パントテン酸はビタミンB5とも呼ばれ、水溶性ビタミンに分類されます。細胞中では補酵素A(コエンザイムA、CoA)、アシルCoA、アシルキャリアーたんぱく質(ACP)などの形で存在し、食品中のものは消化管でパントテン酸にまで分解された後、体内に取り込まれます。
パントテン酸の機能・役割
パントテン酸はCoAやACPの構成成分として、糖質や脂肪酸の代謝など、エネルギーをつくり出す多くの反応に関わっています。
具体的には、CoAにアシル基(脂肪酸などの一部)が結びついたアシルCoAが、クエン酸回路(TCA回路)、脂肪酸の分解(β酸化)、脂肪酸の合成、コレステロールの合成などの反応で働きます。ACPは脂肪酸の合成に関わります。なかでも、脂質の代謝とエネルギーをつくる反応で大切な役割を果たしています。
食品に含まれるCoAなどは、腸で分解されてパントテン酸になってから吸収されます。日本の平均的な食事に含まれるパントテン酸は、パントテン酸そのもの(遊離型)を摂った場合の70%程度が利用されると報告されています。
パントテン酸の効果・効能については以下を確認してください。
パントテン酸の食事摂取基準

パントテン酸の食事摂取基準は以下の通りです。数値は厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づいています(2025年度から2029年度まで使用)。
パントテン酸の欠乏症は実験的に再現できず、推定平均必要量を決められないため、日本人の実際の摂取量(国民健康・栄養調査の中央値)をもとに「目安量」が示されています。この摂取量で欠乏が出たという報告はありません。
パントテン酸の食事摂取基準(mg/日)
| 年齢等 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 目安量 | 目安量 | |
| 0~5(月) | 4 | 4 |
| 6~11(月) | 3 | 3 |
| 1~2(歳) | 3 | 3 |
| 3~5(歳) | 4 | 4 |
| 6~7(歳) | 5 | 5 |
| 8~9(歳) | 6 | 6 |
| 10~11(歳) | 6 | 6 |
| 12~14(歳) | 7 | 6 |
| 15~17(歳) | 7 | 6 |
| 18~29(歳) | 6 | 5 |
| 30~49(歳) | 6 | 5 |
| 50~64(歳) | 6 | 5 |
| 65~74(歳) | 6 | 5 |
| 75以上(歳) | 6 | 5 |
| 妊婦 | 5 | |
| 授乳婦 | 6 |
成人の目安量は国民健康・栄養調査で調べた日本人成人(18〜64歳)の摂取量の中央値(1日4.7〜6.0mg)をもとに、性別・年齢区分ごとに決められています。65歳以上も、特別な配慮が必要だというデータがないため、同じように摂取量の中央値が目安量になっています。
0〜5か月の赤ちゃんの目安量(4mg/日)は、母乳1L当たりのパントテン酸(5.0mg)と1日に飲む量(0.78L)から決められています。1〜17歳の目安量も年齢区分ごとの摂取量の中央値です。11歳以下は男女の体格に大きな差がないため、男女の平均の値が使われています。
妊婦の目安量(5mg/日)と授乳婦の目安量(6mg/日)は、日本人の妊婦・授乳婦の摂取量を調べた報告の中央値(1日5.3mg、5.9mg)を丸めた値です。妊娠中・授乳中の栄養の全体は妊娠中・授乳中に必要な栄養の記事にまとめています。
パントテン酸の摂取と生活習慣病の予防との直接的な関連を示す報告はないため、目標量は設定されていません。
パントテン酸を摂取できる食物
パントテン酸は「あらゆるところにある酸」という意味の名前のとおり、たいていの食品に含まれています。特にレバー、卵黄、納豆などの豆類、きのこ類に多く含まれます。文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年で、主な食品の100g当たりの量を比べると次のとおりです。
| 食品(可食部100g当たり) | パントテン酸(mg) |
|---|---|
| 鶏レバー(生) | 10.00 |
| 豚レバー(生) | 7.19 |
| 牛レバー(生) | 6.40 |
| たらこ(生) | 3.68 |
| 糸引き納豆 | 3.63 |
| 卵黄(生) | 3.60 |
| ひらたけ(生) | 2.40 |
| 鶏むね肉(若どり・皮なし・生) | 1.92 |
| アボカド(生) | 1.55 |
| ブロッコリー(生) | 1.42 |
| えのきたけ(生) | 1.40 |
| しろさけ(生) | 1.27 |
| 鶏卵(全卵・生) | 1.16 |
| 普通牛乳 | 0.55 |
| ごはん(精白米) | 0.25 |
レバーのほかは1食で摂れる量は多くありませんが、肉、魚、卵、豆、きのこ、野菜、牛乳、ごはんと、ふだん食べる食品の多くに含まれています。たとえば納豆40gで約1.5mg、卵1個(50g)で約0.6mg、ごはん150gで約0.4mgです。成人の目安量は男性6mg/日、女性5mg/日です。
食品ごとの含有量は以下を確認してください。
パントテン酸が不足した場合の影響
パントテン酸は多くの食品に含まれるため、通常の食事で欠乏することはまれです。欠乏すると細胞内のCoAが減るため、成長障害、手足のしびれや焼けるような痛み、頭痛、疲労、不眠、食欲不振などが起こる可能性があります。
パントテン酸の不足・欠乏については以下を確認してください。
パントテン酸の過剰摂取
通常の食品で可食部100g当たりのパントテン酸含量が5mgを超える食品は、肝臓を除きありません。通常の食品を摂取している人で、過剰摂取による健康障害が起きたという報告はありません。
パントテン酸だけを大量に与えた報告は見当たらず、耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)を決められるだけの情報がないため、耐容上限量は設定されていません。なお、パントテン酸をほかのビタミンと一緒に大量に3か月与えた試験では、一部の人が吐き気、食欲不振、腹痛を訴えて試験が中止されたという記録があります。
パントテン酸の過剰摂取については以下を確認してください。
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