葉酸の効果・効能

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葉酸は水に溶けやすい水溶性ビタミンに分類されます。ビタミンM、ビタミンB9、プテロイルグルタミン酸とも呼ばれ、生理活性物質です。葉酸は体内で還元を受けてジヒドロ葉酸を経てテトラヒドロ葉酸に変換された後に補酵素として働きます。葉酸はたんぱく質や細胞をつくる時に必要なDNAなどの核酸を合成する重要な役割があります。このため、赤血球の細胞の形成を助けたり、細胞分裂が活発である胎児の正常な発育などに役立ちます。葉酸はアミノ酸や核酸の合成に必要となる補酵素であるため、細胞分裂の盛んな箇所において欠乏症が現れやすい特徴があります。

 

核酸の合成(細胞分裂・修復する効果)

葉酸はたんぱく質や核酸(DNA、RNA)の合成に関与します。葉酸は遺伝子などを構成する核酸を生成、修復する役割があり、正常な細胞分裂にも欠かすことのできないビタミンです。核酸とは遺伝情報が詰まったDNAと遺伝情報の転写、たんぱく質の合成などを担うRNAのことで、これらは細胞の分裂・増殖・成熟には欠かせません。葉酸は核酸の成分であるプリン基やチミンの合成に必要な酵素の補酵素としてその働きを助けます。葉酸が不足すると細胞分裂に支障をきたし、口内炎や舌炎、胃や十二指腸潰瘍、免疫機能、消化機能などが起こりやすくなります。葉酸が不足した状態が続くと、免疫細胞の生成に支障をきたし、風邪などを引きやすくなったりします。さらに、癌になったり、奇形児が生まれたりという原因はこのDNAの配列が異常となり、正しい遺伝子情報が伝わらないことにあります。葉酸の欠乏は核酸の形成の阻害につながり、細胞の分裂や成長にも影響してくるので、細胞分裂を繰り返し活発に成長していく胎児にとってはとりわけ大きな問題となります。このことから妊婦は十分に葉酸を摂取することが求められます。このため、細胞分裂が盛んな口、胃、腸など粘膜や妊娠時には欠かせない栄養素となります。また、葉酸の効果が最も早く見えるのは肌です。葉酸を摂取することで肌の細胞の代謝であるターンオーバーが正常に行われるようになり、血流の改善によって、肌荒れを防止につながります。

 

貧血の予防・造血効果

葉酸はビタミンB12とともに赤血球を作る効果があります。体内で赤血球が作られる際に鉄から赤血球の合成が始まりますが、赤血球の核酸の合成には葉酸が必要です。葉酸が不足すると、異常に巨大化した赤血球が作られ、悪性貧血である巨赤芽球性貧血を引き起こす可能性があります。この関係で、葉酸が不足すると動悸や息切れ、全身の倦怠感などを引き起こす可能性があります。

 

粘膜の機能を維持する効果

葉酸は粘膜の機能を維持する効果があります。粘膜は細胞の生まれ変わりが非常に活発なところで、体内でも葉酸が多く存在しています。細胞分裂に欠かせない葉酸が不足すると消化器系の粘膜にも障害がでて、舌炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍になる可能性があります。潰瘍までにはいたらない場合でも食欲不振や下痢などを引き起こします。

 

胎児・授乳期の成長効果

胎児は、妊娠7週目までの胎芽とよばれる状態で脳や脊髄の基礎となる神経管ができあがり、妊娠11週までには3頭身の形がはっきりとして胎児と呼ばれるようになります。葉酸は胎児の細胞分裂を促進し、成長を促します。胎児の神経管ができあがる妊娠7週目までの時期に葉酸が不足すると、二分脊椎や無脳症といった神経管閉鎖障害が起こりやすくなります。また、出産後の授乳期の赤ちゃんも同様に活発に細胞分裂を繰り返しています。このため、母親が葉酸をしっかり摂ることで母乳を通じて赤ちゃんに栄養が届き、成長を助ける効果があります。この時期に葉酸が不足すると赤ちゃんの発育に遅れを及ぼすこともあります。

 

流産・死産のリスクを軽減する効果

妊娠中の妊婦は赤ちゃんの血液も必要になることから、通常時に比べ血液の量が2kg分増えるといわれています。この時期に葉酸が不足すると、ホモシステインが増加し血液の流れが悪くなるだけでなく、赤ちゃんに新鮮な血液を送ることが出来なくなります。この状態が続くと流産のリスクが高まります。このため、妊娠中には葉酸を十分に摂ることが重要です。葉酸が不足して二分脊椎になる場合は、背中から下の神経管に閉鎖障害がみられますが、この現象が背中から上にあらわれると無脳症になります。無脳症は脳に欠損や収縮がみられる状態で、流産や死産の危険が高まります。

 

着床の効果(妊娠しやすくなる効果)

葉酸には着床させる可能性を高める効果があります。妊娠を望む女性で、精子が卵子に受精できたとしても着床ができずに妊娠に至らない場合があります。受精した卵子は、その瞬間から細胞分裂を繰り返しますが、その分裂を助けるのが葉酸の働きです。また、葉酸には受精卵を着床するために子宮内膜の環境をよくする働きもあります。受精卵を適切に細胞分裂させ、子宮内膜の環境を整えることが出来れば着床へとつながり妊娠する可能性が高まります。

 

ダウン症のリスクを低減する効果

ダウン症とは染色体、いわゆるDNAの異常によって起こるといわれています。葉酸はDNA合成に深く関わっています。葉酸が不足するとDNAの異常が起きやすくなります。海外で行われた研究によると葉酸を十分に摂取しているとダウン症のリスクが70%軽減されるということが報告されています。

 

神経管閉鎖障害の発症リスクを軽減する効果

葉酸は、DNA(遺伝子情報)とRNA(体内でタンパク質を合成)で構成された「核酸」を作る働きがあります。また、DNAが正しく複製・分裂して細胞が増えていく過程で重要となるタンパク質の生成にも欠かせません。このような働きを持つ葉酸が妊娠初期、特に7週目までに不足すると、先天異常である神経管閉鎖障害を起こすリスクが高まります。神経管閉鎖障害とは胎児の先天異常の一種です。神経管の下部に閉鎖障害が起きた場合を二分脊椎といい、神経管の上部で閉鎖障害が起きると、脳が形成不全となり、これを無脳症といいます。胎児の中枢神経の基礎となる神経管は、最初は板状の神経板からはじまり、妊娠4週目頃に管状の神経管へと発達していきます。神経管は背中の中心あたりから上下に向かって閉じていき、最後に頭側と尾側が閉じてから骨や筋肉に覆われます。このときに、細胞の分裂や増殖に関わる葉酸が不足することで神経管の一部がきちんと閉じられず、脊髄が飛び出した状態になることがあります。これが二分脊椎です。出産後に二分脊椎が判明すると直ちに手術が行われますが、下肢の運動障害や排泄機能に障害が残ることもあります。また、神経管は妊娠7週目までに形成され、8週目には脳脊髄液の循環が始まりますから、この循環に支障をきたすことで水頭症が起こる可能性もあります。遺伝でない場合は葉酸を十分に摂取することにより発症リスクが軽減されるといわれています。神経管閉鎖障害になると神経組織に異常をきたし、多動症(ADHD)や下肢の運動障害・膀胱機能障害につながるリスクが高くなる可能性があるだけでなく、脳がうまく作られず無脳症となる場合もあります。

 

つわり・生理不順・生理痛を軽減する効果

妊娠中は交感神経・副交感神経のバランスが悪くなり、それによりつわりの症状が起きるともいわれています。葉酸にはビタミンB12と共に摂取することによりバランスが悪くなった自律神経を整える作用があることから、つわりを軽減させるはたらきがあると言われています。また、女性の生理不順や生理痛も葉酸不足が原因の場合が多く、葉酸を摂取することで改善が期待できます。

 

月経前症候群(PMS)を緩和する効果

葉酸を含むビタミンB群にはホルモンバランスを整える働きがあるため症状の緩和が期待できます。

 

肩こりを改善する効果

肩こりの原因であるといわれている血液の循環不足による筋肉の収縮。葉酸が血液を作り出す作用により、肩のまわりの血液を循環させる働きが期待できます。また、末端神経の修復に必要なメコバラミンというビタミンの効果を促進させる効果もあるので肩こり改善・対策に良いです。

 

髪を生えやすくする・白髪防止の効果

髪の毛の原料となるのはケラチンというたんぱく質です。葉酸にはたんぱく質の生成を促進する効果があるため、摂取をすることで新しい髪の毛が生えやすくなります。また、葉酸には女性ホルモンの一種であるプロゲステロンを生成する働きもあり、それもまた抜け毛、薄毛を防止するように働きます。特に、ホルモンバランスが乱れがちな出産直後の女性は、葉酸を摂取することで抜け毛や髪のパサつきを防ぐことができます。さらに、葉酸はチロシンという物質の生成を促進する効果があり、このチロシンはメラノサイトという細胞によってメラニンとなり、髪の毛を黒くする色素として機能します。このため葉酸は、髪が生えるのを促進し、白髪を予防できます。

 

痛風を予防する効果

尿酸が生産される原因の酵素であるチサンキンオキシターゼは葉酸によってその働きが抑制する効果があります。

 

うつ病・ストレスを緩和する効果

葉酸には自律神経の安心感、リラックス感などを司る副交感神経を活発化する働きがあり、気持ちをリラックスさせ精神面を安定させるという効果があります。このため、ストレスやそれに起因するさまざまな病気を予防する効果もあります。特にうつ病の患者の食事を調査するとおよそ8割の方が葉酸の不足がみられたという研究結果があります。実際にうつ病患者は、葉酸欠乏症かそれに近い状態になっている人が多い傾向があり、精神科、心療内科でも葉酸の摂取を推奨するところがあります。また、腸内の善玉菌が人間の神経系に対しても大きな影響を与えていることが明らかになり、葉酸が関連していると推測されています。

 

動脈硬化を予防する効果

葉酸はビタミン6やビタミン12とともに動脈硬化を起こす原因でもあるホモシステインを減させる働きがあります。葉酸はアミノ酸の一種であるホモシステインのメチオニンへの転移に必要です。メチルテトラヒドロ葉酸(メチルTHP)のメチル基をホモシステインへと供与することでメチオニンが生成されます。ホモシステインは分解されるとシステインという物質に変化し、システインは皮膚などを生成する原料となります。葉酸が不足すると転移が進まず血管内のホモシステイン濃度が上昇し、血液に流れ込み、それが悪玉コレステロールと結合して血管に付着し、動脈硬化を引き起こします。ホモシステインは血液凝固因子や血管内皮細胞に影響をあたえるので、血中ホモシステイン濃度の上昇は動脈硬化や動脈血栓、さらには狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの発症のリスクの増加につながります。

 

がんを予防する効果(真偽不明)

葉酸欠乏症は以下の結果をもたらします。

  • 細胞内のS-アデノシルメチオニン(SAM)を減少
  • DNAにおけるシトシンのメチル化を抑制
  • プロト癌遺伝子を活性化
  • 悪性転換を誘導
  • DNA先駆物質の不均衡を引き起こす
  • DNAへのウラシルを誤認させる
  • 染色体損傷を促進する

これらのすべてのメカニズムは前立腺癌の形成のリスクを増大させます。適切なレベルの葉酸は食道癌、胃癌、卵巣癌のリスクの低下を示しており、葉酸に富んだ食事は大腸癌、膵臓癌のリスクの減少に関連していることが認められたています。その他、心臓病や大腸ガン、子宮頸ガンのリスクがあるとの報告があります。しかしながら、葉酸に富んだ食事は乳癌のリスクの減少に関連していますが、研究結果は一様ではない報告もあります。また、長期にわたりプテロイルモノグルタミン酸を摂取させてみても、がんの発症リスクは増大も減少もしないと報告されています。これは、葉酸がPI3K/Aktの情報伝達増幅経路を活性化し、細胞の生存を改善しますが、癌細胞もこの経路を利用して生き延びることができるため、これにより身体のがんの予防効果に対し、有益・不利益の双方に成り得ることが考えられます。また、葉酸はPTEN(癌抑制遺伝子)の濃度を低下させることがわかっています。このためのがんの予防効果の関係をより複雑にしていると考えられるため、必ずしもがんの予防に効果があるとは限りません。

 

葉酸の摂取基準については以下を確認してください。

葉酸の機能・役割と食事摂取基準

 

葉酸の不足・欠乏については以下を確認してください。

葉酸の不足と生活習慣病・病気

葉酸の不足・欠乏の症状

 

葉酸の過剰摂取については以下を確認してください。

葉酸の過剰摂取による病気・過剰症

 

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