n-3系脂肪酸(オメガ3)とは?EPA・DHAの働きと1日の目安量、多く含む食品

n-3系脂肪酸(オメガ3系脂肪酸)は、脂質を構成する脂肪酸のうち、二重結合を2個以上持つ多価不飽和脂肪酸の一種です。分子の端(メチル基の末端)から数えて3番目の炭素に最初の二重結合があるものをn-3系、6番目にあるものをn-6系と呼びます。

n-3系脂肪酸には、α-リノレン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)があります。n-3系脂肪酸は体の中で合成できず、ほかの脂肪酸からつくることもできないため、食事から摂る必要がある必須脂肪酸です。

 

n-3系脂肪酸の機能・役割

脂肪酸の分類と、n-3系脂肪酸(α-リノレン酸・EPA・DPA・DHA)の位置づけ

脂質は細胞膜の主要な成分であり、エネルギー源にもなります。n-3系脂肪酸も細胞膜の材料になります。

なかでもDHAは、神経組織の重要な構成脂質です。脳の神経細胞どうしのつなぎ目(神経シナプス)や、目の網膜で光を受け取る細胞(光受容体)に特に多く含まれています。

また、n-3系脂肪酸の働きの中には、n-6系脂肪酸の働きと競い合うかたちで生じるものもあります。

 

n-3系脂肪酸の食事摂取基準

食事摂取基準の指標(推定平均必要量・推奨量・目安量・耐容上限量)と、不足・摂りすぎのリスクの関係を示した図

n-3系脂肪酸の食事摂取基準は以下の通りです。数値は厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づいています(2025年度から2029年度まで使用)。

n-3系脂肪酸の必要量を決めるのに役立つ研究は十分にありません。一方、ふだんどおりに生活している健康な日本人で、n-3系脂肪酸の不足が原因と考えられる症状は報告されていません。そこで2025年版では、平成30・令和元年の国民健康・栄養調査で得られた日本人の摂取量の中央値をもとに、目安量(一定の栄養状態を保つのに十分な量)が決められています。

妊娠中は、胎児の神経や網膜がつくられるため、より多くのn-3系脂肪酸が必要と考えられています。妊婦と授乳婦の目安量は1.7g/日です。

n-3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

年齢等 男性 女性
目安量 目安量
0~5(月) 0.9 0.9
6~11(月) 0.8 0.8
1~2(歳) 0.7 0.7
3~5(歳) 1.2 1.0
6~7(歳) 1.4 1.2
8~9(歳) 1.5 1.4
10~11(歳) 1.7 1.7
12~14(歳) 2.2 1.7
15~17(歳) 2.2 1.7
18~29(歳) 2.2 1.7
30~49(歳) 2.2 1.7
50~64(歳) 2.3 1.9
65~74(歳) 2.3 2.0
75以上(歳) 2.3 2.0
妊婦 1.7
授乳婦 1.7

2025年版でn-3系脂肪酸に定められている指標は目安量だけで、耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)は設定されていません。また、α-リノレン酸、EPA、DHAのそれぞれについての基準も設定されていません。

日本人が最も多く摂っているn-3系脂肪酸はα-リノレン酸です。

 

n-3系脂肪酸を摂取できる食物

EPAとDHAは魚介類に含まれ、魚の種類にかかわらず両方が含まれています。α-リノレン酸は植物油に多く含まれます。食品ごとのn-3系脂肪酸の量は、文部科学省の食品成分データベースで調べられます。

魚介類には、EPAやDHAのほかに、たんぱく質、ビタミンD、ビタミンB12、亜鉛、セレンなども含まれています。

 

n-3系脂肪酸が不足した場合の影響

小腸を切除した人や脳に障害がある人など、口から食事をとれずにn-3系脂肪酸の摂取量がとても少なくなった患者で、うろこ状の皮膚炎、出血をともなう皮膚炎、結節性皮膚炎、成長障害が見られた例があります。これらの症状は、n-3系脂肪酸を与えると消えるか軽くなったと報告されています。

ふだんどおりに生活している健康な日本人では、n-3系脂肪酸の不足が原因と考えられる症状は報告されていません。

 

n-3系脂肪酸と生活習慣病

n-3系脂肪酸と生活習慣病について、観察研究と介入研究の結果を比べた表

2025年版の食事摂取基準では、n-3系脂肪酸と生活習慣病の関係について、研究の種類によって結果が異なることがまとめられています。

心臓の病気(冠動脈疾患)

EPAやDHAを多く摂っている人ほど冠動脈疾患が少ないことを示した観察研究は多数あり、それらをまとめた分析(メタ・アナリシス)もほぼ同じ考えを支持しています。しかし、EPA・DHA・DPAを実際に摂ってもらって効果を調べた介入研究をまとめた分析では、予防効果があるとは言えないとされています。すでに病気がある人の重症化予防についても、介入研究では意味のある関連は認められていません。

一方で、血中の中性脂肪(トリグリセライド)やLDLコレステロールが高い人の集団では、EPAとDHAの摂取で冠動脈疾患の発症リスクが下がったという介入研究の分析もあります。また、EPAとDHAを摂ってもらった介入研究をまとめた分析では、血中の中性脂肪を下げる効果が認められています。

α-リノレン酸については、摂取量が多い人ほど、全体の死亡率や、循環器疾患・冠動脈疾患による死亡率が低いという観察研究の分析がありますが、介入研究の分析では意味のある関連は認められていません。

認知機能

n-3系脂肪酸の摂取量が多い人ほど認知機能が低下するリスクが低いという観察研究の分析があります。一方、認知機能が低下した人への治療効果を調べた研究をまとめた分析では、治療効果があるとは言えないと報告されています。

糖尿病

EPAとDHAの摂取が糖尿病の発症を増やす可能性を示した観察研究の分析がありますが、アジア人の研究だけに限ると、摂取量が多いほど糖尿病が少ないという関連が見られ、結果は一貫していません。介入研究の分析では、2型糖尿病との意味のある関連は認められていません。

 

サプリメントで摂るときの注意

EPAとDHAは、魚油などのサプリメントとしても売られています。日本の食事摂取基準には耐容上限量がありませんが、国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報によると、欧州食品安全機関はEPAとDHAの合計で1日5g、米国食品医薬品局は1日3g以下を上限の目安としています。

心臓や血管の病気を調べた大規模なランダム化比較試験7件(参加者8万人あまり)をまとめた系統的レビュー・メタアナリシスでは、魚由来のn-3系脂肪酸のサプリメントを使った人で、心房細動(脈が不規則になる不整脈の一つ)のリスクが高くなっていました。リスクは、1日1gを超える量を使った試験でより高い傾向がありました。

高度に精製したEPAなどは、医薬品としても使われています。また、血液を固まりにくくする薬(アスピリンなど)を使っている人が、ビタミンEと魚油を一緒に摂って、出血や血液が固まりにくくなる異常が起きたという報告があります。薬を飲んでいる人や病気の治療中の人は、サプリメントを使う前に医師や薬剤師に相談してください。

 

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