水は、すべての生き物に欠かせない物質で、人の体の中で最も量の多い成分です。年齢や体格によって違いはありますが、水は体重のおよそ60%を占めています。
この記事では、1日にどれくらいの水分を摂ればよいのかを、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の参考資料をもとに説明します。あわせて、脱水のサインや、水の飲みすぎに注意が必要な人も紹介します。
体の中での水の働き
水は、細胞の中の液体(細胞内液)や、血液の液体成分(血漿)など細胞の外の液体(細胞外液)をつくっています。体の中で起きる化学反応は、すべて水の中で進みます。
また、水は栄養素を運んだり、老廃物を体の外に出したりするときに、物質を溶かして運ぶ役目を果たします。体温を調節するうえでも重要な役割があります。
水の出入り

体が使う水は、次の3つから入ってきます。
- 飲み物や食べ物から口に入る水
- 体の中で栄養素が分解されるときにできる水(代謝水)
- 呼吸と皮膚を通じて入る水
水は、尿、皮膚、吐く息、便から体の外に出ていきます。ふだんは、入る量と出る量がつり合っています。
1日に必要な水分量
食事摂取基準(2025年版)では、水の目安量は決められていません。水の量を調べる研究はありますが、目安量を決めるには情報が十分にそろっていないためです。そのため、水は基準値ではなく参考資料として扱われています。
参考資料では、平成28年国民健康・栄養調査の参加者(15歳以上)について、体の水の出入りを調べる方法(二重標識水法)で得られた式を使い、1日の水の摂取量を推定しています。年齢区分ごとの平均は、男性が約2,600~2,750mL/日、女性が約2,200~2,350mL/日でした。目安量はおそらくこのあたりにあると考えられています。
15歳以上の日本人の1日の水の摂取量(推定値の平均、mL/日)
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 15~19(歳) | 2,735 | 2,228 |
| 20~29(歳) | 2,654 | 2,206 |
| 30~39(歳) | 2,718 | 2,339 |
| 40~49(歳) | 2,742 | 2,339 |
| 50~59(歳) | 2,699 | 2,345 |
| 60~69(歳) | 2,597 | 2,294 |
| 70以上(歳) | 2,318 | 2,088 |
※平成28年国民健康・栄養調査の参加者について推定した値です。
この値は、飲み物だけでなく食べ物に含まれる水もふくめた量です。また、集団の推定値であり、1人ひとりに必要な量ではありません。体を動かす量ごとに、日本人の水の量を調べた研究はまだありません。子どもについても研究が進められている段階です。
食べ物からも水分を摂っている

日本人は、飲み物だけでなく食べ物からも多くの水を摂っています。30~76歳の日本人を対象に16日間の食事を記録した調査では、摂った水のうち、食べ物(固形物と半固形物)からが51%、飲み物からが49%でした。ご飯や麺類は、パンよりも水を多く含んでおり、日本人はこれらをよく食べるためです。
フランスやイギリスでは、食べ物からが約20~40%、飲み物からが約60~80%と報告されています。
十分な水を摂るためには、飲み物だけでなく、食べ物から摂る水も大切です。この考え方は、熱中症の予防や、災害時の食事を考えるときにも必要とされています。
水分と病気・熱中症
「水をたくさん飲むと健康によい」という考えは広く知られていますが、その科学的な根拠は必ずしもはっきりしていません。
- 腎臓や尿管の結石の予防については、いくつかの報告があります。
- 便秘についても研究はありますが、結果は一致していません。
- 熱中症の予防には十分な水を摂ることが、熱中症になったときの初めの手当てには水と電解質(塩分など)を十分に補うことが、重要と認められています。
厚生労働省の高齢者のための熱中症対策のリーフレットでは、のどが渇いていなくても、こまめに水分と塩分を補うよう呼びかけています。目安は1日あたり1.2L(コップ約6杯)で、1時間ごとにコップ1杯、入浴の前後や起きたあとにもまず水分と塩分を補うことが勧められています。熱中症は、室内や夜間にも多く起きています。
持病などで水分や塩分の摂り方が気になる人は、摂る量についてかかりつけ医の指示に従ってください。
水分が足りないとき(脱水)のサイン
脱水は、体から出ていく水が入ってくる水より多くなったときに起こります。MSDマニュアル家庭版の「脱水」では、嘔吐や下痢、汗を大量にかくこと、やけど、腎不全、利尿薬の使用が原因になると説明しています。
脱水になると、まずのどが渇き、尿の量が減ります。脱水がひどくなると、頭が混乱したり、めまいを感じたりするようになります。極めて激しい脱水は、意識がなくなる状態(昏睡)や死亡につながるおそれがあります。
ただし、軽い脱水のときは、のどの渇きを感じないことがあります。環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、のどが渇く前や、暑いところに出る前から水分を補っておくよう勧めています。
脱水になりやすい人
高齢者と、乳児・小児は、とくに脱水になりやすいとされています。
高齢者
長寿科学振興財団の健康長寿ネット「脱水症」では、高齢者が脱水になりやすい理由として、次の点を挙げています。
- のどの渇きを感じにくくなり、飲む水の量が減る
- 筋肉や皮下組織などにたくわえている水の量が減る
- 失禁や夜間のトイレを気にして、水を飲むのを我慢してしまう
次のような様子がいくつも見られるときは、水分がかなり不足しているおそれがあります。
- 舌や口の中が乾いている
- 皮膚の張りがなくなっている
- 血圧が下がり、脈が速くなっている
- 疲れやすい、食欲がない
- 意識がぼんやりしている、なんとなく元気がない、ぐったりして反応が鈍い
のどが渇いていなくても、時間を決めて水を飲む習慣をつけることが勧められています。
乳児・小児
乳児や小児にも、脱水はよくみられます。体重に占める水の割合が大人より大きいためです。環境省のマニュアルでは、体重に占める水の割合を、新生児で約80%、乳児で約70%、幼児で約65%、成人男性で約60%、成人女性で約55%、高齢者で約50~55%としています。
何で水分を補うか

環境省のマニュアルでは、ふだんの水分補給にはお茶などを勧めています。食事に含まれる水を除いて、飲み物として摂る量は1日あたり1.2Lが目安とされています。
汗を大量にかいたときは、水だけでなく塩分も補います。マニュアルでは、スポーツ飲料など、塩分の濃さが0.1~0.2%程度の飲み物を勧めています。嘔吐や下痢のあとも、電解質(ナトリウムなど)を含む飲み物がよいとされています。
お酒は水分補給の代わりになりません。どの種類のお酒でも、アルコールには尿の量を増やす働きがあり、いったん吸収した水分よりも多くの水分が、そのあと尿で失われてしまうためです。汗で失った水分をビールなどで補おうとする考え方は誤りとされています。
水を飲みすぎるとどうなるか
腎臓の働きが正常であれば、余分な水は尿として出ていくため、水を摂りすぎた状態(水分過剰)になることはまれです。MSDマニュアル家庭版の「水分過剰」によると、腎臓の働きが正常な若い成人が、体が水を出す力を上回るには、1日に約23L以上の水を毎日飲む必要があります。
一方で、次のような人は水分過剰になりやすいとされています。
- 心臓、腎臓、肝臓の病気があり、尿を正常に出せない人
- 腎臓が未発達な早産児
- 心因性多飲症(水を飲みすぎてしまう精神の病気)の人
- 脱水を避けようとして、水を飲みすぎた人(とくに運動選手)
水分過剰がゆっくり進んだ場合は、注意力が落ちたり、ぼんやりして眠くなったりする程度です。急に起こると、吐いたり、体のバランスがとれなくなったりします。悪化すると、頭の混乱やけいれん、昏睡が起こることがあります。
心臓や腎臓の病気がある人は、一度にたくさん飲まず、ゆっくり飲むことが勧められています。
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