亜鉛の効果・効能と不足-欠乏の症状

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亜鉛は必須ミネラルの1つになります。多くの酵素の活性に関与し、主に酵素の構造形成と維持に役立っています。酵素の生理的役割は、免疫機構の補助、創傷治癒、精子形成、味覚感知、胎発生、小児の成長など多岐にわたります。DNAやRNAのリン酸エステルを加水分解によって切断するため細胞分裂にも関与します。人体中では骨に多く、次いで体組織に多くあります。体組織中では眼球、肝臓、筋肉、腎臓、前立腺、脾臓に存在増し、体液としては精液に多く存在します。亜鉛の貯蔵器官は骨と脾臓です。

亜鉛が不足・欠乏した場合、皮膚炎や味覚障害、慢性下痢、低アルブミン血症、免疫機能障害、神経感覚障害、認知機能障害、成長遅延、性腺発育障害などになる可能性があります。亜鉛欠乏症は、亜鉛非添加の高カロリー輸液施行時、吸収障害を伴う疾患に対する経腸栄養施行時、低亜鉛濃度の母乳や経腸栄養剤での栄養管理時に確認されています。

 

亜鉛の摂取基準などは亜鉛の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

 

亜鉛の効果・効能

代謝(糖代謝・アルコール分解)

亜鉛はインスリンの構造維持に必須でもあり、糖代謝にも関与します。血糖値を下げるホルモンはインスリンのみのため、亜鉛は不可欠なミネラルとなっています。

亜鉛は体内でアルコールを分解する時に必要なアルコール脱水素酵素の構成成分としてアルコールの代謝に関わります。体内でのアルコール(エタノール)の代謝はまずアルコール脱水素酵素(アルコールデヒドロゲナーゼ)によりアセトアルデヒドに転換され、アセトアルデヒド脱水素酵素により無害な酢酸へと代謝されます。不足するとアルコール分解にも影響があり、二日酔いや肥満の原因となります。

 

成長・発育と細胞分裂

亜鉛は細胞の分裂に必要な成分です。亜鉛は細胞分裂の際にDNAを複製する働きがあるたんぱく質と、細胞の核中にあるDNAの情報を複製してRNAを合成するポリメラーゼという酵素に含まれています。新しい細胞が分裂するとき、DNAの情報を複製して、それをもとにたんぱく質を合成するといった化学反応が行われており、この反応は亜鉛が構成成分となっている酵素によって進められます。このため、亜鉛は細胞の新陳代謝が盛んで生まれ変わりが多い部位で必要不可欠な栄養素となっています。

肌、爪、胃腸などの細胞では細胞分裂が盛んに行われます。また、成長期の子供は活発に細胞分裂が行われて新しい細胞がつくり出されています。妊婦の場合、胎児期に亜鉛の血中濃度を計測すると胎児の成長に伴って激減することが知られており、胎児は多くの亜鉛を必要とします。このため、新陳代謝が活発な部位、乳児、成長期の子供も正常な発育を促すためは過不足なく亜鉛を摂取することが必要です。亜鉛の欠乏症が発見発見された理由は子供の成長遅延がきっかけです。このため、特に成長期の子供には亜鉛が必要不可欠です。

亜鉛が不足すると成長障害を引き起こす可能性もあります。また、遺伝情報が正しく複製されず、細胞分裂の際にDNAの生成に失敗してしまう可能性が高まります。

 

味覚

亜鉛は味覚を正常に保つ効果があります。味は舌にある味蕾(みらい)という細胞の受容器官で感じとります。味蕾は舌に約2500~3500個あり、舌の部分ごとに甘さ、辛さ、苦さなどを感じることができます。亜鉛はこの味蕾がある細胞が作られるときに必要な成分です。人は味で毒物を確認することがあるため、味蕾(みらい)がある細胞は常に新しく生成され、味覚が落ちないようにしている仕組みをとっています。このため、短期間で次々細胞を生成しており、材料となる亜鉛を常に必要としています。亜鉛を十分に補うことで、味蕾の働きを保つことができます。

味蕾は細胞分裂が盛んな器官なので亜鉛が不足すると働きが衰えます。亜鉛不足により味覚障害が発生する可能性があり、味覚障害も初期の段階では亜鉛の補給で改善しますが、長期に渡ると細胞が完全に壊れてしまう可能性があります。亜鉛が不足してくると体内での食品からの吸収率を高めたり、体外に排出される量を減らす仕組みが備わっていますが、生活習慣や食事により亜鉛が不足する可能性があるため注意が必要です。

 

傷を治す効果

前述したように亜鉛には細胞分裂に必要な成分のため、傷を治すためにも必要です。皮膚に傷ができると亜鉛を構成成分とする酵素が代謝を促進させ、傷ついた部位の細胞分裂を活発にする働きがあります。亜鉛が不足すると傷の治りは遅くなります。

 

視覚

亜鉛は網膜の視覚色素の生成にも関与しています。このため、亜鉛が不足すると視覚障害が発生し、暗闇で視力が低下したり、色覚異常になる可能性があります。

 

健康な肌を保つ効果

前述した細胞分裂にも記載した通り、亜鉛は体の細胞が新しく作られるときに必要なミネラルです。十分な量を摂取することで細胞の生成をスムーズにする効果があります。皮膚の下では常に新しい皮膚が作られており、古い皮膚が垢となってはがれ落ちるた時に備え、常に皮膚の表面に新しい細胞がくるよう準備しています。亜鉛が不足していると皮膚細胞の再生に時間がかかってしまいます。このため、古い皮膚組織がいつまでも肌の表面にとどまることになるため肌荒れの原因となります。特に、皮膚、髪、爪などは細胞の分裂が早いため亜鉛の不足がすぐに症状として現れてきます。肌荒れ以外にも肌のたるみ、脱毛、爪に白い斑点ができるなどの症状でる可能性があります。

コラーゲンは亜鉛、鉄、ビタミンC、プロリン、リジンによって作られるため、亜鉛はコラーゲンの合成に必要であるといえます。動物実験によっても亜鉛を不足させた動物はコラーゲンの顕著な減少が確認されています。亜鉛を十分に摂取することでコラーゲンを合成する代謝反応が促進され、健康な肌を維持する効果が期待できます。

亜鉛にはスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を活性化させる報告があります。スーパーオキシドディスムターゼとは人体内で発生した有害な活性酸素を無毒化する酵素です。活性酸素は呼吸をする限り必ず発生し、細胞を攻撃して肌のシミの原因となります。亜鉛を十分に摂取することでスーパーオキシドディスムターゼが活性化されて肌の老化を防ぐ効果が期待できます。

亜鉛はメラニンの代謝を促す役割もあります。このため、シミやそばかすをなくす効果があります。なお、ビタミンCはシミやそばかすの原因となるメラニンの沈着を防ぐはたらきがありますが、できたシミやそばかすに対しては効果がありません。

 

髪の健康維持

亜鉛は酵素の構成成分となって代謝を助ける働きがあります。また、亜鉛はたんぱく質の合成にも関わっているため、主にたんぱく質からできている髪の毛の生成にもかかわります。特に亜鉛は毛根には多く含まれています。亜鉛を十分な摂取は髪のスムーズな成長につながります。このため、頭皮や毛髪の生成を促進し、抜け毛を防ぐ効果があります。

また、亜鉛は髪の表面で髪を刺激から守るキューティクルの生成にも関わっています。キューティクルはコラーゲンからできているため、コラーゲンの生成に必要な亜鉛が役に立ちます。髪の毛はキューティクルよって紫外線の刺激などから保護していますが、亜鉛不足によりキューティクルがはがれてしまうと、内部のタンパク質や水分が流出して髪の毛が痛む原因になってしまいます。

 

抗酸化作用

亜鉛は活性酸素を除去するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)と呼ばれる活性酸素除去酵素の構成成分であり抗酸化作用の効果があります。また、亜鉛は抗酸化作用をもつビタミンAの代謝を促します。このため、亜鉛にはアンチエイジングや生活習慣病予防にも効果があります。

 

免疫力の向上

亜鉛には粘膜を保護するビタミンAを体の中にとどめる効果があります。また、細菌を攻撃する白血球にも亜鉛が含まれています。このため、粘膜が存在するのどや鼻水・鼻づまりなどの症状を緩和し、傷や病気を回復させる効果があります。また、亜鉛は免疫のに関わる細胞に関与しています。このため、亜鉛を摂取することで風邪などの病気を予防する効果があります。亜鉛が不足した場合、T細胞、NK細胞、B細胞といった免疫にかかわる細胞が減少し、免疫機能が低下します。

 

生殖機能の改善

亜鉛は精液をつくる前立腺や精子、男性ホルモンのテストステロンをつくる精巣に多く存在しており、精子・精液や男性ホルモンの生成に関係しています。精子の形成には必ず必要とされています。また、脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンの分泌にも関与しており、精子や男性ホルモンの分泌を促進します。このため、生殖機能の改善する効果があります。亜鉛が不足すると精液や精子の減少、男性ホルモンの減少、前立腺肥大、勃起障害、性腺の発育不全などの症状がでる可能性があります。また、性腺刺激ホルモンは女性では女性ホルモンのエストロゲンの分泌促進や排卵にも関係しているため、亜鉛の不足が生理不順などの原因となる可能性があります。

 

ホルモンの合成

亜鉛はホルモンを合成するためにも必要不可欠なミネラルです。ホルモンは生殖や血圧の調整、血糖の調整などさまざまな部分で働く物質です。亜鉛は甲状腺から分泌される甲状腺ホルモン、生殖器から分泌されるテストステロンなどの性ホルモン、膵臓から分泌されるインスリンの分泌に関与します。このため、血糖値の改善や生殖機能の改善に効果があります。

 

血糖値

亜鉛はインスリンの構成成分として血糖値の維持や低下にも関与します。インスリンは筋肉細胞の生体膜に血糖を取り込んで血糖値を下げる働きがあります。このため亜鉛が欠乏すると血糖値を一定の範囲内に収めるよう調節する機能の耐糖能が低下します。

 

精神神経系の改善

神経伝達物質を作るために亜鉛が必要です。うつ状態は脳の機能が低下し、神経細胞の刺激伝達がスムーズにいかないことが病因の一つと考えられているため、亜鉛によって脳の機能を高め、精神の安定やうつ状態の緩和に効果があると考えられています。また、亜鉛不足は記憶障害、行動異常、無欲化などの原因になることがあります。アルツハイマー病や無動症の関連が報告されています。このため、亜鉛は精神神経系の病気の予防や改善に効果があると考えられます。

 

 

亜鉛の不足・欠乏の症状

亜鉛は味覚障害、成長障害、皮膚疾患など様々な病気や症状と関わっています。

次の傾向や病気・症状に心当たりのある方は亜鉛が不足している可能性があります。

味覚障害に関連した症状

味が薄くなった,味を感じにくい、全く味がしない、苦く感じる、何を食べても嫌な味になる、味が濃く感じる、口の中に何もないのに苦みや渋みを感じる、作った料理が濃すぎると言われたことがあるなどの症状があります。

成長障害・発育障害に関連した症状

胎児・小児の成長が遅い、身長の伸びにくいなど低身長症、性腺発育不全になる可能性があります。

免疫低下・免疫機能障害に関連した症状

風邪をひきやすい

皮膚や体の疾患に関連した症状

皮膚炎、表皮内水疱、空胞変性、乾癬様
びらん、水疱、乾燥、炎症などの皮膚症状があります。

骨粗鬆症
身長が縮む、腰や背中が痛むなどの症状がでる場合があります。

その他
薄毛、脱毛,髪の毛が細くなる、爪の異常、傷の治りが遅い、肌の乾燥やシミ,シワなどがあります。

精神疾患に関連した症状

気分低下、気分がふさぎ込む、無欲化、、うつ症状、情緒不安定、行動異常、記憶障害などがあります。

性機能障害に関連した症状

性腺機能不全、性発育不全、勃起不全(ED)、不妊症
精子の運動率低下により受精しにくい、精力・性欲の減少、精子の減少、無月経、無排卵、月経の乱れ(生理不順)、妊娠しにくいなどの症状があります。

その他

貧血、食欲不振、下痢、耳鳴りなどの症状がでる場合があります。その他、糖尿病になる可能性があります。

 

 

亜鉛の不足時の病気については亜鉛の不足と生活習慣病と病気をご覧ください。

亜鉛の過剰摂取については亜鉛の過剰摂取による副作用(過剰症)をご覧ください。

 

 

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