必須ミネラル亜鉛の不足と生活習慣病と病気

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亜鉛が不足・欠乏した場合、皮膚炎や味覚障害、慢性下痢、低アルブミン血症、汎血球減少、免疫機能障害、神経感覚障害、認知機能障害、成長遅延、性腺発育障害などになる可能性があります。

 

糖尿病

亜鉛はインスリンの構造維持に必要です。亜鉛はインスリンの生成、貯蔵と分泌の制御、メタロチオネインや抗酸化酵素の構成元素として抗酸化作用に関わっています。特に血糖値を下げるホルモンはインスリンのみのため、亜鉛は不足は糖尿病と深い関係があるといえます。糖尿病患者では尿中亜鉛排泄の増加に伴う血清亜鉛の低下が多く報告されています。糖尿病患者への亜鉛サプリメントの投与により、血糖値の調節と糖尿病に合併する脂質異常症、高血圧、腎機能低下の改善が報告されています。

 

皮膚炎

亜鉛は皮膚の構成要素のコラーゲンの生成にかかわります。また、亜鉛不足は細胞性免疫と液性免疫を著明に低下させるため感染症による皮膚の炎症が起こりやすいといわれています。免疫不全の亜鉛欠乏症患者に皮膚の炎症が起きることから関連性は高いと考えられます。

亜鉛には皮膚に傷ができると亜鉛を構成成分とする酵素が代謝を促進させ、傷ついた部位の細胞分裂を活発にする働きがあります。このため、アトピー性皮膚炎の治療に使用される場合があります。重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに亜鉛を与えたところアトピー性皮膚炎が改善した報告もあります。なお、アトピー性皮膚炎の原因はアレルギー性のものであり、亜鉛不足が原因ではありません。

 

味覚障害

亜鉛は味を感じる舌にある味蕾(みらい)という細胞の材料になります。味蕾は細胞分裂が盛んな器官なので亜鉛が不足すると働きが衰えます。このため、亜鉛不足により味覚障害が発生する可能性があります。味覚障害は初期の段階では亜鉛の補給で改善しますが、長期に渡ると細胞が完全に壊れてしまう可能性があります。

 

視覚障害(色覚異常)

亜鉛は網膜の視覚色素の生成にも関与しています。このため、亜鉛が不足すると視覚障害が発生し、暗闇で視力が低下したり、色覚異常になる可能性があります。動物実験は亜鉛欠乏状態にすると網膜の色素上皮が最初に変性することから亜鉛と深いかかわりがあるといえます。

 

成長障害・発育障害

亜鉛は細胞の分裂に必要な成分です。このため、新陳代謝が活発な部位、乳児、成長期の子供も正常な発育を促すためは過不足なく亜鉛を摂取することが必要です。胎児・小児の成長が遅い、身長の伸びにくいなど低身長症、性腺発育不全になる可能性があります。

低身長・低身長症

亜鉛は細胞分裂に必要な成分であり、成長ホルモンにも必要な成分です。亜鉛が不足した例では低身長小児の60%は潜在的亜鉛欠乏状態でした。これらは亜鉛投与で伸長の伸びの改善する場合が多くあります。なお、子供の身長を伸ばすために重要な栄養素として亜鉛だけではなく、たんぱく質、カルシウム、マグネシウムがあります。

性腺発育不全・性腺機能不全

性腺(卵巣や精巣)が胎児発達期に適切に発達しなかった状況のことを言います。亜鉛は性ホルモンを合成に関与するため、亜鉛が不足すると特にテストステロンの合成・分泌が低下し、男性の性腺の発達障害や機能不全が生じまます。

 

免疫機能障害

亜鉛には抗酸化作用や白血球が体内の細菌を撃退するのを助ける働きがあります。このため、亜鉛が不足した場合、免疫不全により様々な合併症を引き起こす可能性があります。

 

神経障害(うつ病)

神経伝達物質を作るために亜鉛が必要です。感情や意欲を調節している脳の機能が低下してしまい、神経細胞間の刺激伝達がうまくいかないために起こる病気だと考えられています。このため、亜鉛が不足すると神経伝達物質が減少し、うつ病またはうつ病に近い状態になると考えられます。うつ病に対する亜鉛投与の実験では抗うつ効果が確認されています。

 

記憶・認知機能障害

亜鉛は分泌された様々な情報伝達物質から、記憶情報を呼び出すという重要な役割があります。また、神経伝達物質にも関与しています。亜鉛欠乏症になるとアルツハイマーや認知症の症状の傾向が多く確認されます。

 

性機能障害

勃起不全(ED)

亜鉛は精液をつくる前立腺や精子、男性ホルモンのテストステロンをつくる精巣に多く存在しており、精子・精液や男性ホルモンの生成に関係しています。勃起不全では特にテストステロンの働きが重要で、テストステロンは一酸化窒素を供給して血管を拡張する作用があります。テストステロンが減少すると一酸化窒素の供給が減って勃起不全になります。

不妊症(女性)

亜鉛は性ホルモンの生成に関与しています。女性では女性ホルモンの卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの働きを高めています。これらの働きが弱いとエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が低下し、卵胞の成長が遅れ、排卵が遅くなる、排卵しない月経、子宮内膜の成長が不足または遅くなる、子宮内膜を保つ働きが低下するといったことが起ります。また、亜鉛は卵子の老化を予防しています。老化した卵子は受精しにくくなるため、不妊の原因となります。

不妊症(男性)

亜鉛は、男性ホルモンであるテストステロンの生成に必要な栄養素です。テストステロンが増えることで、精子量が増加と精子運動の向上が見込めます。

 

下痢

亜鉛欠乏状態では下痢になる場合があります。ただし、とり過ぎても下痢になる例があります。

 

食欲不振・食欲低下

亜鉛が欠乏すると消化管粘膜が萎縮と消化液の分泌減少や消化管運動が低下します。これにより、食欲が低下します。また、味覚障害に関連して食欲不振になる場合もあります。

 

骨粗鬆症

亜鉛欠乏では骨代謝に関与する亜鉛酵素であるアルカリホスファターゼなどの成長因子の合成・分泌が低下して骨が形成されにくくなります。このため、骨粗鬆症のリスクが上がります。

 

貧血(亜鉛欠乏性貧血)

亜鉛は赤血球を生成するために必要な成分のため、不足すると貧血の症状を起こします。

 

低アルブミン血症

アルブミンはヒト体内における主要なたんぱく質の一種で血清ではたんぱく質の約60%を占めます。亜鉛はたんぱく質を合成に関与するため、亜鉛の不足により低アルブミン血症になる可能性があります。

 

 

亜鉛の摂取基準については必須ミネラル亜鉛の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

亜鉛の過剰症については必須ミネラル亜鉛の過剰摂取による副作用(過剰症)をご覧ください。

 

 

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