銅の不足と生活習慣病と病気

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銅欠乏症は先天的な銅代謝異常であるメンケス病と後天的な病気があります。銅欠乏症の原因には、摂取不足、吸収不良、必要量増加、損失増加、銅非添加の高カロリー輸液施行、低銅濃度のミルクや経腸栄養などがあります。主な病気や症状は、貧血、白血球減少、好中球減少、骨異常、成長障害、心血管系・神経系の異常、毛髪の色素脱失、筋緊張低下、易感染性、コレステロールや糖代謝の異常、不整脈、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、リポたんぱく質の酸化を惹起することが報告されています。ただし、貧血を除いて統一した知見はないもようです。

 

先天性銅欠乏症(メンケス病)

先天性銅欠乏症(メンケス病)は伴性劣性遺伝疾患で、血液中の銅とセルロプラスミン濃度の減少、肝臓や脳の銅量の低下が起こり、知能低下、発育遅延、中枢神経障害が生じる病気です。特定のX連鎖遺伝子の突然変異を受け継いだ乳児に発生します。ほとんどの患児が10歳までに死亡します。

 

貧血(銅欠乏による貧血)

銅が関わる酵素には酸素の運搬、電子伝達、酸化還元の触媒として働くものがあり、そのうちの一つにセルロプラスミンという酵素があります。セルロプラスミンの成分は血中で芳香族ジアミンを酸化する唯一の酵素で、鉄代謝にも関与し、二価の鉄を三価の鉄とする機能がありがあります。セルロプラスミンは銅との結びつきが非常に強い事から銅不足によって肝臓や脾臓の鉄が有効に利用されないことがあります。このため、鉄の不足がなくても銅不足のために鉄欠乏性貧血に似た貧血をおこす可能性があります

 

側弯症(骨異常)

骨の形成過程において重要な成分にコラーゲンがあり、これに銅が関与しています。鶏における実験では、銅、マンガン、ビタミンB6などの骨の結合に関連する成分が不足するで側弯症になる確率が上がることがわかっています。

 

骨粗鬆症(骨異常)

骨の結合組織が網目構造となるためには銅が必要です。これによりカルシウムが骨に沈着する組織の土台になります。 骨粗鬆症の女性は強い骨をもつ女性に比べ、銅の血中濃度が低い事がわかっています。

 

成長障害

銅は​骨や血管壁をつくるコラーゲン、エラスチンの生成に働く酵素、神経伝達に働く酵素の成分として働きます。また、赤血球、白血球の細胞の成熟にも銅が必要です。​このため、銅が不足した場合、発育不全になる可能性があります。

 

心筋症(不整脈、心肥大)

心臓は銅欠乏に対する感受性が特に高く、銅欠乏は心肥大や循環器機能などの原因となっています。マウスによる実験において、銅輸送体を欠失したマウスは心臓の銅蓄積量が減少しており、重度の心筋症をおこすことがわかっています。それに伴い、不整脈のリスクが考えられます。

 

神経障害(うつ症状)

銅はノルアドレナリン、ドーパミンの代謝に関与しています。これらは交感神経系を興奮させ抗ストレス作用を持っていますが、不足すると気分が低下する可能性があり、うつ症状をおこします。

 

動脈硬化・心筋梗塞

赤血球にある銅はその多くがスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)酵素の中にあります。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は老化や生活習慣病を引き起こす原因のひとつである活性酸素を分解し、動脈硬化を進行させる過酸化脂質の増加を抑える働きもあります。活性酸素は悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を酸化させ、血管壁に沈着させて血管を傷つけます。過酸化脂質は中性脂肪やコレステロールが活性酸素で酸化されてできる物質です。このため、銅は過酸化脂質を増やす活性酸素を分解し、動脈硬化や心筋梗塞を予防することができます。さらに、高血圧や高血糖などの理由によりプラークが発生するアテローム性動脈硬化症にも銅の関与が示唆されています。

 

 

銅の摂取基準については銅の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

銅の過剰症にについては銅の過剰摂取による副作用(過剰症)をご覧ください。

 

 

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