この記事では、鉄(鉄分)の種類を、食品に含まれる形(ヘム鉄と非ヘム鉄)と、体の中での役割(機能鉄と貯蔵鉄)の2つの見方で説明します。説明は、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の鉄の章に基づいています。
鉄は元素記号Feで表される金属元素です。体内の鉄は成人で3〜4gほどあり、その約70%は赤血球の中のヘモグロビンに含まれています。
鉄の働きや1日に必要な量については、次の記事を確認してください。
食品に含まれる鉄の種類:ヘム鉄と非ヘム鉄

食品中の鉄は、たんぱく質と結びついた「ヘム鉄」と、無機鉄である「非ヘム鉄」に分けられます。ヘムは、ポルフィリンという環の形の化合物の中心に鉄が入った構造です。
2つの大きな違いは吸収のされやすさで、非ヘム鉄の吸収率はヘム鉄に比べて低いことが知られています。日本人は鉄の70%以上を植物性食品から摂っているため、非ヘム鉄の摂り方が大切です。
ヘム鉄
ヘム鉄はレバー、赤身の肉、魚、貝類など動物性の食品に多く含まれています。
鉄を多く含む動物性の食品と、1食あたりの鉄の量の例は次のとおりです(HFNetより。値は鉄全体の量で、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年をもとにしています)。
- あさり(缶詰、水煮)40g:12.0mg
- 豚レバー40g:5.2mg
- しじみ50g:4.2mg
- 鶏レバー40g:3.6mg
- 牛肉(もも、赤肉)80g:2.2mg
ヘム鉄は小腸の細胞に専用の運び手(担体)によって取り込まれます。細胞の中で、ヘムを分解する酵素によって2価の鉄イオン(Fe2+)とポルフィリンに分けられます。
非ヘム鉄
非ヘム鉄はほうれん草や小松菜などの野菜、大豆製品、海藻など植物性の食品に多く含まれています。
鉄を多く含む植物性の食品と、1食あたりの鉄の量の例は次のとおりです(HFNetより)。
- がんもどき100g:3.6mg
- ピュアココア18g:2.5mg
- 豆乳200g:2.4mg
- 生揚げ75g:2.0mg
- 小松菜(ゆで)80g:1.7mg
食品ごとの含有量は鉄分が多い食品ランキングを確認してください。
食品中の非ヘム鉄の多くは3価の鉄(Fe3+)の形をしています。小腸では、細胞の表面にある還元酵素や、ビタミンC(アスコルビン酸)などの働きで2価の鉄(Fe2+)に変わり、2価の金属を運ぶたんぱく質(DMT1)によって細胞に取り込まれます。この取り込みはマンガンと奪い合いになります。
非ヘム鉄の吸収は、一緒に食べるものの影響を受けます。動物性たんぱく質やビタミンCは非ヘム鉄の吸収を高め、フィチン酸、ポリフェノール、茶などは吸収を妨げるとされています。HFNetでは、繊維の多い食品や全粒穀物も非ヘム鉄の吸収を妨げるものに挙げられています。
旧版の記事では、非ヘム鉄の節で「ヘム鉄の構造は三価鉄」と書いていましたが、非ヘム鉄の誤りでした。また、ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収率の数値を載せていましたが、2025年版で確かめられなかったため削除しました。
吸収された鉄の行方

鉄は十二指腸から空腸の上部で吸収されます。吸収された鉄は、血液に出たあと3価の鉄に変わり、トランスフェリンというたんぱく質に結びついて全身に運ばれます(血清鉄)。多くは骨髄で赤血球をつくるのに使われます。
赤血球の寿命は約120日です。古くなった赤血球はマクロファージという細胞に取り込まれますが、中の鉄は捨てられずに、再びヘモグロビンをつくるのに使われます。
体には鉄を積極的に排せつするしくみがないため、体内の鉄の量は吸収する量を変えることで保たれています。鉄が足りないときは吸収率が上がり、足りているときは、ヘプシジンというホルモンが増えて吸収率が下がります。そのため、遺伝的な病気などがなければ、食事の鉄が多くなっても吸収される量はふつうの範囲に保たれます。
体の中の鉄の種類:機能鉄と貯蔵鉄

体の中の鉄は、生理的な役割をもつ「機能鉄」と、鉄をたくわえたり運んだりする「貯蔵鉄」に分けられます。
機能鉄
機能鉄は、赤血球の中で酸素を運ぶヘモグロビンの鉄が大部分です。このほか、筋肉で酸素をたくわえるミオグロビンや、エネルギーをつくる反応に関わるシトクロムなどの酵素にも含まれています。どれも生命を保つのに必要な働きをしています。
貯蔵鉄
貯蔵鉄はフェリチンやヘモシデリンとして、肝臓や脾臓、骨髄などにたくわえられている鉄です。体内の鉄の20〜30%ほどが貯蔵鉄だとされています。機能鉄が足りなくなると、貯蔵鉄が使われます。
代表的な貯蔵鉄であるフェリチンの血液中の濃度は、体の鉄の状態をよく表す指標とされています。
鉄に関わる主なたんぱく質
| 名前 | 分類 | 働き |
|---|---|---|
| ヘモグロビン | 機能鉄 | 赤血球の中にあり、ヘム(鉄を含む色素)とグロビン(たんぱく質)でできています。肺で酸素と結びつき、全身に酸素を運びます。体内の鉄の約70%がヘモグロビンの鉄です。 |
| ミオグロビン | 機能鉄 | 筋肉の中にあり、酸素をたくわえます。 |
| シトクロム | 機能鉄 | ヘムを含むたんぱく質で、細胞の中のミトコンドリアでエネルギーをつくる反応(電子伝達系)に関わります。 |
| 鉄硫黄たんぱく質 | 機能鉄 | 鉄と硫黄の集まり(鉄硫黄クラスター)をもつたんぱく質で、電子伝達系などに関わります。 |
| トランスフェリン | 運搬 | 血液中で鉄と結びつき、骨髄などに鉄を運びます。トランスフェリンに結びついた鉄を血清鉄といいます。 |
| フェリチン | 貯蔵鉄 | 肝臓や脾臓、骨髄などで鉄をたくわえるたんぱく質です。血液中の濃度は鉄の状態の指標になります。 |
| ヘモシデリン | 貯蔵鉄 | 鉄が余ってたまった場所にできる、鉄を含む沈着物です。 |
| ヘプシジン | 調節 | 腸からの鉄の吸収を調節します。鉄が足りているときに増え、吸収を抑えます。 |
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