銅の過剰摂取による病気・過剰症

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銅は通常の食品において過剰摂取が生じる可能性はありません。サプリメントの不適切な利用に伴って過剰摂取が生じる可能性があります。1日に10mgの銅サプリメントを12週間継続的に摂取しても異常を認めなかったとする報告があります。

 

銅の摂取基準については必須ミネラル銅の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

 

銅過剰よる症状と病気

銅の過剰摂取には先天性と後天性があります。先天性の障害として最も知られている銅過剰症にはウイルソン病があります。後天性には銅を含むサプリメントや薬剤などを過剰に摂取した急性中毒を起こすことがあります。症状は金属味がしたり、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、溶血性貧血、黄疸、腎臓の損傷、脳障害、肝臓障害、肝硬変、肝臓癌のリスク増大などです。場合によっては死亡することもあります。

過剰の銅は、活性酸素種の生成を促進して酸化ストレスの要因となり、肥満や高血圧、糖尿病、心疾患、腎不全の悪化にも関わると考えられています。

 

ウィルソン病

銅過剰症の先天的遺伝病にウィルソン病があります。ウィルソン病はまれな遺伝性疾患で、肝臓が正常時のように余分な銅を胆汁中に排泄されず、肝臓に銅が蓄積して肝臓が損傷します。このため、肝硬変を起こします。さらに、銅は損傷した肝臓から血液中に放出され、脳、腎臓、眼などの器官へ運ばれて各部位に蓄積します。これにより、肝臓・脳・腎臓・眼などに疾患がでる病気です。遺伝性代謝疾患ではまれな治療と発症予防可能な疾患です。だだし、銅を取り除く薬を摂取し、その後生涯にわたって銅の含有量が高い食事を避けなければなりません。

ウィルソン病の具体的な銅の蓄積は、遺伝子欠損により銅輸送タンパク質であるATPaseタンパク質(ATP7B)が発現しないため、肝細胞から胆汁への排泄過程と、肝細胞からセルロプラスミンへの銅の導入過程に異常が生じます。銅はアルブミンやアミノ酸などと結合して血流で運ばれ、全身、特に肝細胞や大脳基底核に蓄積されます。蓄積された銅の排泄過程が滞ると、銅が過剰に蓄積されてしまうため、重度の肝障害や中枢神経障害を起こします。

ウィルソン病の症状には振戦、発話および嚥下困難、協調運動の問題、人格変化、肝炎、血清中の銅やセルロプラスミン濃度の減少、アルブミン結合銅の増加、尿への銅の排泄量の増大、腎臓への銅の沈着、角膜のカイザー・フライシャー輪(輪状色素沈着)などがあります。

 

神経変性症(神経変性疾患)

血中の銅が過剰になると一部が脳に蓄積し、パーキンソン病と似た症状が起こります。銅、鉄、亜鉛、マンガンは神経終末のシナプス小胞に含まれており、神経伝達物質の受容体,イオンチャネルなどの活性を調整していることがわかっています。このため、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病など多くの神経変性症の過程で関わっていると考えられます。原因として体内のたんぱく質が、銅、鉄、亜鉛などの金属と結合して可溶性のオリゴマーあるいはプロトフィブリルを形成し、これらがシナプスの機能障害、神経細胞死を引き起こすことが関係していることが考えられています。

 

肝障害

肝細胞に銅が沈着することにより壊死が起こることで肝障害になります。肝硬変、肝炎、肝不全などの様々な症状があります。

 

消化器障害

銅は鉄や亜鉛と吸収因子が同じなため競合が発生します。このため、銅の過剰摂取は鉄や亜鉛の欠乏を招く可能性があります。過剰摂取により腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの症状がでる場合があります。

 

鉄や亜鉛の欠乏については以下を確認してください。

必須ミネラル鉄(鉄分)の不足と生活習慣病や病気

必須ミネラル亜鉛の不足と生活習慣病と病気

 

貧血(溶血性貧血)

溶血性貧血とは赤血球が体内で破壊され、赤血球が不足することに伴う貧血です。赤血球が破壊されることを溶血といいます。主な症状は黄疸です。合併症として胆石症や核黄疸になる可能性があります。溶血の原因として壊死肝細胞から放出された大量の銅が赤血球膜や解糖系の障害、酸化の促進などをおこすことが考えられています。

 

 

銅の不足・欠乏については以下をご覧ください。

必須ミネラル銅の不足と生活習慣病と病気

必須ミネラル銅の効果-効能と不足-欠乏の症状

 

 

 

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