ビタミンDは食事での摂取や日光の紫外線により皮膚表面でも合成されるため、不足することはあまりありません。ビタミンDは主に骨に関連する病気に関わります。ビタミンDの不足は日光不足、腸管からの吸収障害、肝臓・腎臓疾患、副甲状腺ホルモン(PTH)の異常などで起こります。
生活習慣病
ビタミンDの不足は種々の生活習慣病の関連が示唆されています。しかし、科学的根拠が十分ではないものが多いため参考として記載します。
動脈硬化
ビタミンDの濃度が低い場合、動脈関連の疾患を発症するリスクが増加することが報告されています。また、血中のビタミンD濃度は動脈硬化プラークの石灰化に関連していることが確認されています。このため、ビタミンDの不足は動脈硬化のなどの動脈関連の疾患の要因になる可能性があります。
糖尿病
ビタミンDとカルシウムの摂取量と糖尿病のリスクに相関性があり、摂取量が多いほど糖尿病のリスクが軽減するという報告があります。また、血糖降下作用をもつインスリンの分泌を促進する作用があります。このため、ビタミンDの不足が糖尿病のリスクをあげる可能性があります。
癌(がん)
ビタミンDにはがん細胞の増殖を抑制し、癌化しかけた細胞を正常細胞へ誘導する働きが確認されています。研究では大腸癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌のリスクを低減させる報告があります。
ビタミンD欠乏症
ビタミンDはカルシウムの小腸での吸収や腎臓での再吸収を促進する働きや、骨の形成を促進する働きがあります、このため、ビタミンDが不足すると主に骨の異常が発生します。乳幼児では肋骨や下肢骨の変形が特徴がでるくる病の発症、成人では骨が石灰化する骨軟化症、高齢者や閉経後の女性では骨粗鬆症の原因となります。また、ビタミンD欠乏症には転倒しやすくなるといった症状も報告されています。
骨粗鬆症
ビタミンDには小腸でのカルシウムの吸収促進、腎臓の尿細管でのカルシウムの再吸収を促進する働きがあります。ビタミンDはカルシウムを沈着させる効果があるため、ビタミンDが不足すると骨粗鬆症の原因になります。高齢者において、ビタミンDの不足の状態が長期にわたって続くと、骨粗鬆症性骨折のリスクが高まります。
くる病・骨軟化症
成長期の骨には骨の部分と骨と骨との間に囲まれ、成長して骨に変わっていく骨端線とよばれる軟骨の部分があり、成長期を過ぎ軟骨が骨へと変わるとなくなります。ビタミンDが不足すると小腸や腎臓でのカルシウム吸収量の減少や利用が低下するため、骨端線の骨化が傷害されくる病を発症します。くる病とは乳幼児にみられるビタミンD欠乏による骨格異常のことで、背骨や四肢の湾曲や変形などが起こります。骨格形成が完了した成人以降では骨が弱くなる骨軟化症を引き起こします。くる病発症早期では、X線像で関節部の肥大や二重関節などが認められますが、食事でカルシウムを補充やビタミンDの摂取によって症状が改善します。ビタミンD欠乏状態が長期に続くと、体重の負荷によってO脚やX脚へと変形して歩行障害が現れる場合もあります。
低カルシウム血症
ビタミンDが体内で不足すると副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌に官署しているため、ビタミンDが不足すると正常なカルシウムの代謝を維持できなくなり、低カルシウム血症を発症する可能性があります。
インフルエンザ
ビタミンDは季節性インフルエンザの予防する効果があります。ビタミンDを摂取することで季節性インフルエンザの発生率を抑えることが研究でも報告されています。
うつ病
ビタミンDにはドーパミンやノルエピネフリンといった活力を向上させるホルモンに作用しており、ビタミンDの不足はうつ病のリスクを低減する効果が期待されます。
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