葉酸の不足と生活習慣病・病気

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葉酸の不足による病気・欠乏症は、妊娠や授乳による要求量の増加、小腸の病理的変化、アルコール中毒、メトトレキサートなどの薬剤投与によって引き起こされます。葉酸はアミノ酸や核酸の合成に必要となる補酵素であるため、細胞分裂の盛んな箇所において欠乏症が現れやすいのが特徴です。症状は貧血、免疫機能減衰、消化管機能異常などが見られます。貧血はビタミンB12不足の際と同様、巨赤芽球性貧血という悪性貧血です。また、妊娠初期の女性が十分な葉酸を摂取すると、胎児において神経管閉鎖障害という神経管の発育不全になるリスクを減らすことがわかっています。胎児に神経管閉鎖障害が起こった場合、重度の場合は死に至る場合があります。また、無脳児の発生のリスクが高まります。神経管閉鎖障害に対しては妊娠初期が重要で、特に通常まだ妊娠に気付かない第一週が最も葉酸を必要とする期間であると考えられています。さらに、成人において脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を防ぐという研究結果が多数報告されていまいます。

 

生活習慣病

血漿ホモシステイン濃度と心血管疾患・脳血管障害の関連の関係

葉酸摂取量と脳卒中、心筋梗塞など循環器疾患発症率との関連は報告が複数あり、そのうちの幾つかは葉酸を摂取するとリスクが減る関係が認められています。葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)を用いた試験が相当数行われており、予防効果があるとする結果を得たものが多い傾向にあります。ただし、葉酸以外のB群ビタミンとったビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシンなどの効果及び野菜類に含まれる多種多様なポリフェノールによる効果の可能性を見逃している可能性があるため、必ずしも葉酸のみの効果とは限りません。

がんとの関係

適切なレベルの葉酸は食道癌、胃癌、卵巣癌のリスクの低下を示しており、葉酸に富んだ食事は大腸癌、膵臓癌のリスクの減少に関連していることが認められたています。その他、心臓病や大腸ガン、子宮頸ガンのリスクがあるとの報告があります。しかしながら、葉酸に富んだ食事は乳癌のリスクの減少に関連していますが、研究結果は一様ではない報告もあります。約5万人を対象にした観察の結果、プテロイルモノグルタミン酸を長期にわたって摂取しても、がん発症リスクは増大も減少もしないことが報告さています。このため、必ずしも葉酸ががんに効果があるとは限りません。

 

貧血(巨赤芽球性貧血)

葉酸はビタミンB12とともに赤血球を作る効果があります。このため、葉酸が不足すると異常に巨大化した赤血球が作られ、悪性貧血である巨赤芽球性貧血を引き起こす可能性があります。

 

ダウン症

ダウン症とは染色体、いわゆるDNAの異常によって起こるといわれています。葉酸はDNA合成に深く関わっています。葉酸が不足するとDNAの異常が起きやすくなり、海外で行われた研究によると葉酸を十分に摂取しているとダウン症のリスクが70%軽減されるということが報告されています。このため、葉酸の不足がダウン症のリスクを上げる可能性があります。

 

神経管閉鎖障害

葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の摂取は、妊婦において生まれてくる子どもの神経管欠損症を予防することが、これまでの疫学実験で示されています。葉酸が妊娠初期、特に7週目までに不足すると、先天異常である神経管閉鎖障害を起こすリスクが高まります。神経管閉鎖障害とは胎児の先天異常の一種です。神経管の下部に閉鎖障害が起きた場合を二分脊椎といい、神経管の上部で閉鎖障害が起きると、脳が形成不全となり、これを無脳症といいます。胎児の中枢神経の基礎となる神経管は、最初は板状の神経板からはじまり、妊娠4週目頃に管状の神経管へと発達していきます。細胞の分裂や増殖に関わる葉酸が不足することで神経管の一部がきちんと閉じられず、脊髄が飛び出した状態になる二分脊椎になることがあります。これが。出産後に二分脊椎が判明すると直ちに手術が行われますが、下肢の運動障害や排泄機能に障害が残ることもあります。神経管閉鎖障害になると神経組織に異常をきたし、多動症(ADHD)や下肢の運動障害・膀胱機能障害につながるリスクが高くなる可能性があるだけでなく、脳がうまく作られず無脳症となる場合もあります。このため、葉酸は妊婦にとってとても重要なビタミンで、不足すると神経管閉鎖障害の原因となる可能性があります。

妊娠可能な女性への注意事項

胎児の神経管閉鎖障害とは、受胎後およそ28日で閉鎖する神経管の形成異常であり、臨床的には無脳症・二分脊椎・髄膜瘤などの異常を呈します。神経管閉鎖障害の発症は遺伝要因などを含め多因子による複合的なものであり、その発症は葉酸摂取のみにより予防できるものではありませんが、受胎前後のプテロイルモノグルタミン酸の投与が、神経管閉鎖障害のリスク低減に有効であることは数多くの研究から明らかになっています。葉酸代謝に関連する酵素(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)の遺伝子多型が神経管閉鎖障害の発生リスクと関連するという報告が見られます。その他、プテロイルモノグルタミン酸摂取によってリスク低減が期待される胎児奇形として、口唇・口蓋裂や先天性心疾患が挙げられています。従って、最も重要な神経管の形成期に、母体が十分な葉酸栄養状態であることが望ましいといえます。

 

月経前症候群(PMS)・つわり・生理不順・生理痛

妊娠中は交感神経・副交感神経のバランスが悪くなり、それによりつわりの症状が起きるともいわれています。葉酸にはビタミンB12と共に摂取することによりバランスが悪くなった自律神経を整える作用があることから、つわりを軽減させるはたらきがあると言われています。また、女性の生理不順や生理痛も葉酸不足が原因の場合が多く、葉酸を摂取することで改善が期待できます。葉酸を含むビタミンB群にはホルモンバランスを整える働きがあるため月経前症候群(PMS)症状の緩和が期待できます。このため、葉酸が不足すると月経前症候群(PMS)、つわり、生理不順、生理痛の症状が悪化する可能性があります。

 

うつ病

葉酸には自律神経の安心感、リラックス感などを司る副交感神経を活発化する働きがあり、気持ちをリラックスさせ精神面を安定させるという効果があります。特にうつ病の患者の食事を調査するとおよそ8割の方が葉酸の不足がみられたという研究結果があります。実際にうつ病患者は、葉酸欠乏症かそれに近い状態になっている人が多い傾向があり、精神科、心療内科でも葉酸の摂取を推奨するところがあります。このため、葉酸が不足するとうつ病、またはうつ状態になるリスクが高まる可能性があります。

 

動脈硬化

葉酸はビタミン6やビタミン12とともに動脈硬化を起こす原因でもあるホモシステインを減させる働きがあります。葉酸が不足すると転移が進まず血管内のホモシステイン濃度が上昇し、血液に流れ込み、それが悪玉コレステロールと結合して血管に付着し、動脈硬化を引き起こします。ホモシステインは血液凝固因子や血管内皮細胞に影響をあたえるので、血中ホモシステイン濃度の上昇は動脈硬化や動脈血栓、さらには狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの発症のリスクの増加につながります。

 

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