銅の効果-効能と不足-欠乏の症状

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銅は成人の生体内に約80mg存在し、その約50%が筋肉や骨、約10%が肝臓中に分布しています。銅は必須ミネラルの1つで体内で合成されないため、食事から摂取する必要があります。銅は約10種類の酵素の関わりがあり、酵素と結合して触媒反応が起こす酵素の部分である活性中心として、エネルギー生成、鉄代謝、赤血球や白血球細胞の成熟、細胞外マトリクスの成熟、神経伝達物質の産生、活性酸素の除去、骨の形成、成長を補助する役割を担っています。酵素の補助の例としては、酸素を使う細胞呼吸に必要なシトクロムcオキシダーゼはミトコンドリアにおける呼吸鎖の関連、コラーゲン合成に必須なモノアミンオキシダーゼやリジルオキシダーゼの活性中心、スーパーオキシドアニオンを酸素と過酸化水素に不均化することによって分解して無毒化するスーパーオキシドディスムターゼの活性中心などがあります。

 

銅の摂取基準については銅の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

 

銅の効果・効能

 

エネルギー生成

銅はT細胞やマクロファージなどの免疫を司る細胞のエネルギー産生に関わる酵素のシトクロムCオキシダーゼの構成要素です。このため、エネルギーの生産過程に必要です。

 

代謝(鉄)

銅が関わる酵素には酸素の運搬、電子伝達、酸化還元の触媒として働くものがあり、そのうちの一つにセルロプラスミンという酵素があります。セルロプラスミンの成分は血中で芳香族ジアミンを酸化する唯一の酵素で、鉄代謝にも関与し、二価の鉄を三価の鉄とする機能がありがあります。セルロプラスミンは銅との結びつきが非常に強い事から銅不足によって肝臓や脾臓の鉄が有効に利用されないことがあります。このため、鉄の不足がなくても銅不足のために鉄欠乏性貧血に似た貧血をおこす可能性があります。

 

細胞外マトリクスの成熟

体には細胞以外にも、細胞の周りや細胞と細胞の間などにある細胞外マトリックスといわれる巨大な蛋白質の超分子構造体が存在します。銅に関連する細胞外マトリックスとしてコラーゲンなどがあります。銅はコラーゲンの熟成に必要なリジルオキシダーゼとモノアミンオキシダーゼといわれる酵素に含まれている補酵素です。このため、コラーゲンの生成に関与し、肌や骨などを形成する効果があります。

 

神経伝達物質の産生

銅はノルアドレナリン生成に関与するカテコールアミン産生酵素の成分です。交感神経系を興奮させる物質で、抗ストレス作用を持ち、やる気や意欲を高めます。一方、不安、恐怖、緊張といった感情や精神状態とも関係があります。このため、セロトニンとノルアドレナリンの量を増加させることによって、うつ病を治療する薬としても使用されています。

 

活性酸素の除去

スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素で、銅はスーパーオキシドディスムターゼが酵素と結合して触媒反応が起こす酵素の活性中心です。活性酸素はシミやシワから皮膚がんの肌に関するダメージや生活習慣病など様々な病気や症状に関連があるため、銅は様々な病気や症状に効果があります。

 

骨の形成

骨の形成過程において重要な成分にコラーゲンがあります。このコラーゲンはたんぱく質がポリペプチド連鎖によって結合しています。銅が不足すると、ポリペプチド連鎖に必要なリジル酵素とアミン酸酵素が不足するため、この結合を失わせてしまいます。また、銅はコラーゲンの生成に必要なモノアミンオキシダーゼやリジルオキシダーゼの活性中心です。このため、銅が不足するとコラーゲンを弱体化させ、骨部の基礎構築体系に支障をきたす可能性があります。

 

免疫力の向上

銅は免疫をつかさどる細胞のエネルギー産生に関わるシトクロムCオキシダーゼの構成銅不足です。このため、銅の不足により免疫細胞がうまく機能しなくなる可能性があります。

 

成長の促進

銅は​骨や血管壁をつくるコラーゲン、エラスチンの生成に働く酵素、神経伝達に働く酵素の成分として働きます。また、赤血球、白血球の細胞の成熟にも銅が必要です。​このため、銅は成長を促進する効果があるといえます。

 

髪や肌の維持 メラニン生成の補助

銅は毛髪の色素であり肌を紫外線から守る働きをするメラニン色素をつくるために必要なチロシナーゼという酵素の合成に必要です。このため銅が不足すると、髪や皮膚の脱色、毛髪が縮れたり、肌を紫外線から守れなくなります。また、銅はコラーゲンの生成にも関わるため、髪と肌の健康を維持する効果があります。

 

貧血の予防

銅は血液中に存在するセルロプラスミンというたんぱく質の構成成分です。セルロプラスミンは鉄をヘモグロビンの合成に利用できる形にするために必要な成分です。鉄はヘモグロビンの重要な構成成分ですがセルロプラスミンによって酸化されることで初めてヘモグロビンに生成できます。銅が不足した場合、体内で鉄を利用することができず、ヘモグロビンを合成することができません。このため、銅は貧血の予防に効果があるといえます。

 

動脈硬化・心筋梗塞の予防

血液中の銅は赤血球にも存在しています。赤血球にある銅はその多くがスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)酵素の中にあります。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は、老化や生活習慣病を引き起こす原因のひとつである活性酸素を分解し、動脈硬化を進行させる過酸化脂質の増加を抑える働きもあります。活性酸素は悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を酸化させ、血管壁に沈着させて血管を傷つけます。過酸化脂質は中性脂肪やコレステロールが活性酸素で酸化されてできる物質です。このため、銅は過酸化脂質を増やす活性酸素を分解し、動脈硬化や心筋梗塞を予防することができます。

 

銅の不足・欠乏の症状

次の傾向や病気・症状に心当たりのある方は銅が不足している可能性があります。

貧血

めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすい、疲労,倦怠感、頭痛、顔色が悪い、寒さを感じやすい、耳鳴り、食欲不振など鉄を補給しても改善しない貧血です。他にも眼瞼結膜蒼白舌炎、口内炎、頻脈、心拡大などがみられることもあります。

骨異常・側弯症・骨粗鬆症

身長が縮んだ、背中や腰が曲がってきた、背中や腰に痛みを感じる、脊柱が側方へ曲がる・ねじれる、肩や腰の高さが左右で違うなどの症状があります。主に自覚できるほどの症状が表れるのは更年期を過ぎてからです。

皮膚や髪の症状

白髪が増える、毛髪の色素脱失、毛髪の細かなねじれ、薄毛、皮膚の色素異常、肌荒れなどの症状があります。

成長障害

子供の発育不全

免疫に関わる症状

病気になりやすい、口唇ヘルペスがよく出る、白血球の減少にる免疫力低下、感染症などがあります。

その他

老化が早い、不妊症、更年期障害、甲状腺機能低下、副腎疲労、PMS、動脈硬化、心臓病、抑うつ症状、神経症状などがあります。

 

銅の不足時の病気については銅の不足と生活習慣病と病気をご覧ください。

銅の過剰摂取については銅の過剰摂取による副作用(過剰症)をご覧ください。

 

 

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