飽和脂肪酸は、脂質を構成する脂肪酸のうち、炭素どうしの二重結合を持たない脂肪酸です。体の中でつくることができるため、必須の栄養素ではありません。
一方で、飽和脂肪酸は、血液中のLDLコレステロールが高くなる(高LDLコレステロール血症)主な危険因子の1つであり、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患の危険因子でもあります。また、エネルギー源にもなるため、肥満の危険因子でもあります。そのため、食事摂取基準では摂りすぎを防ぐための「目標量」が決められています。
この記事では、飽和脂肪酸の目標量と、摂りすぎと病気の関係を、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の「脂質」の章をもとに説明します。
飽和脂肪酸の目標量
飽和脂肪酸の目標量は、1日に摂るエネルギーに占める割合(%エネルギー)の上限として示されています。男女とも同じ値です。
飽和脂肪酸の目標量(%エネルギー)
| 年齢等 | 目標量(上限) |
|---|---|
| 1~2(歳) | ─ |
| 3~14(歳) | 10以下 |
| 15~17(歳) | 9以下 |
| 18以上(歳) | 7以下 |
| 妊婦・授乳婦 | 7以下 |
※1~2歳は、研究が少なく、摂取量の実態も十分にわかっていないため、目標量は決められていません。
世界保健機関(WHO)をはじめとする国際的なガイドラインでは、上限を最大10%エネルギーとしているものが多くあります。日本人の摂取量の中央値は10%エネルギーを下回っているため、2025年版では、日本人の実際の摂取量をもとに、成人の目標量を7%エネルギー以下としています。
たとえば、1日に2,000kcalを摂る人では、7%は140kcalで、飽和脂肪酸の量にすると約16g(1gを9kcalとして計算)になります。
日本人はどれくらい摂っているか

平成30・令和元年の国民健康・栄養調査による、日本人の成人の飽和脂肪酸の摂取量(中央値)は次のとおりです。
日本人成人の飽和脂肪酸の摂取量(中央値)
| 年齢 | 男性 | 女性 | ||
|---|---|---|---|---|
| g/日 | %エネルギー | g/日 | %エネルギー | |
| 18~29(歳) | 21.6 | 8.6 | 16.5 | 9.4 |
| 30~49(歳) | 18.6 | 8.0 | 16.6 | 9.0 |
| 50~64(歳) | 18.5 | 7.7 | 16.1 | 8.5 |
| 65~74(歳) | 17.1 | 7.3 | 15.6 | 7.9 |
| 75以上(歳) | 15.0 | 6.9 | 13.0 | 7.2 |
75歳以上の男性を除いて、目標量の7%エネルギーを上回っています。特に若い世代の女性で割合が高くなっています。
飽和脂肪酸とコレステロール
飽和脂肪酸を多く摂ると、血液中の総コレステロールやLDLコレステロールの濃度が上がることが、多くの研究で示されています。ただし、飽和脂肪酸の種類によって影響は異なり、炭素の数が12~16のもの(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸)ではコレステロールが上がりますが、炭素の数が18のステアリン酸では、はっきりした変化は見られていません。
子どもでも、飽和脂肪酸を減らすと、血液中の総コレステロールとLDLコレステロールが下がることが認められています。
飽和脂肪酸と心臓や脳の病気
飽和脂肪酸の摂取量と、死亡率や心臓の病気、脳梗塞、2型糖尿病との関係を調べた観察研究の分析では、関連が見られなかったという報告と、摂取量が多いほど死亡のリスクが高いという報告があり、結果は一貫していません。
一方、2年以上続けた介入研究の分析では、飽和脂肪酸を減らすと、循環器疾患による死亡率ははっきりとは下がらなかったものの、循環器疾患になるリスクは下がりました。また、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置きかえると、心臓の病気や循環器疾患が少なくなることが、観察研究と介入研究の両方で示されています。なお、飽和脂肪酸の摂取量が多い人ほど脳出血や脳梗塞が少ないという分析もありますが、地域によって結果にばらつきがある可能性が指摘されています。
2025年版では、循環器疾患の発症や死亡への直接の影響は十分にはわかっていないものの、重要な危険因子であるコレステロールへの影響は成人でも子どもでも明らかなため、目標量を決めるべきだとしています。ただし、どこまで減らせばよいかを決める科学的な根拠は十分ではないとされています。
血圧については、飽和脂肪酸を減らしても血圧への影響は認められなかったという分析があります。
脂質異常症がある人
飽和脂肪酸を減らすと血液中のコレステロールが下がることは、健康な人だけでなく、すでに脂質異常症がある人でも見られています。そのため、脂質異常症、特にLDLコレステロールが高い人では、病気を防ぐためだけでなく、悪化を防ぐためにも、飽和脂肪酸を減らすことが求められています。
ただし、心筋梗塞になったことがある人に限って調べた分析では、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に変える食事の改善で、死亡率や再発のリスクにはっきりした違いは見られませんでした。治療中の人は、食事について医師に相談してください。
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