鉄(鉄分)の種類・分類と機能

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鉄は食物中ではヘム鉄と非ヘム鉄の2種類に分類されます。ヘムとはポルフィリンと呼ばれるたんぱく質の中心に鉄が含まれている化合物で、この中心にある鉄がある鉄をヘム鉄と呼び、囲まれていない鉄を非ヘム鉄と呼びます。この2つのヘム鉄と非ヘム鉄の大きな違いは体内における吸収力の高さで、吸収されやすいのがヘム鉄、吸収されにくいのが非ヘム鉄です。摂取した鉄分を100としたとき、ヘム鉄は10~20%、非ヘム鉄は1~6%の比率で吸収されます。

体内に吸収されると球となる機能鉄と肝臓や脾臓および骨髄に蓄えられる貯蔵鉄の主に2種類に分類されます。貯蔵鉄は、機能鉄が不足した場合、血液中に放出されて機能鉄として働きます。

 

 

鉄の機能や効果について以下をご覧ください。

鉄(鉄分)[ミネラル]の機能・役割と食事摂取基準

鉄(鉄分)の効果-効能と不足-欠乏の症状

 

ヘム鉄

肉・魚などの動物性食品に含まれることが多いのがヘム鉄となります。レバー、赤身の肉、貝類などに多く含まれています。ヘム鉄の体内への吸収率は非ヘム鉄に比べて6~7倍高くなります。ヘム鉄は鉄ポルフィリン複合体という物質に包まれたような構造をしているため、体内に入ったとき胃や腸を傷つけたり荒らしたりしにくい栄養素になります。鉄分は体の中で作ることができず継続して補給しなければなりませんが、摂取しても体内では吸収されにくいとされています。理由は鉄と他の食べ物を一緒に食べると他の食べ物に吸収の邪魔をされやすいからです。

ヘム鉄の構造は二価鉄という形をとっています。体内でのヘム鉄は血中に存在するヘモグロビンの構成要素の一つになります。ヘモグロビンはヘム鉄(鉄ポルフィリン複合体)グロビン(たんぱく質)から構成されています。

 

非ヘム鉄

野菜・海藻・大豆などの植物性食品に含まれることが多いのが非ヘム鉄です。ほうれん草や小松菜、大豆製品、ひじきなどに特に多く含まれています。非ヘム鉄はヘム鉄と比べると、吸収力がとても低いのが特徴です。非ヘム鉄が吸収されにくい理由は、ヘム鉄と同様に非ヘム鉄が胃や腸で吸収される際に他の食べ物から邪魔を受けやすいからですが、加えて非ヘム鉄の構造構造上の問題で吸収されにくいとされています。非ヘム鉄は動物性タンパク質やビタミンCと一緒にとることで吸収されやすくなります。また非ヘム鉄は胃腸を荒らしてしまう原因にもなります。

ヘム鉄の構造は三価鉄という形をとっています。非ヘム鉄は胃酸やアスコルビン酸などのビタミンCによって酸化し、二価鉄になります。二価鉄になることによって小腸で吸収されます。

 

機能鉄

鉄は体内ではその70%が酸素の運搬に関わる赤血球のモグロビンとして存在しています。このほか筋肉内で酸素を貯蔵するミオグロビンや鉄輸送たんぱく質であるトランスフェリン、シトクロム、カタラーゼなどといった構成成分としても存在しています。これらはどれも生命の機能の維持に必要なもののため機能鉄といいます。

 

貯蔵鉄

フェリチンやヘモジデリンとして、肝臓や脾臓、骨髄の網内系組織などに貯蔵されているものを貯蔵鉄といいます。体内の総鉄量の約30%を占めます。

 

鉄に関連する主な項目

項目説明・機能
ヘモグロビン ヘムとグロビンから構成され、赤血球に含まれていています。主な機能は血液中のO2輸送です。赤色素であるヘムを持っているため赤みを持っています。血液中に見られる赤血球の中に存在するタンパク質で酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っていいます。ヘモグロビンの鉄はもっとも含量が多く、体内の総鉄量の6~7割を占めます。
ミオグロビン 筋肉中にあって酸素分子を代謝に必要な時まで貯蔵する色素タンパク質です。主な機能は骨格筋細胞中のO2貯蔵です。酸素に対する親和性がヘモグロビンより高いため血中のヘモグロビンから酸素を受け取り貯蔵することができます。筋収縮ののために筋肉内の酸素の運搬・貯蔵しているため、不足時には持久力が低下する可能性があります。体内の総鉄量の3~5%を占めます。
トランスフェリン 血漿に含まれるタンパク質の一種で、鉄イオンを結合しその輸送を担っています。特にFe3に対する親和性は極度に高いため主に血液中のFe3+輸送を行います。肝臓で生成することができます。
細胞の表面にはトランスフェリン受容体があり、鉄を結合したトランスフェリンがこの受容体に結合すると、エンドサイトーシスにより被覆小胞に包まれて細胞内に輸送されます。細胞のH+-ATPアーゼによって小胞内のpHは低下することによりトランスフェリンの鉄親和性が低下して鉄イオンを放出することができます。受容体はトランスフェリンを結合したまま細胞表面に再輸送(エクソサイトーシス)され、再利用が可能です。トランスフェリン鉄は、体内の総鉄量の0.1%です。
カタラーゼ過酸化水素を不均化して酸素と水に変える反応を触媒する酵素でヘムタンパク質の一種です。過酸化水素を使って酸化・分解を行います。
ペルオキシダーゼ過酸化水素を無害な水に分解します。
フェリチンフェリチンは貯蔵鉄と結合しているたんぱく質です。肝臓や脾臓、骨髄の網内系組織などに貯蔵されています。
ヘモシデリン赤血球やヘモグロビンが網内系やその他の細胞により貪食され分解される過程で生じ、脾臓や骨髄に貯蔵されています。
シトクロムc全身の細胞のミトコンドリアの内膜に弱く結合しているヘムタンパク質の一種で電子伝達系の構成要素です。
ヘモペキシン、ハプトグロブリン溶血によって血管内にヘモグロビンが放出されると、ヘムはヘモペキシンに、ヘモグロビンはハプトグロビンに結合します。これらは肝臓に運ばれて、鉄が取り出されて再利用されます。
鉄-硫黄タンパク質 最もよく知られる鉄硫黄クラスターの役割はミトコンドリアでの電子伝達にかかる酸化還元です。鉄硫黄タンパク質は他にもアコニターゼのような触媒、リポ酸とビオチンの生合成における硫黄供与体など多くの機能を持っています。

 

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