ビタミンKは、血液を固める成分(血液凝固因子)や骨のたんぱく質が働くために必要な脂溶性ビタミンです。この記事では、ビタミンKが不足すると起こる病気と、骨粗鬆症や骨折との関係で分かっていること、不足しやすい人、検査と治療をまとめます。
数値と考え方は厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づき、症状や原因はMSDマニュアル家庭版「ビタミンK欠乏症」と国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報(ビタミンK)で確かめています。
大人がビタミンK不足になることはまれ
2025年版によると、日本の健康な人で、ビタミンKの欠乏で血液が固まりにくくなることはまれで、ふつうの食事でほぼ足りていると考えられています。ビタミンKは緑黄色野菜や海藻、納豆などに多く、腸内細菌もビタミンK2をつくっています。成人の目安量は男女とも1日150µgです。
一方で、生まれたばかりの赤ちゃんは、ビタミンKが不足しやすいことが知られています。
ビタミンKの不足で起こる病気
ビタミンKは、血液凝固因子がつくられるときに、カルシウムと結びつけるようにする補酵素として働きます。ビタミンKが不足すると、血液が固まるのに時間がかかり、出血しやすくなります。これがビタミンK欠乏症です。
新生児・乳児のビタミンK欠乏性出血症
国立健康・栄養研究所の情報やMSDマニュアルによると、生まれたばかりの赤ちゃんは、胎盤を通って移るビタミンKがわずかで、腸内細菌もまだ育っていません。母乳に含まれるビタミンKも少量です。そのため、ビタミンKが不足して出血を起こすことがあり、母乳で育つ赤ちゃんのほうが発症しやすいとされています。出血の起こり方には次の2つがあります。
- 新生児メレナ(新生児出血症):生後数日で、胃や腸から出血し、血を吐いたり、黒っぽい便が出たりします。
- 乳児ビタミンK欠乏性出血症:生後1か月ごろに起こり、頭の中で出血することがあります。命に関わることもあります。
これを防ぐため、日本では生まれた直後から赤ちゃんにビタミンKを与えています。新生児への予防を調べたコクラン・レビュー(2000年)では、出生後1回のビタミンKの筋肉注射で、生後1週間までの出血が減りました。飲ませる方法でも、血液の固まり具合を示す検査値がよくなりました。
日本小児科学会の2011年の「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン」では、合併症のない赤ちゃんに、ビタミンK2のシロップを3回飲ませる方法が示されています。1回目は生まれて数回の授乳がうまくいったのを確かめてから、2回目は生後1週間か産科を退院するときの早いほう、3回目は1か月健診のときです。3回飲ませても乳児の出血が起きた例が報告されていることから、生後3か月まで週1回飲ませる方法もあるとしています。赤ちゃんが飲む時期と回数は、出産した医療機関や健診で確かめてください。
同じガイドラインでは、母親が納豆や緑の葉の野菜などを食べると母乳のビタミンKが増えるため、母乳を与えている母親にはこれらの食品を勧めるとしています。
大人のビタミンK欠乏症
大人でも、脂肪の吸収が悪くなる病気や、抗生物質を長く使っているときなどにビタミンKが不足することがあります。不足すると、鼻血、傷からの出血、あざができやすい、胃腸からの出血、月経の量が多くなる、血尿などが起こります。
症状の詳しい説明はビタミンK不足の症状を確認してください。
ビタミンK欠乏症の検査と治療
MSDマニュアルによると、ビタミンKが不足しやすい状態の人に、ふだんと違う出血が起きたときに、ビタミンK欠乏症が疑われます。診断には、血液が固まる速さを測る血液検査を使います。ふだんの食事でビタミンKをどれくらい摂っているかも、検査の結果を読む手がかりになります。ときに、血液中のビタミンKの濃さを測ることもあります。
治療ではビタミンKを飲み薬か皮下注射で補います。薬が原因で不足しているときは、薬の量を調整するか、ビタミンKを追加で使います。血液を固める成分は肝臓でつくられるため、肝臓の病気があると出血しやすくなります。気になる出血があるときや、使っている薬について確かめたいときは、自己判断で薬をやめたりせず、医師に相談してください。
骨粗鬆症・骨折との関係
ビタミンKは、骨のたんぱく質(オステオカルシン)が働くために必要で、骨にカルシウムが沈着するのを促すとされています。国立健康・栄養研究所の情報では、ビタミンKの不足が長く続くと、骨粗鬆症や骨折につながることが知られているとしています。2025年版でも、ビタミンKの摂取量が少ないと骨折のリスクが高くなる可能性が示されています。
では、ビタミンKを多く摂れば骨粗鬆症を防げるのでしょうか。2025年版では、次の点から、骨粗鬆症の予防のためにビタミンKを積極的に摂ることを勧める根拠はないとしています。
- ビタミンKを使った臨床試験で、背骨の骨折を減らす効果は認められていません。
- 日本ではビタミンK2の一種(メナテトレノン)が骨粗鬆症の治療薬として使われていますが、その量は1日45mgで、食事で摂れる量ではありません。
旧版の記事では、ビタミンK2が骨のコラーゲンをつくるのを促して骨の質をよくし、不足すると骨粗鬆症のリスクが上がると書いていました。資料で確かめられる範囲に合わせ、記述を改めました。骨粗鬆症と食事の関係は骨粗鬆症を防ぐ食事と栄養素を確認してください。
生活習慣病との関係
2025年版によると、ビタミンKと心臓や血管の病気、骨密度との関係を調べた研究はいくつかありますが、数は十分ではなく、結果も一致していません。ビタミンKを十分に摂ることが生活習慣病の予防に役立つ可能性は示されているものの、目標量を決められるほどの根拠はありません。
ビタミンKが不足しやすい人
- 生まれたばかりの赤ちゃん、特に母乳で育つ赤ちゃん
- 長い期間、抗生物質を使っている人
- 胆道がふさがる病気や、脂肪を吸収しにくい病気がある人
- 肝臓の病気がある人
- 極端に脂肪を減らした食事を続けている人
- 一部の抗てんかん薬(フェニトインなど)を使っている人
血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人の注意
ワルファリンは、血液凝固因子がつくられるのを妨げて、血液を固まりにくくする薬です。国立健康・栄養研究所の情報では、ワルファリンを飲んでいる人は、納豆・青汁・クロレラなどを摂ることについて、必ず医師に相談するよう呼びかけています。自己判断でビタミンKを増やしたり減らしたりせず、医師や薬剤師の指示に従ってください。
ビタミンKの摂取基準についてはビタミンKの機能・役割と食事摂取基準を確認してください。
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