葉酸の過剰摂取による病気・過剰症

健康辞苑アイコン ビタミン

通常の食品で100g当たりの葉酸含量が300μgを超える食品は肝臓を除き存在しません。このため、通常の食品を摂取している人で過剰摂取による健康障害が発現したという報告はありません。しかし、サプリメントに含まれるプテロイルモノグルタミン酸型の葉酸では過剰摂取により神経障害などの健康障害が見られること報告されています。プテロイルモノグルタミン酸とは葉酸の1種で、他にプテロイルポリグルタミン酸などもあります。食品などに含まれる葉酸の多くはこのプテロイルポリグルタミン酸(天然葉酸)です。プテロイルポリグルタミン酸は小腸でプテロイルモノグルタミン酸に変換されて吸収されます。サプリメントに含まれる葉酸は主にプテロイルモノグルタミン酸(合成葉酸)です。

 

葉酸過敏症

葉酸を1000~10000μg摂取すると、葉酸過敏症を起こす可能性があります。症状としては、発熱、蕁麻疹、紅斑、かゆみ、呼吸障害などです。

 

喘息

オーストラリアの研究では、妊娠30~34週頃にプテロイルモノグルタミン酸(合成葉酸)を1000μg摂取すると、胎児が喘息になるリスクが25%上昇するという報告があります。

 

参考

過剰症はビタミンB12の欠乏を隠すため、悪性貧血が潜在化し、ビタミンB12欠乏症の診断を困難にする可能性がります。アメリカにおいて、プテロイルモノグルタミン酸強化食品を摂取している人の血清葉酸値が高いことに起因する悪性貧血のマスキング、神経障害など健康障害が報告されています。過剰摂取されたプテロイルモノグルタミン酸によって生じる健康障害として、悪性貧血のマスキングが挙げられます。これはビタミンB12が不足している人に大量のプテロイルモノグルタミン酸を摂取させると、大赤血球性貧血の発生をマスクし、より一層重篤な疾病である後外側脊髄変性を進行させるというものです。このマスキングの機序として以下ががあります。

  • プテロイルモノグルタミン酸から生成するジヒドロプテロイルモノグルタミン酸によるチミジレートシンターゼ活性の阻害(この酵素活性の阻害はdTMPの生成量の低下を引き起こし、結果としてDNA合成を阻害する)
  • ホスホリボシルアミノイミダゾールカルボキサミドトランスホルミラーゼ活性の阻害(プリン塩基のde novo生合成経路の酵素の一つであるため、この酵素活性の低下はプリン塩基量の低下をもたらし、結果的にDNA合成を阻害する)
  • 5,10─メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素活性の阻害(ビタミンB12酵素のメチオニンシンターゼの基質の一つとなる5─メチルテトラヒドロ葉酸を生成する酵素の一つ)

つまり、ある量を超えるとプテロイルモノグルタミン酸は拮抗剤となることを意味します。また、ガン治療に用いられる抗葉酸剤に対して過剰な葉酸は薬効を低減させる可能性があります。その他、葉酸は亜鉛と複合体を形成して小腸からの亜鉛の吸収を抑制する可能性があります。亜鉛の場合の阻害作用に限っては、5~15mg/日程度の葉酸摂取であれば影響はないという報告もあります。

 

関連記事

葉酸の機能・役割と食事摂取基準

葉酸の効果・効能

葉酸の不足と生活習慣病・病気

葉酸の不足・欠乏の症状

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました