高いと低出生体重児の割合が高いという報告があり、妊娠中はマンガンを摂りすぎないよう注意すべきとされています。

マンガンの摂取基準については必須ミネラル-マンガンの機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

 

マンガンを摂りすぎたときの症状

マンガンを摂りすぎると、パーキンソン病に似た症状など、神経の障害が起こる可能性があります。

マンガンの慢性中毒は、ほとんどが鉱山などでマンガンの粉じんを吸い込んだ(経気道吸収)ことによるものです。マンガン中毒では、強い精神障害や、パーキンソン病に似た中枢神経の障害、マンガン肺炎が起こります。

米国オレゴン州立大学ライナス・ポーリング研究所の解説によると、吸い込んだマンガンは、食べたマンガンと違って、肝臓で処理される前に脳へ運ばれます。溶接や鉱山、製錬の仕事をする人で問題になります。症状は数か月から数年かけてゆっくり現れ、重くなると、ふるえ、歩きにくさ、顔の筋肉のけいれんなど、パーキンソン病に似た神経の障害が残ることがあります。その前に、怒りっぽくなる、攻撃的になる、幻覚が現れるといった精神の症状が出ることもあります。肺では炎症が起こり、せき、急性気管支炎、肺の働きの低下がみられます。

MSDマニュアル プロフェッショナル版によると、マンガンの中毒は主に鉱石を掘ったり精錬したりする仕事の人に起こるもので、汚染された食品や水からマンガンを摂ることでも起こります。治療は、マンガンにさらされる原因を取り除くことと、金属と結びつけて体の外に出す治療(キレート療法)ですが、神経の症状はよくならないことがあるとされています。

 

マンガンがたまりやすい人

次の人は、マンガンが体にたまりやすい、または影響を受けやすいとされています。ライナス・ポーリング研究所の解説をもとにまとめます。

  • 肝臓の病気がある人:マンガンは主に胆汁に入って体の外に出ます。肝硬変や肝不全でマンガンがたまると、神経の症状やパーキンソン病に似た症状につながる可能性があります。
  • 乳児・子ども:大人に比べて腸からの吸収が多く、胆汁に出す量が少ないため、神経への影響を特に受けやすいとされています。
  • 鉄が不足している人:鉄が不足すると腸からのマンガンの吸収が増え、脳にたまるリスクが高まることが示されています。
  • 点滴で栄養をとっている人:高カロリー輸液のマンガンで神経の障害が起きた例があり、新生児は特に影響を受けやすいとされています。

点滴の微量元素の薬の添付文書(エレメンミック注)でも、マンガンを多く配合した製剤で血液中の濃度が上がった例や、パーキンソン様症状が現れた例の報告にふれています。長く使う場合は症状を観察し、必要に応じて血液中の濃度を調べること、胆道閉塞のある人には使わないことが書かれています。

 

摂りすぎを防ぐために

マンガンはふつうの食事で不足することはほとんどないため、サプリメントで補う必要は通常ありません。厳しい菜食を続けている人や妊娠中の人は、マンガンを摂りすぎないように注意してください。

マンガンを多く含む食品には、玉露のお茶(1杯150gで6.90mg)、玄米ごはん(150gで1.56mg)、しじみ(50gで1.39mg)などがあります(国立健康・栄養研究所)。食べたマンガンは吸収される割合が0.5~3%と低く、ほとんどが便として出ていきます。健康な人では、ふつうの食生活でマンガンの摂りすぎが問題になることはないとされています。

サプリメントで症状が出た報告は多くありません。ライナス・ポーリング研究所の解説には、ミネラルのサプリメントを何年も大量に使った人や、中国の生薬のサプリメントを使った人の例、塩化マンガンを1日100mgで少なくとも2年間使ったあとパーキンソン病と診断された女性の例が挙げられています。

グルコサミンとコンドロイチンにマンガンを組み合わせた関節向けのサプリメントもあります。同じ解説で紹介されている2つの試験では、マンガンの量が1日30mgと40mgで、日本の成人の耐容上限量を超えていました。副作用は報告されていませんが、血液中のマンガンは測られていません。また、マンガンを含まない製品と比べていないので、マンガンが効果に関わったのかは分かりません。

 

飲み水や粉ミルクのマンガン

飲み水からマンガンを多く摂ると神経の症状につながる可能性があるとされていますが、根拠は限られています。ライナス・ポーリング研究所の解説によると、乾電池で汚染された井戸水を2〜3か月飲んだ25人で重い神経の症状が報告されました。ただし、この水にはほかの汚染物質も含まれていたと考えられています。水のマンガンが1.8〜2.3mg/Lの地域の高齢者を調べたギリシャの研究では神経の症状が多くみられましたが、0.3〜2.2mg/Lの水を飲む人を調べたドイツの研究では増えていません。子どもの知能や行動との関連を調べた研究もありますが、結果は一致していません。

日本の水道水の水質基準は、マンガンの量で0.05mg/L以下です。

粉ミルクのマンガンは母乳より多く、同じ解説によると、母乳は1Lあたり3〜10µg、牛乳を原料とする粉ミルクは30〜50µg、大豆を原料とする粉ミルクは200〜300µgです。ただし、母乳のマンガンのほうが吸収されやすく、粉ミルクで育つ乳児でマンガンの中毒は報告されていません。

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