食塩(塩化ナトリウム)の摂りすぎは、血圧が上がる原因になることが多くの研究で明らかにされています。高血圧になると、脳卒中や心臓の病気、腎臓の病気が起こりやすくなります。
この記事では、1日に摂る食塩の目標量と、減塩で血圧がどれくらい下がるのかを、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の「ナトリウム」と「高血圧」の章をもとに説明します。
高血圧とは

高血圧は、上の血圧(収縮期血圧)か下の血圧(拡張期血圧)のどちらかが基準を超えて高くなった状態です。病院で測る血圧(診察室血圧)では140/90mmHg以上、家で測る血圧(家庭血圧)では135/85mmHg以上が高血圧とされています。
診察室血圧が120/80mmHg未満なら正常血圧です。120~129/80mmHg未満は正常高値血圧、130~139/80~89mmHgは高値血圧と呼ばれ、食事などの生活習慣を改める必要がある「高血圧の予備群」とされています。
高血圧は、生活習慣と遺伝の両方が関わって起こります。食事を含めた生活習慣を改めることは、高血圧を悪くしないためだけでなく、高血圧にならないためにも重要です。
1日の食塩の目標量

2025年版の食事摂取基準では、成人の食塩相当量の目標量は、男性が1日7.5g未満、女性が1日6.5g未満です。
日本人の食塩摂取量の中央値は1日10.1g(平成30・令和元年国民健康・栄養調査)です。世界保健機関(WHO)は成人に1日5g未満を勧めていますが、今の日本人の摂取量からすぐに目指すのは難しいとされています。そこで、5gと今の摂取量の中央値との中間の値が、成人の目標量になっています。
食塩相当量の目標量(g/日)
| 年齢等 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 1~2(歳) | 3.0未満 | 2.5未満 |
| 3~5(歳) | 3.5未満 | 3.5未満 |
| 6~7(歳) | 4.5未満 | 4.5未満 |
| 8~9(歳) | 5.0未満 | 5.0未満 |
| 10~11(歳) | 6.0未満 | 6.0未満 |
| 12~14(歳) | 7.0未満 | 6.5未満 |
| 15~17(歳) | 7.5未満 | 6.5未満 |
| 18~29(歳) | 7.5未満 | 6.5未満 |
| 30~49(歳) | 7.5未満 | 6.5未満 |
| 50~64(歳) | 7.5未満 | 6.5未満 |
| 65~74(歳) | 7.5未満 | 6.5未満 |
| 75以上(歳) | 7.5未満 | 6.5未満 |
| 妊婦 | 6.5未満 | |
| 授乳婦 | 6.5未満 |
※高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための食塩相当量は、男女とも6.0g/日未満とされています。
食品の栄養成分表示でナトリウムの量だけが書かれているときは、ナトリウム(g)に2.54をかけると食塩相当量(g)になります。なお、食事摂取基準では、「塩分」という言葉は食塩の量と同じ意味にはならないため、使い方に注意が必要だとしています。
ナトリウムのそのほかの基準はナトリウム(食塩)の働きと1日の摂取量は?食塩相当量の目標量と高血圧・胃がんとの関係をご覧ください。食品ごとのナトリウムと食塩相当量はナトリウム(塩分)が多い食品ランキング|100gあたりの量と食塩相当量を食品群別に一覧で確かめられます。
減塩で血圧はどれくらい下がるか
世界52地域のデータを集めた研究(INTERSALT)では、食塩の摂取量が多い人ほど血圧が高いことが示されました。この研究では、食塩相当量で5.8g減らすと、血圧が平均3.5/1.5mmHg下がると推定されています。
さまざまな研究の結果から、食塩を1日1g減らすと、上の血圧が約1mmHg強下がると期待できます。また、減塩で下がる血圧の大きさは、減らした量にほぼ比例することが示されています。
日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」でも、高血圧の人の減塩目標を食塩1日6g未満としています。慢性腎臓病の診療ガイドラインでも、慢性腎臓病の人の減塩目標は同じく1日6g未満です。
食塩と脳卒中・心臓の病気
日本の国民栄養調査の参加者を24年間追った研究では、食べたエネルギー1,000kcalあたりの食塩が2g多いと、脳や心臓の血管の病気による死亡が11%、心臓の病気(冠動脈疾患)による死亡が25%、脳卒中による死亡が12%、全体の死亡が7%多くなっていました。
また、減塩の指導を受けた人を10~15年追った研究(TOHP)では、食塩を25~30%減らした人で、長期的な循環器疾患のリスクが30%下がったと報告されています。
子どもと高齢者の減塩
子どもでも、減塩で血圧が下がることが示されています。日本は昔から食塩の摂取量が多く、3歳児や学童期でも摂取量が多いと報告されています。子どものころからの減塩は、将来の高血圧や循環器疾患を防ぐために重要だとされています。
高齢者は一般に食塩で血圧が上がりやすく、減塩は効果があります。ただし、高齢者が極端に減塩したり味付けを大きく変えたりすると、食事の量が減って低栄養になることがあります。高齢者の減塩は、体全体の状態に注意しながら進める必要があります。
食塩以外で血圧に関わるもの

体重
肥満は高血圧の大きな原因です。北海道の研究では、肥満の人は肥満でない人に比べて、高血圧になるリスクが約2倍でした。約4kgの減量で、上の血圧が4.5mmHg、下の血圧が3.2mmHg下がったという分析もあります。急に体重を減らすと体に悪い影響が出ることがあるため、無理のない減量が勧められています。
お酒
お酒を飲む量が多いほど、血圧が高く、高血圧の人も多くなります。高血圧管理・治療ガイドライン2025では、高血圧の人の飲酒は、アルコール(エタノール)で男性は1日20~30mL以下、女性はその半分程度の1日10~20mL以下にするよう勧めています。エタノール20~30mLは、おおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯にあたります。お酒を減らすと、上の血圧が約3mmHg、下の血圧が約2mmHg下がるという分析もあります。
お酒を飲まない人に、高血圧の予防のために少量の飲酒を勧めるべきではないとされています。
カリウム
カリウムは、食塩による血圧の上昇をおさえる方向に働くと考えられています。高血圧の人がカリウムを多く摂ると、血圧が下がることが示されています。高血圧管理・治療ガイドライン2025では、カリウムの多い野菜や果物、低脂肪の牛乳や乳製品を積極的に摂ることを勧めています。目安は、野菜が1日350g、果物が1日200gです。糖尿病や肥満がある人の果物の量は、一人ひとりに合わせて決めるとしています。
ただし、腎臓に障害がある人(ガイドラインでは慢性腎臓病のステージ3b以上など)は、血液中のカリウムが多くなりすぎる(高カリウム血症)おそれがあるため、カリウムを積極的に摂ることは避けるべきです。食塩の一部を塩化カリウムに置きかえた代替塩で、血圧や循環器疾患のリスクが下がったという報告もあります。カリウムを制限する必要がない人には、代替塩への切りかえが役立つとされています。腎臓に病気がある人は、使う前に医師に相談してください。
カリウムの基準はカリウムの働きと1日の摂取量は?目安量・目標量と腎臓病や血圧の薬を使う人の注意を、カリウムを多く含む食品はカリウムが多い食品ランキング|100gあたりの含有量を食品群別に一覧をご覧ください。
食事の組み合わせ(DASH食)
野菜、果物、低脂肪の乳製品が多い食事パターン(DASH食)には、血圧を大きく下げる効果があることが示されています。DASH食に減塩を組み合わせると、効果がさらに高まります。高血圧管理・治療ガイドライン2025では、DASH食や地中海食も勧められています。ただし、DASH食はアメリカの食事をもとにつくられたもので、日本で同じような食事パターンはまだ十分に確立されていません。
まとめ
- 成人の食塩相当量の目標量は、男性1日7.5g未満、女性1日6.5g未満です。高血圧や慢性腎臓病の重症化予防では、男女とも1日6g未満とされています。
- 食塩を1日1g減らすと、上の血圧が約1mmHg強下がると期待できます。
- 減量、お酒を控えること、野菜や果物を摂ることも血圧を下げるのに役立ちます。
- 高血圧や腎臓の病気で治療中の人は、食事について医師に相談してください。
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