カルシウムの効果・効能と不足欠乏の症状

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カルシウムは必須ミネラルになります。体の中で最も多いミネラルで体重の1.5%~2.0%程度を占めます。体内のカルシウムは、99%は骨と歯に、残りの1%が血液などの体液や筋肉などの組織にあります。骨や歯の形成、血液の凝固の補助、神経や筋肉の興奮を抑える役割など、生命の維持や活動に重要な役割を担っています。

 

カルシウムの効果・効能

 

骨や歯の形成

カルシウムは骨や歯の主要な構成成分で体内で最も多く含まれるミネラルです。体重の1.5%~2.0%含まれています。大部分は骨や歯などの硬組織にリン酸と結合したリン酸カルシウムとしてヒドロキシアパタイトという物質として存在しています。血液中のカルシウムが不足した場合、骨からカルシウムを溶出して不足を補う貯蔵カルシウムとして貯蔵庫としての働きもあります。このためカルシウム不足すると骨軟化症や骨粗鬆症を起こす可能性があります。

なお、血液中のカルシウム濃度が低下した場合、副甲状腺ホルモンが働き、分泌されるパラトルモンは骨からカルシウムを溶かし出し、血液中へ放出します。血液中のカルシウム濃度が上昇した場合、カルシトニンというホルモンが分泌され、骨へのカルシウムの供給を増やします。

 

神経細胞の情報伝達

カルシウムはシナプトタグミンと呼ばれるシナプス小胞膜貫通タンパク質に結合し、小胞体膜とシナプス前膜の膜融合の過程に関与することにより神経細胞の情報伝達を行う役割を担っています。神経細胞間で電気信号を伝達するためには、カルシウムイオンが電気信号の刺激により開くカルシウムチャネルから神経細胞内に入り、そこでカルモジュリンと呼ばれるたんぱく質を活性させます。カルモジュリンが活性化するとアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質が放出され、神経細胞へと電気刺激を伝達していきます。このため、カルシウムは神経細胞の情報伝達に大きく関与しています。

 

神経の興奮の抑制 イライラを解消

カルシウムは神経の伝達が正常に行われるように保つ効果や、緊張・興奮を静めてイライラや過敏症などのストレスをやわらげる効果があります。血液中のカルシウム濃度が不足すると、それによって筋肉や神経の異常興奮が起こりイライラするといわれています。ただし、正常な体の状態の人であれば血液の中に含まれているカルシウムの量が不足しても、骨に蓄えられていたカルシウムが血液中に溶け出すことでカルシウムの濃度をある程度保つことができます。このため、カルシウムの摂取不足が必ずしもイライラなどの症状となるわけではありません。

 

筋肉の収縮

カルシウムは筋肉の収縮に関わります。骨格筋線維の細胞膜は細胞の内側に入り込む形状の横行小管(T管)があります。このT管に隣接して筋小胞体があり,内部に大量のカルシウムイオンを蓄えています。運動神経から送られてきた電気信号が筋肉に到達すると格筋筋線維の筋膜上に活動電位を起こします。この活動電位が,横行小管(T管)を通って細胞内部に伝わると,T管に隣接した筋小胞体からカルシウムイオンが細胞質に放出されます。放出されたカルシウムイオンはトロポニンと呼ばれるたんぱく質と結合した後、アクチンとミオシンという物質の作用により筋収縮を起こします。筋収縮後、カルシウムイオンは筋小胞体内に再び取り込まれます。現象としては細胞質基質のカルシウムイオンの濃度が高まると収縮が起こり、低くなると弛緩します。このため、カルシウムは筋収縮に役立っています。心臓が規則的に動くのもカルシウムの働きが関わっています。

 

血液の凝固

血液の凝固では様々な因子が段階的に反応することで凝固反応が発生します。カルシウムもその段階的作用の中の1つです。血液が凝固するとき、血小板が空気に触れて壊れ、トロンボプラスチンを放出します。次にトロンンボプラスチンと血漿中カルシウムイオンの作用でプロトロンビンがトロンビンに変化します。トロンビンの酵素作用により、フィブリノーゲンがフィブリンになり、フィブリンはカルシウムイオンなどの作用で相互に結合し、網状の構造をつくって赤血球を取り込んで凝集させています。このため、カルシウムは血液の凝固に役立ちます。

 

高血圧の予防

カルシウム不足した場合、カルシウムが血管の細胞内に取り入れられ蓄積して動脈が硬くなり高血圧の原因になります。カルシウムが不足時には、副甲状腺ホルモンが分泌され、骨からカルシウムが溶け出し、血液中のカルシウム濃度を正常に戻そうとします。副甲状腺ホルモンは、カルシウムを細胞内に取り込む働きもするため、血管の筋肉である平滑筋にカルシウムが入り、筋肉を収縮させます。この働きにより、血管の内側が狭くなり高血圧を引き起こします。また、高血圧症の患者ではカルシウムの摂取量が少ない人ほど尿へのナトリウム排泄が少ないことが知られています。カルシウムを多く摂ると高血圧の原因の1つであるナトリウムの利尿作用が起こります。このため、カルシウムは高血圧を予防する効果があるといえます。

 

大腸がんの予防

カルシウムを多く摂取すると大腸がんのリスクが低下させる効果が国立がん研究センターの報告にあります。また、海外でも多数の報告があり、米国がん研究所の報告書ではカルシウムはほぼ確実に大腸がんを予防するという結論に至っています。

 

骨粗鬆症の予防

カルシウムの摂取量が少なく、カルシウム不足の状態になると、骨のカルシウムを溶かして必要なカルシウムを確保します。このため、カルシウムの不足は骨粗鬆症の原因となります。特に女性の場合は、特に骨粗しょう症になりやすいことがわかっています。女性ホルモンは小腸でのカルシウムの吸収を高め、骨形成を助ける役割がありますが、閉経すると女性ホルモンのエストロゲンの分泌が少なくなり急激に骨密度が減っていきます。

 

成長障害の予防

カルシウムが成長期に不足すると、骨や歯の形成障害を起こし、歯の質が悪くなったり、あごの発育に影響が出ることがあります。また、カルシウム欠乏症として小児の場合にくる病になる可能性があります。なお、成人の場合くる病を骨軟化症と呼びます。

 

制酸薬

胃腸薬の一種で、胃内のpHを上昇させ胃粘膜を保護し、胸焼けなどの症状を軽減させるのにカルシウムが使用されます。

 

カルシウムの不足・欠乏の症状

次の傾向や病気・症状に心当たりのある方はカルシウムが不足している可能性があります。

 

骨粗鬆症に関連した症状

骨の発育不良、骨がもろくなる、骨格の変形、背中や腰が曲がる、 身長が縮む、腰や背中が痛むなどの症状がでる可能性があります。

 

くる病・骨軟化症に関連した症状

筋肉痛、筋力低下、骨の痛み、、腰の痛み、股関節・膝関節の痛み、骨盤・大腿骨・下腿骨などの圧痛などの症状がでる可能性があります。

 

低カルシウム血症に関連した症状

手足・顔のしびれ、筋肉の硬直、興奮などの精神症状、不整脈、徐脈、吐き気、嘔吐、下痢などの症状がでる可能性があります。

 

 

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