ビタミンAの過剰摂取による病気・過剰症

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ビタミンAは脂溶性のため、排出されず蓄積されることで過剰症を引き起こすことがあります。過剰摂取による健康障害が報告されているのはサプリメントや大量のレバーなどを摂取した場合です。ビタミンAを過剰摂取した場合の症状の多くはレチノイン酸によるものと考えられています。レチノイン酸とはビタミンAの代謝物のことで、ビタミンAは体内でレチニルエステルとして取り込まれ、体内でレチノールに変換され、レチノールは最終的にレチノイン酸へと代謝されます。ビタミンAの過剰摂取による症状の特徴は頭痛です。ビタミンAの過剰症には急性症状と慢性症状があり、急性毒性では脳脊髄液圧の上昇し、慢性毒性では頭蓋内圧亢進、皮膚の落屑、脱毛、筋肉痛などが起こります。ビタミンAによる過剰症は、通常の食事では起こりづらくビタミンAを含む薬剤やサプリメントを大量摂取した場合、長期間摂取した場合に発症します。

 

ビタミンAの過剰症について

ビタミンAは摂取する成分により、吸収率が異なります。このため、吸収力が異なる緑黄色野菜に含まれているβカロテンと動物のレバーなどに含まれるレチノールの2つに分けて考えます。

レチノールの過剰摂取と過剰症

レチノールは、鶏レバー、豚レバー、あんこうの肝、うなぎの蒲焼きなどの、動物性食品に多く含まれているビタミンAのもととなる成分です。このレチノールは、身体への吸収率が高いのが特徴で、βカロテンのように、変換されることもありません。吸収されたレチノールのほとんどは、肝臓に運ばれ貯えられます。このため、レチノールを多く含む動物性食品を、大量に食べるとそれに比例して身体に貯えられ、ビタミンAの過剰症が起こります。

βカロテンの過剰摂取と過剰症

ビタミンAのもとになるβカロテンは、消化吸収されるときにβカロテンから、ビタミンAに変化します。βカロテンは、必要な分だけが置き換えられて吸収され、余分な分は身体の外に、排出される仕組みになっています。また、βカロテンの性質上、吸収率やビタミンAへの変換率が低いため、大量に摂取した場合でも、過剰摂取になることはありません。ビタミンAの1日の摂取量の上限は、3000μgREですが、たとえβカロテンを、この10倍以上摂取しても、身体に異常がでてくることは、ほとんどありません。βカロテンは、レチノールに比べ、安全なビタミンAといえます。

 

急性ビタミンA過剰症

ビタミンAを過剰に摂取した場合、12時間前後で急性中毒症状が現れます。急性ビタミンA過剰症は、頭痛、めまい、腹痛、悪心、嘔吐、吐き気、めまい、過敏症、全身倦怠感などが出現した後、全身の皮膚落屑(皮膚の剥離)、顔面の紅潮、顔面の浮腫がみられます。これらは脳脊髄液圧の上昇に伴うものです。

 

慢性ビタミンA過剰症

慢性ビタミンA過剰症は、25,000I.U.(7,500μgREに相当)を服用すると慢性症状が出現すると言われています。ビタミンA過剰症の慢性の症状は、全身の関節や骨の痛み、皮膚乾燥、皮膚の剥脱、脱毛、筋肉痛、肝障害、関節炎、微熱、食欲不振、体重減少、肝脾腫、頭痛、体重の減少、嘔吐、吐き気、四肢の疼痛性腫脹、頭蓋骨の変形、甲状腺機能低下、肝障害、口角の亀裂、肝腫大、骨粗鬆症など、さまざまな症状が現れます。

 

奇形

妊婦のビタミンAの過剰摂取では胎児の顔や頭に異常が起こる催奇形性が報告されています。1ヶ月~3ヶ月の妊娠初期、妊娠を希望する女性は注意する必要があります。ビタミンAの過剰摂取の症状として、口唇裂などの形態異常のある子供を出産することがあります。ビタミンAによる奇形の発症率は、1日あたりの摂取量が5000I.U.(1650μgRE)以上で1.3%、15000I.U.(4950μgRE)以上で3.0%という報告があります。妊婦さんの1日のビタミンA摂取量は、多くても5000I.U.以内にとどめておくことが大切です。その他、ビタミンAを1日3000μgRE以上摂取すると、1日1500μgRE摂取した群と比べて先天異常の発生の確率が2倍以上になるといった報告もあります。こうしたことから厚生労働省では妊婦のビタミンAの耐用上限量は付加量も含めて3000μgREに設定されています。このため、妊娠した女性がレチノールを過剰摂取すると、生まれてくる赤ちゃんが奇形になる危険性が多く、注意が必要です。ただし、プロビタミンAであるビタミンAのもとになるβ-カロテンの場合、必要な量のみ体内でレチノールへと変換され、吸収されるため過剰症の心配はないとされています。妊婦は摂取するビタミンAの半分はプロビタミンAから摂取すること望ましいとする意見もあります。

 

参考:皮膚炎

皮膚では線維芽細胞によってビタミンAの濃度が調節されています。過剰なビタミンAや線維芽細胞によるビタミンAを代謝する仕組みが機能しなくなった場合、アレルギーや炎症を引き起こす免疫細胞の1種のマスト細胞が異常に活性化し、皮膚炎が誘導されることが報告されています。この結果は、体の組織ごとに異なる特性をもつマスト細胞の活性が、体の様々な部位で起こる慢性的な炎症やアレルギーの発症につながっている可能性をしたものです。このため、ビタミンAの過剰摂取、または、線維芽細胞によるビタミンAを代謝不全によって皮膚炎が起こる可能性があります。

 

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