ビタミンDは油脂に溶ける脂溶性ビタミンに分類されます。主にカルシウムの吸収を高め骨への沈着を助ける効果や免疫力を上げる効果などがあります。研究中の効果も多くあり、ビタミンDには様々な効果があります。
骨の形成・維持する効果
骨は破壊と再生が絶えず繰り返され、骨芽細胞による骨組織の形成と破骨細胞による骨組織破壊(骨吸収)により骨量が維持されています。ビタミンD(活性型ビタミンD)は骨の主要成分であるカルシウムを古くなった部分から分解・破壊する骨塩動因作用(骨吸収)を促進させる働きと、血中のカルシウムの骨への沈着の両方に作用することでリモデリングと呼ばれる骨の骨の破壊と再構築の維持に関わります。このため、ビタミンDは骨のカルシウムの吸収促進とリモデリングによる骨の形成・維持する効果があります。
カルシウム濃度を維持・促進する効果
ビタミンDには血中のカルシウム濃度を維持する効果があります。血中のカルシウム濃度が低い場合、副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌されて腎臓で1α-水酸化酵素を活性化させ、ビタミンDを活性型ビタミンDへと変化させます。活性型ビタミンDは小腸でのカルシウムの吸収促進作用、腎臓でのカルシウム再吸収促進作用、骨塩動員作用によりカルシウムの吸収や腎臓でのカルシウムの再吸収、骨から血中へのカルシウムの溶出を促進するさせ血中カルシウム濃度を上昇させます。血中カルシウム濃度が正常な場合、カルシトニンによって1α-水酸化酵素の活性は抑えられ、ビタミンDを不活性型の24,25-ジヒドロキシビタミンD3に代謝する24-水酸化酵素の働きが活性化します。血中カルシウム濃度が高い場合も24-水酸化酵素の働きが活性化されます。このため、ビタミンDは副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニンなどのホルモンとともに血中カルシウム濃度の上昇を抑制するよう効果があります。
筋肉を増強する効果
ビタミンDには筋肉を増強する効果があります。筋肉にはビタミンD受容体があり、ビタミンDが受容体に結合することにより筋肉のたんぱく質の合成を促進させています。このため、ビタミンDが筋肉の合成に関与して筋肉を増やす効果があるといえます。血液中のビタミンDの濃度が高い場合、筋力も高いことが報告されています。
免疫力を向上させる効果
ビタミンDは細胞で抗菌物質を分泌し、免疫力を高める効果があります。ビタミンDはウイルス感染や細胞の悪性化等によって体内に異常な細胞が発生した際に攻撃するナチュラルキラー細胞の活動と、生体内に侵入した細菌などの異物を捕らえて細胞内で消化するマクロファージの捕食作用を活発化させて抗菌性を増加させる働きがあります。このため、ビタミンDは免疫力を向上させる効果があるといえます。
妊娠に関連する効果
ビタミンDは子宮内膜の環境を整える効果があります。また、ビタミンD濃度は子宮内膜の着床に関与しているため、妊娠に必要なビタミンです。血中のビタミンD濃度が正常な女性は低い女性より体外受精の成功率が上昇することがわかっています。その他、ビタミンDの不足は初期流産のリスクを高める報告や、精子運動率・正常精子形態率が低くくなるといった報告があります。
遺伝子の発現の制御
ビタミンDは遺伝子の発現の制御に深く関わっています。ビタミンD(活性型ビタミンD)は細胞の核内に存在するビタミンD受容体と結合し、さらにレチノイドX受容体と結合したものです。これが遺伝子の発現を促進させます。ビタミンDによって遺伝子の発現が促進されるたんぱく質には骨や歯などの硬組織に存在するオステオポンチンやオステオカルシン、小腸や腎臓でカルシウムの吸収に関与するカルビンディンDなどがあります。
骨粗鬆症を治療・改善する効果
ビタミンDには小腸でのカルシウムの吸収促進、腎臓の尿細管でのカルシウムの再吸収を促進する働きがあります。再吸収を促進により、血中のカルシウム濃度が上がるとカルシトニンという甲状腺ホルモンが分泌されます。カルシトニンの効果は小腸でのカルシウムの吸収を抑制、カルシウムの尿中への放出の促進、骨へのカルシウムの沈着促進です。ビタミンDには骨からのカルシウムの溶出を促進する作用もありますが、カルシトニンを介して骨へのカルシウムを沈着させる効果の方が高いため、ビタミンDを摂取することで骨へのカルシウムの沈着を促すことができます。このため、ビタミンDは骨粗鬆症の治療・改善する効果があります。
糖尿病を予防する効果
ビタミンDとカルシウムの摂取量と糖尿病のリスクに相関性があり、摂取量が多いほど、糖尿病のリスクが軽減するという報告があります。また、血糖降下作用をもつインスリンの分泌を促進する作用もあり、糖尿病の予防に効果があります。
インフルエンザを予防する効果
ビタミンDは季節性インフルエンザの予防する効果があります。ビタミンDを摂取することで季節性インフルエンザの発生率を抑えることが研究でも報告されています。また、1,200IU/日(30μg)のビタミンD3を摂取した人は摂取していない人と比較して季節性インフルエンザになる確率が42%減少した報告もあります。
癌(がん)を予防する効果
ビタミンDにはがん細胞の増殖を抑制し、癌化しかけた細胞を正常細胞へ誘導する働きが確認されています。また、ビタミンDの分子的特質は、癌の防止に関して癌の増殖の細胞メカニズムに幅広い範囲で関わっていると考えられています。ビタミンD摂取量と結腸癌などの悪性腫瘍発症率との間の負の相関関係、ビタミンD受容体(VDR)遺伝子の多型現象は乳癌のリスクの増加、日照の少ない国(ビタミンDは太陽の光を浴びることで体内で生成できるため体内のビタミンDが少ない傾向にある国)において癌のリスクの増加が示されています。
研究では以下のような癌のリスクを低減させる報告があります。
- 1,000IU/日(25μg)のビタミンDの追加摂取で大腸癌のリスクが50%減少
- 1,000IU/日(25μg)のビタミンDの追加摂取で乳癌と卵巣癌のリスクが30%減少
- ビタミンDの400IU/日(10μg)の摂取で膵臓癌のリスクが43%減少
- ビタミンDの摂取1,100IU/日(27.5μg)を4年間摂取した女性は癌の発生率が60%減少
また、カルシウムとビタミンDの両方を多く摂取するグループで大腸癌のリスクが低下するとの報告があります。
動脈硬化などを予防する効果
ビタミンDの濃度が低い場合、動脈関連の疾患を発症するリスクが増加することが報告されています。また、血中のビタミンD濃度は動脈硬化プラークの石灰化に関連していることが確認されています。血中のビタミンD濃度が17.8ng/mL以下の人は全体と比較して動脈関連の疾患のリスクは80%増加する報告があります。このため、ビタミンDは動脈硬化のなどの動脈関連の疾患の予防に効果があると考えられます。
精神疾患のリスクを低減する効果
ビタミンDにはドーパミンやノルエピネフリンといった活力を向上させるホルモンに作用しており、ビタミンDの不足はうつ病、統合失調症などの精神的な問題に何らかの役割を果たしている可能性があり、精神医心疾患のリスクを低減する効果が期待されます。1週間で50,000IUのかなりの過剰摂取でうつ状態の改善がみられた報告や、血中ビタミンD濃度が低いグループは高いグループに比べて1.31倍つ病の発症リスクが高いという報告があります。このため、ビタミンDは精神疾患のリスクを低減させる効果があるといえます。
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