マグネシウムは必須ミネラルになります。骨組織や血漿、赤血球、筋肉中の各組織に存在します。エネルギー代謝、筋肉の働きの調整、イライラの解消、血液凝固の補助、体温調整、血圧調整、インスリン分泌の促進、たんぱく質の合成補助、核酸の合成補助などの多くの役割があります。
マグネシウムの効果・効能
エネルギー代謝
マグネシウムは300種以上の酵素の補酵素として酵素の活性化に関わることがわかっています。エネルギー代謝に必要な多くの酵素でマグネシウムが関わっています。また、エネルギーの生成に関わるミトコンドリアにも必要です。その他、エネルギー代謝が不足した場合、カルシウムイオンの代わりにマグネシウムイオンがエネルギー代謝を維持しています。カルシウムとマグネシウムなどは性質がよく似ていおり、お互いに代替して作用しあうことができます。
たんぱく質の合成
生命の遺伝情報は核酸のDNAに格納されており、その遺伝情報をRNAが読み取り、遺伝情報をもとにアミノ酸からたんぱく質が合成されます。たんぱく質の合成では遺伝情報を格納したDNAからメッセンジャーRNAがその情報を読み取ります。そしてメッセンジャーRNAが細胞の内の構造であるリボソームと付着してリボソーム内でその遺伝情報をもとにたんぱく質が合成されます。マグネシウムはメッセンジャーRNAの付着を補助する働きがあります。
細胞の浸透圧調節・機能維持
細胞は細胞膜を境に内外で濃度差があります。細胞外ではナトリウムの濃度が、細胞内ではマグネシウムやカリウムの濃度が高くなります。細胞膜の内外ではナトリウムとカリウムが一定の濃度で保たれています。この濃度を維持するためにATPアーゼと呼ばれる成分が必要で、この成分が働くためにはマグネシウムとATPが結合したマグネシウムATPが必要となります。ATPアーゼのアーゼとは酵素のことでATPを分解して取り出したエネルギーを利用してポンプを動かしています。ATPアーゼは能動輸送によりミネラルバランスを維持しています。能動輸送とはエネルギーを消費して、濃度勾配に逆らって細胞膜内外を通過することです。ATPアーゼはエネルギー源であるATPとマグネシウムが結びついたATPマグネシウムがないと十分に働くことができません。このためマグネシウムがないと細胞膜内外のミネラルバランスに乱れが生じます。細胞でのナトリウムとカリウムの働きについてはカリウムの効果を確認してください。
骨や歯の形成
マグネシウムはその60%が骨や歯などに存在しています。骨の形成には、カルシウムがリン酸カルシウムとなり、骨に沈着する必要があります。マグネシウムはリン酸カルシウムの一種のハイドロキシアパタイトの構成成分として骨に存在し、結晶構造を阻害や骨の弾力性を維持する働きをします。マグネシウムは沈着や阻害を行うことで骨の調節を行う役割を担っています。マグネシウムが不足すると同時にカルシウムまで骨から溶出し、骨量の減少につながります。このため、骨密度の増加や骨折予防に効果があるといわれています。
精神を安定させる効果
マグネシウムは、筋肉、脳、神経にも存在します。神経の興奮を抑え、神経伝達を正常に保つ働きがあります。特にマグネシウムは幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンを作るときに必須です。セロトニンは主にうつ病の方に不足しているホルモンです。このため、マグネシウムは精神的なイライラすをやわらげ、安定した精神状態を保つ効果があります。また、神経伝達を正常にすることで、体温を調節するメカニズムにも関わっています。
糖尿病の予防
マグネシウムの慢性的な不足は、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンの低下を招きます。アディポネクチンはインスリン受容体を介さない糖取り込み促進作用や細胞内の脂肪酸を減少してインスリン受容体の感受性を上げる作用があります。また、Ⅱ型糖尿病患者にマグネシウムを摂取させた際に、空腹時血糖値の低下と血中HDLコレステロールが増加することが確認されています。このため、マグネシウムに糖尿病の予防効果が期待されています。
高血圧の予防
マグネシウムは、動脈を弛緩させて血圧を下げる働きがあり、高血圧を予防します。マグネシウムは細胞内のカルシウムやナトリウムの量を調節し、正常な血圧の維持や血液の循環を保つ効果があります。
心疾患の予防
マグネシウムは血液中のカルシウムの量を調節し、筋肉の収縮をスムーズにする効果があります。筋肉の収縮は、筋肉細胞の中にカルシウムが流れ込んで刺激を与え、緊張が高まることによって起こります。マグネシウムはこのカルシウムの動きを必要に応じて抑え、調節する働きを持ちます。また、マグネシウムは、筋肉の収縮運動のほか、血のかたまりにくさにも関わっている成分です。血小板内のマグネシウムの含有量が低下すると、血小板は凝集しやすくなります。このため、マグネシウム不足によって必要以上に細胞内のカルシウムが増加すると、不整脈といった症状、筋肉の痙攣が血管壁で起こると、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まります。マグネシウムに対してカルシウムの摂取が高まるほど、心臓発作による死亡率が高いことがわかっています。
うつ病の改善
治療抵抗性うつ病で自殺企図あるいは自殺未遂経験のある患者では脳脊髄液中のマグネシウム量が低いこと、抗うつ薬は脳内マグネシウム量を増やす作用があること、糖尿性うつ病患者へのマグネシウム投与で成果をあげていることなどから、治療抵抗性うつ病患者に限らずマグネシウムの処方は有益であるとする報告があります。また、マグネシウムの投与によりおよそ1週間程度の短期での症状改善の報告があります。その他、マグネシウムは精神を安定させるセロトニンの生成過程で必要です。このため、マグネシウムはうつ病を改善する可能性があります。
炎症
マグネシウムの摂取量が多いほど体内の炎症反応が少ないことが報告されています。
頭痛・片頭痛
規則性の頭痛をもつ人は、血中や脳内のマグネシウム値が低いといわれており、マグネシウムを摂取することが頭痛の頻度を減少させるという研究報告があります。また、1日200mgのマグネシウムサプリメント投与によって、約80%の人に、頭痛の頻度が減少したという報告もあります。
筋弛緩剤
マグネシウムは筋肉の緊張をほぐすために使われる筋弛緩剤(きんしかんざい)としても活用されます。そのため睡眠不足、筋肉の痛みを緩和する薬として処方されることがあります。
マグネシウムの不足・欠乏の症状
マグネシウムの不足は骨粗鬆症やマグネシウム欠乏症になる可能性があります。また、頭痛、精神疾患、糖尿病になるリスクもあります。
次の傾向や病気・症状に心当たりのある方はマグネシウムが不足している可能性があります。
マグネシウム欠乏症に関連した症状
食欲不振、嘔吐、下痢、便秘、疲労感、振戦、こむら返り、筋痙縮、筋肉痛、めまい、学習能力低下、記憶力低下、イライラ、神経過敏症、精神疾患、動悸、不整脈、虚血性心疾患、低カルシウム血症などの症状がでる可能性があります。
骨粗鬆症など骨に関連した症状
筋肉痛、筋力低下、骨の痛み、、腰の痛み、股関節・膝関節の痛み、骨盤・大腿骨・下腿骨などの圧痛などの症状がでる可能性があります。
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