パントテン酸が不足すると起こる病気は?欠乏がまれな理由と脂質異常症との関係

健康辞苑アイコン ビタミン

パントテン酸は、補酵素A(コエンザイムA、CoA)の材料になる水溶性ビタミンで、ビタミンB5とも呼ばれます。この記事では、パントテン酸が不足すると起こる病気、薬や生まれつきの病気で起こる不足、生活習慣病との関係で分かっていることをまとめます。

数値と考え方は厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づき、国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報(パントテン酸)とMSDマニュアル プロフェッショナル版「ビオチンおよびパントテン酸」で確かめています。

 

パントテン酸の不足はまれ

パントテン酸という名前は、ギリシャ語で「どこにでもある酸」という意味です。その名のとおり多くの食品に含まれ、腸内細菌もわずかにつくるため、ふつうの食事をしていれば不足することはまずありません。MSDマニュアルでも、パントテン酸だけが欠乏することは実際にはほとんど起こらないとされています。

2025年版でも、ヒトでの欠乏症はまれとされています。欠乏症を実験で再現できないため、必要量を決めることができず、日本人が実際に摂っている量をもとに目安量(成人男性6mg/日、成人女性5mg/日)が決められています。

国立健康・栄養研究所の資料によると、2019年の国民健康・栄養調査では、1日の摂取量の平均は男性で6.05mg、女性で5.28mgでした。

 

パントテン酸の不足で起こること

パントテン酸はCoAの材料として、糖質や脂肪酸からエネルギーをつくる反応や、脂肪酸・コレステロールの合成など、多くの代謝に関わっています。特に、脂質の代謝とエネルギーをつくる働きに大切な役割を果たしています。

2025年版によると、パントテン酸が不足すると細胞の中のCoAが減り、次のようなことが起こります。

  • 成長が止まる
  • 副腎の障害
  • 手や足のしびれと、焼けるような痛み
  • 頭痛、疲労、不眠
  • 胃の不快感を伴う食欲不振

これらの症状はほかの病気でも起こります。症状が続くときは、自己判断でサプリメントを使わず、医療機関を受診してください。症状の詳しい説明はパントテン酸不足の症状を確認してください。

薬で起こる不足

ライナス・ポーリング研究所の解説によると、パントテン酸の働きを妨げるホパンテン酸カルシウムという薬で、まれな副作用として肝性脳症(肝臓が毒素を処理できず、脳の働きに異常が出る状態)が報告されています。パントテン酸の補給で回復したことから、この薬によるパントテン酸の不足が原因と考えられています。

生まれつきの病気(パントテン酸キナーゼ関連神経変性症)

パントテン酸からCoAをつくる最初の段階には、パントテン酸キナーゼ2という酵素が働きます。この酵素の遺伝子(PANK2)の変異を両親から受け継ぐと、CoAがつくられにくくなります。これがパントテン酸キナーゼ関連神経変性症(PKAN)というまれな病気で、食事の不足で起こるものではありません。

同じ解説によると、脳に鉄がたまり、視覚や知的機能の障害、ジストニア(筋肉が意図せず収縮して、姿勢や動きに異常が出る状態)、言葉の異常、行動や性格の変化が現れます。10歳より前に始まる型と、それ以降に始まる型があります。248人の患者をまとめた報告(2020年)では、発症の年齢の中央値は早く始まる型で3歳、遅く始まる型で18歳で、脚のジストニアが最初の症状として最も多くみられました。

 

生活習慣病との関係

2025年版では、パントテン酸の摂取と生活習慣病の予防や重症化予防との関係を直接示した報告はないとされ、目標量は決められていません。

脂質異常症・動脈硬化

旧版の記事では、パントテン酸が不足すると善玉コレステロール(HDL)が余ったコレステロールを回収できなくなり、動脈硬化の原因になると書いていました。この記述は資料で確かめられないため削除しました。

MSDマニュアルでは、脂質代謝、関節リウマチ、運動能力に対するパントテン酸の補給の効果は証明されていないとしています。

なお、パントテン酸の仲間のパンテチン(CoAのもとになる物質)は、医療用医薬品として使われています。パンテチン製剤の添付文書では、パントテン酸欠乏症の予防・治療のほか、パントテン酸の不足や代謝の障害が関わると考えられる場合の高脂血症、弛緩性便秘、湿疹などが対象とされています。これは医師が診断したうえで使う薬で、効果がないのに何か月も漫然と使い続けるべきではないとも書かれています。サプリメントで同じ効果が得られるという意味ではありません。

海外では、心臓病のリスクが低い人から中程度の人を対象に、パンテチンのランダム化比較試験が行われています。どちらも1日600mgを8週間、続けて900mgを8週間使っており、添付文書にある量(病気によっては1日300~600mg)より多い量です。

  • 120人の試験(2011年):食事の改善に加えて使ったところ、プラセボ(有効成分のない偽薬)と比べて、総コレステロールが3%、LDLコレステロールが4%下がりました。下がった量は4~6mg/dLと小さなものでした。
  • 32人の試験(2014年):LDLコレステロールは、パンテチンを使った人で11%下がり、プラセボの人では16週目に3%上がりました。

どちらもコレステロールなどの値を調べた試験で、心臓病が減るかどうかを確かめたものではありません。ライナス・ポーリング研究所の解説では、パンテチンはビタミンとは別のもので、高い量で使うかどうかは医師と相談して決めるべきだとしています。

アルツハイマー病・ハンチントン病

患者の脳の組織を調べ、パントテン酸が少なかったという研究があります。アルツハイマー病の研究(2020年)は患者9人と比較対象9人を比べたもので、ハンチントン病の研究(2019年)も症例対照研究です。いずれも脳の中の量を比べたもので、食事やサプリメントのパントテン酸でこれらの病気を防げると示したものではありません。

旧版から削除した内容

旧版の記事にあった、パントテン酸の不足で皮膚炎や便秘、末梢神経障害になるといった記述のうち、動物実験の結果をもとにした説明や、コラーゲンの生成を助けるという説明は、資料で確かめられないため削除しました。手や足のしびれと焼けるような痛みは、2025年版にある症状として上に書いています。

 

不足しやすい人

ふつうの食事では不足しませんが、MSDマニュアルでは、水溶性ビタミン全般が不足しやすい状況として、次のようなものを挙げています。

  • 食事が極端に偏っている人、全体に栄養が足りていない人
  • お酒を多く飲む人
  • 栄養の吸収が悪くなる病気がある人
  • 長いあいだ点滴だけで栄養をとっていて、ビタミンの補給が十分でない人

ライナス・ポーリング研究所の解説では、エストロゲンとプロゲスチンを含む経口避妊薬(ピル)で、パントテン酸の必要量が増える可能性があるともされています。

 

予防のための食事

パントテン酸はレバー、卵黄、納豆などの豆類、きのこ類などに多く、たいていの食品に含まれています。熱や酸、アルカリに弱い性質があります。いろいろな食品を組み合わせて食べることが、いちばんの予防です。

ライナス・ポーリング研究所の解説によると、全粒の穀物もよい供給源ですが、精製すると小麦で最大55%、とうもろこしで最大88%が失われます。冷凍や缶詰でも同じくらい減り、調理では煮汁に溶け出すことがあります。

パントテン酸の摂取基準についてはパントテン酸の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

関連記事

パントテン酸の働きと1日の摂取量は?補酵素Aとしてのエネルギー代謝と目安量・多く含む食品

パントテン酸不足の症状

パントテン酸の効果・効能

パントテン酸の過剰摂取

パントテン酸が多い食品ランキング|100gあたりの含有量を食品群別に一覧

 

タイトルとURLをコピーしました