ふつうの食品からマグネシウムを摂りすぎて、健康に悪い影響が出たという報告はありません。マグネシウムは摂りすぎても腸からの吸収が抑えられ、軟便や下痢として体の外に出ていきます。また、多く吸収されたマグネシウムも速やかに尿として出ていくため、軟便や下痢以外の過剰症はまれです。
この記事では厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)などをもとに、マグネシウムを摂りすぎたときに起こることと、高マグネシウム血症で気をつけたい症状と治療、薬との飲み合わせをまとめます。
マグネシウムの耐容上限量
ふつうの食品から摂るマグネシウムには、耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)は設定されていません。
一方、サプリメントや薬など、ふつうの食品以外から摂るマグネシウムには、成人で1日350mg、小児で体重1kgあたり1日5mgの耐容上限量が決められています。サプリメントなどから1日360mgを摂ると健康障害が出始めるとする報告をもとにした値です。ただし、この報告は欧米のもので、日本人での報告はありません。
マグネシウムの摂取基準についてはマグネシウムの機能・役割と食事摂取基準を確認してください。
マグネシウムを摂りすぎたときの症状
サプリメントなど食品以外からマグネシウムを摂りすぎたときに最初に起こるのは下痢です。多くの人に何も起こらない量でも、軽い一時的な下痢が起こることがあります。
MSDマニュアル家庭版によると、血液中のマグネシウムが多くなりすぎる高マグネシウム血症はまれで、主に腎不全の人がマグネシウムを含むものを摂っているときや、マグネシウムを含む一部の胃薬や便秘薬を使っているときに起こります。症状は筋力の低下、血圧の低下、呼吸の障害で、重くなると心臓が止まることもあります。米国オレゴン州立大学のライナス・ポーリング研究所の解説では、だるさ、錯乱、不整脈、腎臓の機能の悪化も挙げられています。
薬(酸化マグネシウム)を使っている人の注意
便秘薬や胃薬に使われる酸化マグネシウムを長い間飲んでいると、腎臓の機能が低下している人、高齢者、便秘症の人では、血液中のマグネシウムが多くなりすぎる高マグネシウム血症が起こることがあります。国内でも、酸化マグネシウムの使用に関連する、死亡を含む副作用の例が複数報告されています。これらに当てはまる人は医師や薬剤師の指示に従ってください。
酸化マグネシウム製剤の添付文書(医薬品医療機器総合機構に掲載)には、次のような注意が書かれています。
- 便秘症の人では、腎臓の機能が正常な場合や、ふつうの量以下の場合でも、重い経過をたどった例が報告されている
- 長く飲む場合や高齢者では、血液中のマグネシウムの濃度を定期的に測るなど、特に注意する
- 吐く、脈が遅くなる、力が入らない、うとうとするといった症状が出たら、飲むのをやめてすぐに受診する
- 高マグネシウム血症が進むと、呼吸が弱くなる、意識が悪くなる、不整脈が起こる、心臓が止まるといったことがある
- 活性型ビタミンD3の薬(アルファカルシドール、カルシトリオールなど)といっしょに使うと、高マグネシウム血症が起こるおそれがある
この添付文書では、酸化マグネシウムといっしょに使うときに注意する薬も挙げられています。
- テトラサイクリン系の抗菌薬(ミノサイクリンなど)、ニューキノロン系の抗菌薬(シプロフロキサシンなど)、ビスホスホン酸塩系の骨の薬(リセドロン酸ナトリウムなど)、一部の抗ウイルス薬(ラルテグラビルなど):吸収が下がって効果が弱まるおそれがあるので、同時に飲まないようにする
- ジギタリス製剤(ジゴキシンなど)、鉄剤など:吸収や排泄に影響することがあるので、飲む間隔をあける
- 大量の牛乳やカルシウムの薬:ミルクアルカリ症候群(高カルシウム血症など)が起こるおそれがある
ほかの薬を飲んでいる人は、医師や薬剤師に確かめてください。
高マグネシウム血症の検査と治療
MSDマニュアル家庭版によると、高マグネシウム血症は、血液中のマグネシウムの濃度を測る血液検査で診断します。
重い場合は、マグネシウムの害を抑えるためにグルコン酸カルシウムを点滴します。腎臓からマグネシウムを出すために利尿薬を使うこともあり、腎臓の働きが悪いときや高マグネシウム血症が進んでいるときは透析を行います。
サプリメントで摂るときの注意
マグネシウムのサプリメントで血圧が下がったという分析もありますが、効果がなかったという報告もあり、科学的な根拠は十分ではありません。耐容上限量との関係もあるため、2025年版ではサプリメントなどでマグネシウムを摂ることは勧められていません。
サプリメントのマグネシウムも、薬の吸収に影響することがあります。ライナス・ポーリング研究所の解説では、ビスホスホネートとは2時間あけて飲むとされています。手術で使う筋肉をゆるめる薬の効き目が強まることがあるため、マグネシウムのサプリメントや便秘薬、胃薬を使っている人は、手術の前に医療スタッフに伝えるよう勧められています。
マグネシウムを栄養機能食品として表示できるのは、1日に摂る目安の量に含まれるマグネシウムが96~300mgのものです。栄養機能食品には「多量に摂取すると軟便(下痢)になることがあります。1日の摂取目安量を守ってください。乳幼児・小児は本品の摂取を避けてください。」などの注意を表示することになっています(国立健康・栄養研究所)。
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