セレンは、ふつうの食品から摂りすぎる可能性は低いと考えられます。ただし、セレンは毒性が強く、必要な量と中毒になる量の差がとても小さいため、サプリメントを安易に使わないよう注意が必要です。
この記事では厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)などをもとに、セレンを摂りすぎたときに起こることをまとめます。
セレンの耐容上限量
耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)は、成人男性で1日400~450µg、成人女性で1日350µgです。中国のセレンの多い地域で起きたセレン中毒の調査から、毛髪と爪がもろくなる症状が出なかった量(1日800µg)をもとに決められています。
日本人は魚介類や、セレンの多い北米産の小麦を使った小麦製品、肉類を食べるため、成人は平均で1日約100µgのセレンを摂っていると推定されています。
年齢・男女別のセレンの耐容上限量は次のとおりです。乳児(0~11か月)の耐容上限量は決められていません。
| 年齢 | 男性(µg/日) | 女性(µg/日) |
|---|---|---|
| 1~2歳 | 100 | 100 |
| 3~5歳 | 100 | 100 |
| 6~7歳 | 150 | 150 |
| 8~9歳 | 200 | 200 |
| 10~11歳 | 250 | 250 |
| 12~14歳 | 350 | 300 |
| 15~17歳 | 400 | 350 |
| 18~29歳 | 400 | 350 |
| 30~49歳 | 450 | 350 |
| 50~64歳 | 450 | 350 |
| 65~74歳 | 450 | 350 |
| 75歳以上 | 400 | 350 |
セレンの摂取基準については必須ミネラル-セレン(セレニウム)の機能・役割と食事摂取基準を確認してください。
セレンを摂りすぎたときの症状
長い間セレンを摂りすぎたとき(慢性のセレン中毒)に最も多い症状は、毛髪と爪がもろくなったり抜けたりすることです。そのほか、胃や腸の障害、下痢、皮膚の発疹、息がにんにくのようなにおいになる、疲れやすい、いらいらする、神経の異常などがみられます。
誤って飲んだ場合などにグラム単位のセレンを摂ると、重い胃腸の障害、神経の障害、呼吸不全、心筋梗塞、腎不全などが起こります。
サプリメントで起きた中毒の例として、2008年にアメリカで、表示の200倍のセレンが入っていた液体のサプリメントを飲んだ201人に中毒が起きた集団発生の報告があります。摂ったセレンの量は1日あたり約42,000µg(中央値)と推定されています。多かった症状は、下痢(78%)、疲れ(75%)、髪が抜ける(72%)、関節の痛み(70%)、爪の変色やもろさ(61%)、吐き気(58%)で、90日以上たっても爪の変色や脱落(52%)、疲れ(35%)、髪が抜ける(29%)が続いた人がいました。
MSDマニュアル プロフェッショナル版によると、セレンの中毒は、多くの場合、セレンをどのくらい摂っていたかを聞き取ることと診察で診断され、血液や尿のセレンの量を測ることもあります。治療ではセレンを摂る量を減らします。セレンのサプリメントを飲んでいて、髪が抜ける、爪がもろくなる、下痢が続くなどの症状が出たときは、使うのをやめて医師に相談してください。
サプリメントと糖尿病のリスク
皮膚がんになったことのある人にセレンのサプリメント(1日200µg)を平均4.5年間使ったアメリカの研究では、血液中のセレン濃度が最も高いグループで2型糖尿病になる人が増えていました。ほかの研究をまとめた分析でも、セレンの摂取量が多いほど糖尿病のリスクが高いことが示されています。
このため、耐容上限量より少ない量でも、必要以上にセレンを摂ると糖尿病のリスクを高める可能性があるとされています。欠乏症を防ぐ目的以外で、サプリメントによって日常的にセレンの摂取量を増やすことは控えるべきとされています。
がんを防ぐ目的でセレンのサプリメントを使った研究をまとめたコクランの系統的レビュー(2018年)では、質の高いランダム化比較試験の結果から、サプリメントでがんになる人は減らないと結論づけています。いちばん大きな試験では、セレンのサプリメントで脱毛や皮膚炎が増えました。また、ランダム化比較試験の結果では、2型糖尿病がわずかに増えていました。
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