リンの不足と生活習慣病と病気

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リンは多くの食品に含まれているため不足することはまれです。ただし、動物性食品の摂取が少ない場合、豆類や野菜類、穀類に多く含まれるフィチン酸やシュウ酸がリンと結合して吸収を阻害し、不足する可能性があります。

 

生活習慣病

 

高血圧

血清リン濃度と高血圧については、血清リン濃度が高いほど、血圧が低下するという報告があります。このため、リンが不足すると血圧が高くなる傾向にあります。

 

糖尿病

インスリンが作用するとグルコースと共にリンも細胞内に取り込まれるとされています。動物実験では、インスリン感受性が亢進し、耐糖能が改善することが報告があります。健康な人とメタボリックシンドロームの対象者を比較した研究では、メタボリックシンドローム対象者は健康人に比べ血清リン濃度が低い傾向があり、メタボリックシンドロームの該当項目が増えるごとに血清リン濃度が低下することが報告されています。また、血清リン濃度は心血管疾患の発症リスクと有意に正の相関があり、血清リン濃度はBMI、空腹時血糖値、HOMA-IR、血清トリグリセライド値、血圧と有意に負の相関があることが確認されています。これは血清リン濃度の低下はメタボリックシンドロームの発症リスクを高めることを示しています。

 

慢性腎臓病(CKD)

腎臓は、リンやカルシウムの代謝調節に重要な役割を果たしており、腎機能の低下に伴って生じるリン・カルシウム・骨代謝異常はCKD-mineral and bone disorder(CKD-MBD)と総称されています。早期のCKD患者では、軽度の腎機能低下による相対的なリン負荷の増加に対し、FGF23や甲状腺ホルモンが上昇することで腎臓の基本的な機能単位であるネフロン当たりのリン排泄量が増加するため、CKD が高度に進行するまで血清リン濃度は正常範囲に保持されます。FGF23 は CKD ステージ 2 より既 に上昇しており、CKD の予後と相関することが知られています。このため、CKD 早期 からリンの負荷を制限することが、CKD の進行や CKD-MBD を抑制するために好ましいという考え方があります。

 

 

低リン酸血症

血清リン濃度の基準値は2.5~4.5mg/dl程度とされており、低リン酸血症は濃度が基準値の2.5mg/d未満を低リン血症といいます。血清リン濃度<1.0mg/dlの低リン血症では症状がでることがありますが、無症状の場合も多くあります。症状は、骨ミネラル代謝異常の症状と細胞内ATP低下の症状に分けられ、骨ミネラル代謝異常による症状では、クル病、骨軟化症、尿路結石などがあり、ATP低下の症状では、代謝性脳症、心収縮力低下、近位筋障害、横紋筋麻痺による呼吸不全、嚥下障害、イレウス、横紋筋融解症、溶血性貧血、白血球機能低下、血小板機能低下などがあります。

人間の体のリンは85%は骨にあり、14〜15%が細胞内にある。細胞外液にあるリンは1%未満に過ぎず、少ないです。血清は細胞外液の一部のため、リンが細胞外液から細胞内に移動することで、血清リンは低下し、低リン血症になる可能性があります。これが低リン血症の病態として一番多く、腎臓からのリン排泄の増大、消化管からのリンの排泄の増大、腸管からのリン吸収の減少、食事としてのリン摂取の減少も原因となる可能性があります。また、アルコール依存症、低栄養、副甲状腺機能亢進症の方は低リン酸血症になりやすい傾向にあります。インスリンはブトウ糖とともにリンを細胞内に移動させる作用があるため、アルコール依存症や低栄養の方にブドウ糖を与えると、インスリンが分泌され、ブドウ糖が細胞内に入るとともにリンも細胞内に入るから低リン血症になることがあります。副甲状腺ホルモンは骨からのリンの吸収を促し、腎臓からのリンの排泄を促進する作用ありますが、腎臓からのリンの排泄作用のほうが大きいため、血清リンは減少します。このため、副甲状腺機能亢進症では低リン血症になりやすい傾向があります。

 

くる病・骨軟化症

骨ではカルシウムとリンが結合してハイドロキシアパタイトという結晶をつくって、骨の硬さを保っています。これが不足すると骨は柔らかくなります。この状態を骨軟化症といいます。くる病は成長軟骨板がある子どもの骨だけに発生する骨軟化症の一症状です。くる病・骨軟化症の発症の原因は腎臓からリンが排出されるために血液中のリン濃度が下がることです。腎臓からリンが排出される原因は、腎臓でリンの排泄を調節している腎尿細管に障害がある場合と、腎臓自体には異常がなくFGF23というリンの排泄を増やすホルモンが異常に増加している場合の2つがあります。また、くる病・骨粗鬆症はビタミンDの不足により、副甲状腺ホルモンにより尿からの排泄が増加し、細胞外液のカルシウムとリンが減少して起こることがあります。

 

歯周病、歯槽膿漏

唾液中にはカルシウムやリン酸が含まれています。歯垢(プラーク)に唾液中のカルシウムやリン酸などが沈着すると歯石になります。また、この歯石にはさらに歯垢(プラーク)がつきやすいため、炎症など症状が悪化する可能性があり、歯周病、歯槽膿漏になる可能性があります。

 

心筋症

リンが不足すると心筋の収縮力が低下し、血圧低下、心拍出量低下が起こります。このため、心室性不整脈などの心筋症をおこす可能性があります。

 

リンの摂取基準についてはリンの機能・役割と食事摂取基準を確認してください。

リンの過剰摂取についてはリンの過剰摂取による副作用・過剰症を確認してください。

 

 

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