たんぱく質と予防-生活習慣病との関連

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たんぱく質エネルギー比率が20%エネルギーを超えた場合の健康障害として、糖尿病発症リスクの増加、心血管疾患の増加、がんの発症率の増加、骨量の減少、BMIの増加などが挙げられます。生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病)の発症と重症化には遺伝要因と環境要因(生活習慣)の相互作用から成り立っていますが、ここではたんぱく質に関連する生活習慣病と予防について記載します。

 

たんぱく質と生活習慣病

高血圧

たんぱく質と高血圧の関係については,未治療で血圧値が120~159/80~99mmHgの患者において、たんぱく質は軽度の降圧効果を有するとの報告があります。大豆たんぱく質、乳製品や低脂肪乳製品でも降圧効果が認められています。しかし、その作用は軽微のためたんぱく質は他の食事性因子との組合せも考えてバランスよく摂取する必要があります。

 

糖尿病

たんぱく質が糖尿病腎症のない糖尿病において、腎症発症リスクになるとする明らかな根拠はないですが、日本人を含む調査によればたんぱく質の過剰摂取が糖尿病の発症リスク増加につながる可能性があります。このためとり過ぎには注意が必要です。

糖尿病腎症では腎臓の血液の老廃物をろ過する機能が低下してしまうため、過剰なたんぱく質や食塩が腎臓に大きな負担をかけます。このため、糖尿病腎症を悪化させてしまう可能性があります。血糖コントロールに加えてたんぱく質や食塩の摂取を控えて腎臓の負担を軽減させる必要があります。

 

腎臓病・慢性腎臓病(CKD)

健康な人はたんぱく質を過剰に摂取すると1週間程度の短期では腎血行動態に変化をもたらし、尿中アルブミンが増加しますが、中期的には腎機能へ与える影響はほとんどありません。

慢性腎臓病患者の場合、たんぱく質制限は末期腎不全に至るまでの時間を延長することから、主に中等度から重度の慢性腎臓病患者に対する食事療法として推奨されています。軽度の慢性腎臓病において、過剰なたんぱく質の摂取が腎機能に悪影響をもたらすかどうかは、報告によって一定していません。高齢CKDステージG3aの患者では、一般的にその他の原因で死亡する確率の方が高い傾向にあります。また、たんぱく質摂取量が低下している高齢の慢性腎臓病患者では、虚弱(フレイルティ)が高頻度に見られることも報告されています。これらのことから、高齢軽症慢性腎臓病患者に対し、健康な高齢者の推奨量以下のたんぱく質制限を行うことは適切でないと考えられます。

推奨量についてたんぱく質の機能・役割と食事摂取基準などを確認してください。

糖尿病性腎症は非糖尿病性腎症と比べて腎機能悪化速度が早く、CKDステージG3aでも尿たんぱく陽性のことが多い傾向があります。これらのことから日本腎臓学会のガイドラインではCKDステージG3から0.8~1.0g/kg標準体重/日のたんぱく質摂取が推奨されています。小児の慢性腎臓病ではたんぱく質制限による腎機能障害進行の抑制効果は明らかでないため、たんぱく質制限は推奨されていません。慢性腎臓病患者におけるたんぱく質の上限量を決める科学的根拠は明確ではありませんが、国際的な腎臓病学団体であるKDIGOのガイドラインでは進行するリスクのある慢性腎臓病患者では1.3g/kg/日を超えるたんぱく質を摂取しないことを推奨しています。

 

肥満

減量する場合、生活機能を悪化させないように筋肉と骨量の喪失を最小限にする必要があり、食事療法だけでなく運動療法も考慮しする必要があります。たんぱく質は筋肉の原料となるため、たんぱく質を摂取することで減量時でも筋肉維持が可能です。また、たんぱく質の摂取によって基礎代謝を上げることができます。高齢者や運動不足の肥満では内臓脂肪が増加しても筋肉量が減少するため、BMIでは肥満の程度が過小評価されてしまします。このため、BMIを参考して肥満を判断する場合は年齢や生活習慣を考慮する必要があります。

 

脳卒中

たんぱく質の摂取不足が脳卒中のリスクとなる可能性が指摘されています。疫学的にもたんぱく質摂取量と脳卒中発症率との間に有意な負の関連を認めた研究が存在しています。しかし、有意な関連を認めなかった研究もあり、結論はまだ出ていません。

 

 

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