糖尿病は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが十分に働かず、血糖値が高い状態が続く病気です。食事は、糖尿病の治療の基本であり、合併症を防ぐためにも大切です。
この記事では、糖尿病と関わりの深い栄養素と食事のポイントを、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の「糖尿病」の章をもとに説明します。この章が主に扱っているのは、生活習慣と関わりの深い2型糖尿病です。
糖尿病とは
インスリンが十分に働かない原因には、すい臓からのインスリンの分泌が足りないこと(インスリン分泌不全)と、インスリンが効きにくくなること(インスリン抵抗性)があります。インスリン抵抗性は主に肥満や加齢によって起こると考えられています。
糖尿病は大きく1型と2型に分けられます。
- 1型糖尿病:免疫の異常などですい臓のインスリンをつくる細胞が壊れ、インスリンがほとんど出なくなって起こります。
- 2型糖尿病:インスリンが出にくい体質やインスリンが効きにくい体質に、食べすぎや運動不足などの生活習慣や加齢が加わって起こります。
糖尿病かどうかは、血液検査で血糖値やHbA1c(血糖の状態を示す値)を調べ、のどの渇きや尿の量が増えるといった症状などとあわせて診断されます。
糖尿病型と判定される値
| 検査 | 値 |
|---|---|
| 空腹時の血糖値 | 126mg/dL以上 |
| ブドウ糖を飲んで2時間後の血糖値 | 200mg/dL以上 |
| 随時の血糖値 | 200mg/dL以上 |
| HbA1c | 6.5%以上 |
※血糖値はいずれか1つが基準を超えると糖尿病型です。同じ日に血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型であれば、初回の検査で糖尿病と診断されます。
糖尿病と関わりの深い栄養素

2025年版では糖尿病と特に関わりの深い栄養素を次のように整理しています。
- 血糖値を上げるもの:糖質
- 血糖値を下げる方向に働くもの:食物繊維
- インスリンを効きにくくするもの:エネルギーの摂りすぎ、飽和脂肪酸
- インスリンの効きをよくする方向に働くもの:不飽和脂肪酸
お酒もエネルギーの摂りすぎにつながります。
2025年版では、糖尿病の人すべてに当てはまる理想的な栄養素の割合を決めることは難しく、一人ひとりの状態に合わせた対応が必要だとしています。
エネルギー(体重)
2型糖尿病では、内臓脂肪型の肥満によってインスリンが効きにくくなります。肥満のある2型糖尿病の人が血糖値をよい状態に保つには、食べるエネルギーの量を見直して体重をコントロールすることが重要です。
海外の研究をまとめた分析では、肥満や過体重のある2型糖尿病の人が体重を5%以上減らすと、血糖の状態が大きく改善しました。5%未満の減量では、はっきりした改善は見られませんでした。ただし、日本人には高度な肥満の人が少ないため、この結果をそのまま当てはめることには注意が必要だとされています。
目標とする体重の目安には、BMI(体重kg÷身長mの2乗)が使われます。死亡率が最も低いBMIは、アジア人では20~25とされています。75歳以上の高齢者では、BMIが25以上でも死亡率は上がらないと報告されています。目標体重は年齢や体の状態に合わせて柔軟に決める必要があります。
1日に必要なエネルギーの目安は1日に必要なカロリーは?年齢・性別・活動量別の早見表と目標BMIを確認してください。
炭水化物
炭水化物を摂る量と、糖尿病になりやすさとの関係ははっきりしていません。そのため、糖尿病を防ぐための炭水化物の目標量を一律に決めることは難しいとされています。
糖質制限(炭水化物制限)
2型糖尿病の人が炭水化物を控えた研究では、6~12か月以内の短い期間であれば、HbA1cが改善することがあります。しかし、12~24か月以降は、炭水化物を控えなかった場合と変わらなかったという報告もあります。
日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、6~12か月以内の短い期間であれば、炭水化物の制限は2型糖尿病の血糖コントロールに有用だとしています。一方、エネルギー全体を減らさずに炭水化物だけを極端に減らす方法は、長く続けられるか、安全かを確かめる科学的な根拠が足りず、注意が必要とされています。
果物・ジュース
果物に含まれる果糖は、1日100g以内であれば、血糖値や中性脂肪がよくなり、体重も増えないという報告があります。果物を食べることは、糖尿病のなりにくさと関係するという報告もあります。
一方、果汁飲料や砂糖を加えた飲み物(加糖飲料)は、糖尿病になるリスクを高めたという報告があります。2025年版では、糖尿病の人が果物を食べることは勧めてよいとしていますが、量は一人ひとりの状態に合わせて決める必要があります。果汁飲料や加糖飲料の飲みすぎには注意が必要です。果物と果汁飲料の違いは、食物繊維が含まれるかどうかによると考えられています。
GI(グリセミック・インデックス)
GIは炭水化物を含む食品を食べたあとの、血糖値の上がりやすさを示す指標です。日本人では、GIの低い食品をよく食べる人ほど糖尿病になりにくかったという報告があります。また、GIの低い食事では、2型糖尿病の人のHbA1cが下がったと報告されています。
炭水化物の働きや基準は炭水化物の機能・役割と食事摂取基準などを確認してください。
たんぱく質
海外では、たんぱく質、特に肉などの動物性たんぱく質を多く摂ると、糖尿病になりやすくなるという研究があります。植物性のたんぱく質では、こうした関係は見られていません。また、1日100gを超える赤身肉の摂取で糖尿病のリスクが上がるという報告や、赤身肉や加工肉を卵、乳製品、植物性のたんぱく質に置きかえるとリスクが下がる可能性があるという報告もあります。
ただし、これらの多くは海外の研究です。欧米人より動物性たんぱく質を摂る量が少ない日本人で、さらに減らす意味があるかははっきりしていません。日本人の2型糖尿病の人を調べた研究では、75歳以上の高齢者で、たんぱく質を摂る量が少ないほど死亡率が高かったという報告もあります。たんぱく質の量は一人ひとりの状態に合わせて決める必要があります。
脂質
日本人の脂質の平均的な摂取量はエネルギーの30%を下回っており、糖尿病を防ぐために脂質の量を減らす根拠は乏しいとされています。
一方、多くの研究で、飽和脂肪酸を多く摂ると糖尿病になりやすく、多価不飽和脂肪酸はそのリスクを下げるとされています。多価不飽和脂肪酸を多く摂ると、HbA1cが下がることも示されています。日本人の男性では、一価不飽和脂肪酸やn-3系脂肪酸を多く摂る人ほど、2型糖尿病になりにくいことが報告されています。
2025年版では、動脈硬化の原因となる脂質異常症を防ぐためにも、コレステロールや飽和脂肪酸の多い食品を摂りすぎず、多価不飽和脂肪酸を含む食品を摂ることが望まれるとしています。
脂質異常症の食事とは?LDLコレステロール・中性脂肪を下げる食べ方と控えるもの
食物繊維
2型糖尿病の人が食物繊維を多く摂ると、HbA1cや空腹時の血糖値が下がることが示されています。水溶性の食物繊維を多く摂った研究では、食後2時間の血糖値も下がり、インスリンの効きやすさを示す指標もよくなりました。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」でも、糖尿病の人が食物繊維を積極的に摂ることは有用だとしています。
1日30g以上の食物繊維で血糖の状態が改善したという報告がありますが、日本人の食物繊維の平均摂取量は1日17~19gです。2025年版では、これを踏まえて、少なくとも1日20~25gの食物繊維を摂ることが現実的な目標だとしています。
お酒
海外の研究では、中くらいの量(アルコールで1日10~25g程度)のお酒で糖尿病になる人が少なく、1日50~60gを超えると糖尿病になりやすくなると報告されています。しかし、少量のお酒で糖尿病になりにくいという効果は、女性やBMIが高い人に限られる、アジア人では見られないという報告もあります。日本人を含むアジア人、特にやせ型の男性では中くらいの量のお酒でも糖尿病のリスクになると報告されています。
日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド2022-2023」では、アルコールの上限を1日25gとしています。また、お酒を飲むことで低血糖が起こる場合があることにも注意が必要です。
まとめ
- 肥満のある2型糖尿病では、エネルギーの量を見直して体重をコントロールすることが重要です。
- 炭水化物の制限は短い期間なら血糖の改善に役立ちますが、炭水化物だけを極端に減らす方法には注意が必要です。
- 果物は食べてよいとされていますが、果汁飲料や加糖飲料の飲みすぎには注意が必要です。
- 飽和脂肪酸を控え、多価不飽和脂肪酸を含む食品を摂ることが望まれます。
- 食物繊維は少なくとも1日20~25gを目標にします。
- 糖尿病で治療中の人は、食事について医師や管理栄養士に相談してください。
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