マグネシウムの不足と生活習慣病と病気

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食事のマグネシウム摂取量が少ないことを除いて健康な人では、腎臓がマグネシウムの尿中排泄を制限するため、マグネシウム欠乏症や不足はほとんどありません。しかし、健康上の理由から日常的にマグネシウムの摂取量が少ない場合やマグネシウムの喪失量が過剰な場合、または、慢性アルコール依存症の場合は、マグネシウム欠乏症になる可能性があります。マグネシウムの不足の主な初期症状は、食欲不振、悪心、嘔吐、疲労、脱力感などです。マグネシウムの不足が続くと、痺れ、刺痛、筋収縮、筋痙攣、てんかん発作、人格変化、不整脈、冠状動脈攣縮を発症するなど様々な病気の要因になる可能性があります。

 

マグネシウムと生活習慣病の関係

高血圧

高血圧とマグネシウムの摂取にいくつかの研究報告があります。55歳以上の高齢者を対象とした研究では100mg/日のマグネシウムの摂取量増加は有意に血圧が低下することが確認されています。また、平均410mg/日のマグネシウム補充で収縮期/拡張期血圧が-0.32/-0.36mmHgと、僅かだが有意に低下したと報告されてています。

 

糖尿病

マグネシウム摂取量と2型糖尿病との関連について検討した研究では、マグネシウムの摂取量と2型糖尿病の罹患リスクは摂取量が増えればリスクが下がる関係にあったとしています。100mg/日のマグネシウム摂取量増加は、相対リスクを0.86に低下させた結果となっています。

 

肥満・メタボリックシンドローム

マグネシウムを630mg/日相当による摂取で、メタボリックシンドロームのリスク改善の報告があります。

 

慢性腎臓病

慢性腎臓病では、低マグネシウム血症を呈する患者は、死亡率が高く腎機能低下速度が速いという報告があります。特に糖尿病腎症の患者では血清マグネシウム値が低下しやすく、そのような患者で腎機能低下速度が速い傾向にあります。

 

骨粗鬆症

マグネシウムは約60%が骨や歯などに存在しています。骨ではハイドロキシアパタイトの構成成分としてマグネシウムが存在していますが、血中のマグネシウム濃度が低下するとカルシウムと同時に溶出されてしまいます。このため、マグネシウムの不足は骨量の減少につながり、骨粗鬆症になる可能性があります。骨粗鬆症の女性は、骨減少症の女性または骨粗鬆症や骨減少症に罹患していない女性より血清マグネシウム値が低いことが報告されています。

 

不眠症

体内のマグネシウムが不足すると自律神経を不安定にさせてしまします。このため、寝る際の体がリラックスしにくい状態となり、不眠を引き起こす可能性があります。マグネシウムの平均摂取量が194mg程度の人びとの中から、中度の不眠症と診断された人に8週間にわたって、マグネシウムのサプリメント250mgを1日2回と摂取させた研究では、マグネシウムを摂取していたグループにおいて、摂取しなかったグループと比較した場合に、平均して14.4%程度の不眠症数値の中央値に改善が見られたと報告されています。ただし、不眠症の原因は様々で必ずしもマグネシウムの不足によるものとは限りません。

 

頭痛・片頭痛

マグネシウムは神経伝達物質放出や血管収縮などの頭痛を助長する原因とされています。規則性の頭痛をもつ人は、血中や脳内のマグネシウム値が低い傾向があり、マグネシウムを摂取することが頭痛の頻度を減少させるという研究報告があります。また、1日200mgのマグネシウムサプリメント投与によって、約80%の人に、頭痛の頻度が減少したという報告もあります。明確なメカニズムは回目されていませんがマグネシウムの不足により、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が調整できず、ミトコンドリアの機能を破壊してしまうことが原因と考えられます。

 

虚血性心疾患

カルシウムに対するマグネシウムの摂取比率が高いほど、虚血性心疾患による死亡率が低いことが確認されています。マグネシウムが不足すると細胞内にカルシウムが蓄積され、細胞は収縮します。これが血管の平滑筋で起きた場合、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の原因になります。カルシウムとマグネシウムはバランスよく摂取することが大切で、体内でのカルシウムとマグネシウムは2:1が理想と考えられています。

 

うつ病

マグネシウムは神経型一酸化窒素産生を調節するのを助け、細胞のカルシウムイオンの流入を調節します。また、セロトニンの生成にも関与しています。マグネシウム不足では、神経細胞に必要なマグネシウムが不足し、うつ病の主な原因となる神経細胞の損傷を起こす可能性があります。マグネシウム投与によりうつ病の早期改善が図れた報告があります。

 

マグネシウムの摂取基準についてはマグネシウムの機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

マグネシウムの過剰摂取についてはマグネシウム過剰摂取による副作用(過剰症)を確認してください。

 

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