脂質異常症は、血液中のLDLコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が多すぎる状態、またはHDLコレステロールが少なすぎる状態です。脂質異常症があると動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。
この記事では、脂質異常症の3つのタイプごとに、関わりの深い栄養素と食事のポイントを、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の「脂質異常症」の章をもとに説明します。
脂質異常症の診断基準
食事摂取基準では日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」の基準を使って、脂質異常症を次のように分けています。
脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
| 項目 | 値 | 判定 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| LDLコレステロール | 120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| トリグリセライド | 150mg/dL以上(空腹時) 175mg/dL以上(随時) |
高トリグリセライド血症 |
| non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
| non-HDLコレステロール | 150~169mg/dL | 境界域高non-HDLコレステロール血症 |
※「空腹時」は基本的に10時間以上何も食べていない状態です。水やお茶などカロリーのない飲み物は飲んでもかまいません。
脂質異常症と関わりの深い栄養素

2025年版では脂質異常症と特に関わりの深い栄養素を次のように整理しています。
- LDLコレステロールを上げるもの:飽和脂肪酸、食事からのコレステロール
- LDLコレステロールを下げるもの:水溶性の食物繊維、多価不飽和脂肪酸(飽和脂肪酸と置きかえた場合)
- トリグリセライドを上げるもの:糖質、アルコール
- HDLコレステロールを下げるもの:糖質
また、エネルギーの摂りすぎで肥満になることも、脂質異常症の原因になります。
LDLコレステロールが高い人の食事
体重を減らす
エネルギーを摂りすぎて体重が増え、肥満になると、脂質異常症などの代謝の異常が起こりやすくなります。減量を含めて生活習慣を改めることは、血液中の脂質を改善するのに役立ちます。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、肥満の人はまず体重を3%減らすことを目標にしています。
1日に必要なエネルギーの目安は1日に必要なカロリーは?年齢・性別・活動量別の早見表と目標BMIを確認してください。
脂質の量を控える
脂質の少ない食事(脂質から摂るエネルギーが30%未満)では、総コレステロールとLDLコレステロールが下がることが示されています。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、LDLコレステロールが高い人には、脂質から摂るエネルギーを全体の20~25%にすることを勧めています。
脂質・たんぱく質・炭水化物の割合についてはPFCバランスとは?理想の割合(目標量)とグラム数の計算方法を確認してください。
飽和脂肪酸を減らす
飽和脂肪酸は肉の脂身やバター、乳製品などに多い脂肪酸です。飽和脂肪酸を減らすと、総コレステロールとLDLコレステロールが下がります。飽和脂肪酸から摂るエネルギーを1%減らすごとに、LDLコレステロールが約1.9mg/dL下がるという分析があります。
日本人の飽和脂肪酸の平均的な摂取量は、エネルギー全体の7.8~9.5%です。食事摂取基準では飽和脂肪酸の目標量を7%エネルギー以下としています。ただし、飽和脂肪酸を極端に減らすと、脳内出血が起こりやすくなる可能性も指摘されています。
飽和脂肪酸の中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸ではLDLコレステロールが上がり、ステアリン酸では大きな変化は見られませんでした。ココナッツオイルは植物の油ですが、ラウリン酸やミリスチン酸を多く含むため、摂る量に注意が必要です。
飽和脂肪酸の詳しい内容は飽和脂肪酸とは?1日の目標量と摂りすぎによるコレステロール・心臓病への影響を確認してください。
飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置きかえる
飽和脂肪酸を、植物油や魚に多い多価不飽和脂肪酸に置きかえると、LDLコレステロールが下がります。エネルギーの5%を炭水化物から多価不飽和脂肪酸に置きかえると、LDLコレステロールが平均2.8mg/dL下がったという分析もあります。
n-6系脂肪酸(リノール酸など)では、摂る量を増やすだけで動脈硬化を防ぐ効果があるかははっきりしていません。ただ、飽和脂肪酸をリノール酸に置きかえることは、動脈硬化性疾患の予防に役立つ可能性があるとされています。
一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)も、飽和脂肪酸と置きかえるとLDLコレステロールが下がります。植物性の食品から摂る場合は心臓や血管の病気のリスクが下がる可能性もありますが、摂る量が多いと効果がなくなることも示されており、エネルギーを摂りすぎない範囲で摂ることが勧められています。
n-6系脂肪酸(オメガ6・リノール酸)とは?働きと1日の目安量、心臓病・血圧との関係
食事からのコレステロールを控える
食事から摂るコレステロールが多いと、血液中のコレステロールが上がります。ただし、体の中のコレステロールの大部分は肝臓などでつくられ、腸からの吸収率も人によって大きく違います。食事のコレステロールで血液中のコレステロールが上がりやすい人と、上がりにくい人がいます。
日本人の成人のコレステロールの平均摂取量は、男性が1日366mg、女性が1日317mgです。2025年版では、病気の予防のための目標量(上限)は設けていません。しかし、上限がないことは、いくら摂ってもよいという意味ではありません。脂質異常症の人が悪化を防ぐには、コレステロールを1日200mg未満に留めることが望ましいとされています。
卵とコレステロールや心臓の病気との関係は、研究によって結果が分かれています。日本の研究(JPHC研究)では、卵を食べる量と心臓の病気(冠動脈疾患)に関連は見られませんでしたが、別の研究(NIPPON DATA80)では、女性で心臓の病気や死亡との関連が見られました。
食物繊維を摂る
食物繊維、特に水溶性の食物繊維を多く摂ると、総コレステロールとLDLコレステロールが下がることが示されています。食物繊維を1日3g増やすとLDLコレステロールが5.0mg/dLほど下がり、1日25~29gを摂ったときに最も大きな効果が見られました。2025年版では、おおむね1日25g以上の食物繊維を摂ることが勧められています。
トランス脂肪酸を控える
トランス脂肪酸はLDLコレステロールを上げ、HDLコレステロールを下げる働きがあります。日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は、世界保健機関(WHO)が勧める「エネルギーの1%未満」を下回っており、ふだんの食生活では健康への影響は小さいと考えられています。
ただし、2025年版では、1%未満でもできるだけ少なくすることが望ましいとしています。脂質の多いお菓子を食べすぎるなど、食事が偏っている人は、平均より多く摂っている可能性があるため注意が必要です。
HDLコレステロールが低い人の食事
2025年版では、食事の脂肪酸の種類を変えても、HDLコレステロールの変化はわずかだとしています。一方、上の「脂質異常症と関わりの深い栄養素」で見たように、糖質の摂りすぎはHDLコレステロールを下げる方向に働きます。トランス脂肪酸にもHDLコレステロールを下げる働きがあります。
食事以外では、MSDマニュアル家庭版によると、喫煙、血糖のコントロールがよくない糖尿病、ネフローゼ症候群などの腎臓の病気や、β遮断薬、たんぱく同化ステロイドなどの薬も、HDLコレステロールを下げる原因になります。定期的な運動にはHDLコレステロールを上げる効果があり、肥満の人は減量を、たばこを吸う人は禁煙をすることが勧められています。なお、HDLコレステロールを上げる薬で動脈硬化のリスクが下がることは確かめられておらず、HDLコレステロールが低い人の治療は、LDLコレステロールを下げることで行うとしています。
お酒を飲む量が増えると、HDLコレステロールは上がります。しかし、HDLコレステロールが血管からコレステロールを取り除く働きは、お酒でむしろ下がることがわかっており、お酒で心臓や血管の病気を防ぐ効果はないと考えられています。
お酒を多く飲むことは心筋梗塞や脳卒中の原因になり、少量なら病気を防げるという考えも、現在は否定的です。血圧が上がる、脳出血やがんのリスクが上がるといった害もあるため、お酒はできるだけ控えることが望ましいとされています。
トリグリセライド(中性脂肪)が高い人の食事
糖質を摂りすぎない
果糖などの糖類をはじめとして、糖質を摂りすぎると、血液中のトリグリセライドが上がることが心配されています。エネルギーの5%を炭水化物から脂肪酸に置きかえると、トリグリセライドが10~12mg/dLほど下がるという分析があります。一方、飽和脂肪酸を減らしても、トリグリセライドはあまり変わらないという報告が多くなっています。
n-3系脂肪酸を摂る
魚に多いn-3系脂肪酸(EPA・DHA)をサプリメントで摂った研究では、トリグリセライドが平均30mg/dL下がりました。ただし、この研究で摂った量は1日平均3.25gで、ふだんの食事から摂る量よりかなり多い量です。2025年版では、n-3系脂肪酸を多く摂ることは、トリグリセライドを下げるのに役立つとしています。
なお、魚油の製剤で死亡のリスクが下がるという結果は得られておらず、心臓や血管の病気への効果は研究によって結論が分かれています。日本の研究では、魚をよく食べる人で心臓の病気が少なく、心臓や血管の病気による死亡も少なかったと報告されています。
n-3系脂肪酸(オメガ3)とは?EPA・DHAの働きと1日の目安量、多く含む食品
お酒を控える
お酒とトリグリセライドの関係については、研究の結論が一致していません。ただ、心筋梗塞や脳卒中、脳出血、がんのリスクを考えると、アルコール(エタノール)は1日25g以下にするか、できるだけ減らすことが望ましいとされています。
まとめ
- LDLコレステロールが高い人は、体重を適正にし、飽和脂肪酸(7%エネルギー以下)とコレステロール(1日200mg未満)を控え、食物繊維を1日25g以上摂ることが勧められます。
- 飽和脂肪酸は植物油や魚の不飽和脂肪酸に置きかえると効果的です。
- トリグリセライドが高い人は、糖質を摂りすぎないこと、魚のn-3系脂肪酸を摂ること、お酒を控えることが大切です。
- お酒でHDLコレステロールが上がっても、心臓や血管の病気を防ぐ効果はないと考えられています。
- 脂質異常症で治療中の人は、食事について医師に相談してください。
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