ビタミンB6が不足することで生活習慣病、神経障害、うつ、女性ホルモンに関する病気などが現れる可能性があります。
生活習慣病
ビタミンB6の不足は生活習慣病に関連します。大腸がんの発症についての論文があります。また、ビタミンB6は動脈硬化と関連があります。
大腸がん
ビタミンB6が大腸がんの予防因子であることが報告されています。ビタミンB6の摂取量と大腸がんとの関係の調査から、男性においてビタミンB6摂取量が最も少ないグループ(平均摂取量は1.02mg/日)に比べ、それよりも多いグループ(~1.80mg/日)で30~40%リスクが低かったと報告があります。このため、ビタミンB6が不足することで大腸がんの予防因子と考えられます。ビタミンB6が不足することで大腸がんのリスクが上がります。
動脈硬化
ビタミンB6はホモシステインという動脈硬化の因子を抑制をするということが確認されています。また、ビタミンB6は脂質の代謝を補助し、肝臓への脂質の蓄積を防ぐため、脂肪肝を予防する効果があります。ビタミンB6は、ビタミンB2やリンとともに脂肪肝の治療にも使われています。その他、コレステロール値を正常に戻すという働きも報告されています。このため、ビタミンB6が不足することで動脈硬化から発症する狭心症、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが上がることが考えられます。
脳卒中(心血管疾患)
葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6は、動脈硬化などの原因となるホモシステイン濃度を低下させるため、心血管疾患リスクを低下させるという仮説があります。心血管疾患の5,500人の試験では、ビタミンB6を50mg/日、ビタミンB12を1mg/日、葉酸を2.5mg/日、5年間摂取してホモシステイン濃度が低下し、脳卒中リスクが約25%低下した報告があります。結果からすと、ビタミンB6の不足は脳卒中のリスクを上げる可能性があります。ただし、この試験ではビタミンB6単体での評価ではないことに注意していください。
神経障害
神経障害の発生などのビタミンB6の不足に起因する障害が観察された報告があります。また、血漿中のピリドキサールリン酸(PLP)濃度が低下した若年女性において、脳波パターンに異常が見られたという報告があります。その他、ビタミンB6は神経伝達物質のセロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、GABAなどの合成に関わっています。このため、ビタミンB6の不足は神経障害を引き起こす可能性があります。
うつ病
ビタミンB6はうつ病の要因であるセロトニンの合成に関与します。また、セロトニンの合成に必要なアミノ酸(たんぱく質)の一種であるトリプトファンの代謝にも関わります。このため、ビタミンB6が不足することでうつ病またはうつ症状を重症化させる可能性があります。
月経前症候群(PMS)
ビタミンB6はエストロゲンという女性ホルモンの代謝に関わります。エストロゲンが不足するとホルモンバランスが崩れて、月経前症候群(PMS)の原因となります。いくつかの論文ではビタミンB6の摂取で月経前症候群(PMS)の症状の緩和が報告されています。このため、ビタミンB6が不足すると月経前症候群(PMS)の症状である吐き気、憂うつ、イライラ、肩こり、頭痛、腰痛、全身のだるさなどの様々な症状が起こります。
つわり
ビタミンB6は妊娠初期のつわりにも効果があります。いくつかの研究ではビタミンB6の摂取によってつわりが改善する結果が報告されています。ビタミンB6であるピリドキシン1日30-75mgを摂取することで妊娠中女性のつわりが減少した報告があり、ビタミンB6と抗ヒスタミン薬のドキシラミンの併用によって、妊婦のつわりが70%減少した報告があります。米国において、米国産科婦人科学会(ACOG)は妊娠中のつわりの治療にビタミンB6を1回10-25mg、1日3-4回摂取する単剤療法を推奨しています。このため、妊娠中の女性がビタミンB6不足になるとつわりが発生するリスクがあがります。
皮膚炎(脂漏性皮膚炎)・ニキビ
ビタミンB6は病院におけるニキビ治療の内服薬として処方されることがあり、肌の再生に必要なビタミンです。ビタミンB6は補酵素としてタンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜を作り出す働きがあります。ビタミンB6が不足すると慢性的に肌荒れ、皮膚炎、ニキビの原因になることがあります。また、ビタミンB6は脂質の代謝に関与し、皮脂分泌を調整する働きがあります。このため、ビタミンB6が不足するとニキビや脂漏性皮膚炎を起こすことがあります。肌が脂っぽくなって鼻の周りのフケが増えきた場合、ビタミンB6が不足している可能性があります。その他、ニキビの炎症によって肌が強くダメージを受けると、メラニン色素が活発に生成されて色素沈着を起しますが、ビタミンB6は炎症後色素沈着を緩和する働きがあります。
ギンナン食中毒
イチョウの銀杏には4-O-メチルピリドキシンが含まれており、これがビタミンB6に拮抗してビタミンB6から作られるGABAの生合成を阻害して痙攣などを引き起こす可能性があります。
認知機能
ビタミンB6の不足した状態は、高齢者にしばしば起こる認知機能低下に関与しているという仮説があります。いくつかの研究では、血清ビタミンB6濃度の高値と記憶テスト高スコアとの間の関連が示されています。このため、ビタミンB6の不足は認知機能低下のリスクを上げる可能性があります。
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