ビタミンDは、腸でカルシウムやリンの吸収を助け、骨を丈夫に保つ脂溶性ビタミンです。食事から摂るほか、日光(紫外線)を浴びると皮膚でもつくられます。この記事では、ビタミンDが不足すると起こる病気と、がんや糖尿病などとの関係で分かっていること、不足しやすい人をまとめます。
数値と考え方は厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づき、症状や原因はMSDマニュアル家庭版「ビタミンD欠乏症」と国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報(ビタミンD)で確かめています。
日本人はビタミンDが不足しがち
2025年版では、血液中のビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD)の濃度20ng/mLを目安にしています。北海道と熊本県で調べた研究では、日差しの強い夏でも約半数の人がこの値を下回っていました。今の日本人の摂取量では、約半数の人がこの濃度を保てないとされています。高齢者や女性は特に不足しやすいと報告されています。
ビタミンDの不足で起こる病気
ビタミンDが不足すると、腸からのカルシウムの吸収と、腎臓でカルシウムを取り戻す働きが弱まります。その結果、血液中のカルシウムが減り、骨の病気が起こりやすくなります。
くる病(子ども)
成長期の子どもでビタミンDが不足すると、骨が十分に硬くならず、くる病になります。MSDマニュアルによると、O脚やX脚、背骨の曲がり、歩き始めの遅れなどが見られます。赤ちゃんでは、筋肉のけいれん(テタニー)が最初のサインになることがあります。
国立健康・栄養研究所の情報では、雪の多い寒い地域に住み、日光に当たる機会が少ない母乳だけで育つ赤ちゃんで、ビタミンDの不足によるくる病のリスクが高いと報告されています。
骨軟化症(大人)
大人でビタミンDが不足すると、骨が軟らかくなる骨軟化症になります。背骨や骨盤、脚の骨が弱くなり、押すと痛んだり、骨折したりすることがあります。旧版の記事では骨軟化症を「骨が石灰化する」病気と書いていましたが、誤りでした。ビタミンDは骨の石灰化を進める働きがあり、不足すると石灰化が十分に進まなくなります。
骨粗鬆症と骨折
高齢者でビタミンDの不足が長く続くと、骨密度が下がり、骨粗鬆症や骨折のリスクが高まります。2025年版でも、すでに骨粗鬆症がある人では、ビタミンDの不足が骨折のリスクを高めるとしています。
では、サプリメントで骨折を防げるのでしょうか。高齢者などを対象にした試験53件をまとめたコクラン・レビュー(2014年)では、次のような結果でした。
- ビタミンDだけでは、太ももの付け根の骨折やほかの骨折は減りませんでした。
- ビタミンDとカルシウムを一緒に摂ると、太ももの付け根の骨折がわずかに減りました。施設に入所している人など骨折のリスクが高い人では、1,000人あたり年に9件ほど少なくなる計算です。
- 一方で、主に軽い高カルシウム血症が増えました。
2025年版も、骨折や転倒へのビタミンDの効果はカルシウムとの併用が必要との報告があるとし、さらに検討が必要だとしています。
低カルシウム血症
ビタミンDが大きく不足すると、血液中のカルシウムが下がる低カルシウム血症が起こり、顔や手足の筋肉がけいれんすることがあります。重い場合は、全身のけいれん発作を起こすこともあります。
転倒・フレイル
2025年版では、血液中のビタミンDの濃度が低いことが、フレイル(加齢で心身が弱った状態)や転倒のリスクになると示されています。ただし、ビタミンDのサプリメントで転倒を防ぐ効果は、多い量を摂っても乏しいとされています。
症状の詳しい説明はビタミンD不足の症状を確認してください。
生活習慣病などとの関係
2025年版では、ビタミンDは心臓や血管、免疫などにもさまざまな働きがあると報告されているものの、多くは血液中の濃度との関係を見た研究で、摂取量との関係を示した研究は限られるとしています。サプリメントの大規模な試験では、次のような結果が出ています。
- がん・心臓病:米国の約2万6千人が参加したランダム化比較試験(VITAL、2019年)では、ビタミンDを約5年間飲んでも、がんの発生や心筋梗塞・脳卒中などは減りませんでした。
- 糖尿病:糖尿病になるリスクの高い約2,400人が参加したランダム化比較試験(D2d、2019年)では、ビタミンDを飲んでも、糖尿病の発症ははっきりとは減りませんでした。
- かぜなどの感染症:試験43件をまとめた系統的レビュー(2021年)では、かぜなどの急性の呼吸器感染症にかかる人がわずかに減りました(約62%から約61%に)。
- うつ病:50歳以上の約1万8千人が参加したランダム化比較試験(2020年)では、ビタミンDを飲んでも、うつ病や抑うつ症状は減りませんでした。
国立健康・栄養研究所のコラムでも、健康な人がビタミンD製剤などを摂って病気や死亡のリスクが減ったというデータはないとしています。
旧版の記事では、ビタミンDの不足で動脈硬化や糖尿病、大腸がん・乳がんなどのリスクが上がる、ビタミンDがインフルエンザやうつ病を防ぐと書いていました。上の研究結果から、これらの病気をビタミンDで予防できるとは言えないため、記述を改めました。
ビタミンDが不足しやすい人
- 屋外に出る時間が短い人(高齢者、施設に入所している人など)
- 日焼け止めをいつも使う人、肌を覆う服装の人
- 母乳だけで育ち、日光に当たる機会が少ない赤ちゃん
- 魚やきのこをあまり食べない人
- 脂肪の吸収が悪くなる病気、腎臓や肝臓の病気がある人
- 一部の抗てんかん薬や、結核の薬(リファンピシン)を使っている人
2025年版によると、皮膚でつくられるビタミンDの量は、住んでいる地域の緯度や季節、屋外で過ごす時間、日焼け止めの使用などで大きく変わります。
予防のための食事と日光浴
ビタミンDは魚やきのこに多く含まれます。食品ごとの量はビタミンDが多い食品ランキングで確かめられます。2025年版の目安量は成人で1日9.0µgで、あわせて日常生活の中でできる範囲の適度な日光浴を心がけるよう勧めています。2025年版によると、皮膚でつくられる量は体の中で調節されているため、日光を浴びてもビタミンDの過剰症は起こりません。
どのくらい日光に当たればよいかは、住んでいる地域や季節、時刻で大きく変わります。国立環境研究所などの計算(2013年)では、当時の目安量だった1日5.5µgを、食事から摂らずに顔と手の甲への日光だけでつくるのに必要な時間は、晴れた日の正午で次のとおりでした。
- 7月のつくば:約3.5分
- 12月のつくば:約22分
- 12月の札幌:約76分
12月のつくばでも、朝9時では約106分かかります。冬や北の地域、朝や夕方は、日光浴に長い時間が必要です。
サプリメントで摂る場合は注意が必要です。ビタミンDには耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)があり、成人で1日100µgです。摂りすぎると高カルシウム血症や腎臓の障害を起こすことがあります。病気のある人や薬を使っている人は、サプリメントを始める前に医師に相談してください。
ビタミンDの摂取基準についてはビタミンDの機能・役割と食事摂取基準を確認してください。
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