グルコサミンとコンドロイチンは、もともと軟骨に関わる成分で、膝の痛みをやわらげる目的のサプリメントとして広く売られています。「効果がない」という話も耳にして、飲み続けるか迷っている人もいるかもしれません。
どちらも厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)では基準が定められていません。この記事では国内外の診療ガイドライン、系統的レビュー、大規模な試験をもとに、グルコサミンとコンドロイチンの働き、膝の痛みへの効果を調べた研究の結果、副作用と注意を説明します。
結論を先に書くと、質の高い試験では、膝の痛みへの効果はプラセボ(有効成分を含まない偽薬)とほとんど変わらないという結果が目立ちます。日本整形外科学会のガイドラインの資料も有効性に否定的です。ただし、効果を認めた研究や使用を勧める海外の学会もあり、評価は完全には一致していません。
グルコサミンとコンドロイチンとは
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)の解説によると、どちらも関節の軟骨に関わる成分です。グルコサミンは軟骨の構造をつくるグリコサミノグリカンという分子の材料で、コンドロイチンは軟骨の一部として、押される力に耐える役割をもっています。
MSDマニュアル家庭版によると、グルコサミンはカニ、カキ、エビの殻に含まれるキチンから取り出され、硫酸塩や塩酸塩の形で売られています。コンドロイチン硫酸はサメやウシの軟骨から取り出すか、合成して作られます。
軟骨の成分だからといって、飲めば軟骨が増えるとは言えません。実際にヒトで調べた結果は、下の「膝の痛みへの効果と研究の結果」で説明します。
食品と1日に摂る量
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の本表には、グルコサミンとコンドロイチンの項目がありません。この記事で調べた範囲では、ふつうの食品に含まれる量を示す公的なデータは見当たりませんでした。
また、グルコサミンとコンドロイチンには、食事摂取基準のような摂る量の基準がありません。
研究に使われた量(グルコサミンは1日1,500mg、コンドロイチンは1日800〜1,200mgなど)は試験の条件で、摂るとよい量の目安ではありません。グルコサミンを関与成分とする機能性表示食品もあり、製品には1日に摂る量が書かれていますが、これも製品ごとに事業者が示した量です。
膝の痛みへの効果と研究の結果
変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減って痛みが出る病気です。グルコサミンとコンドロイチンの研究は、ほとんどがこの病気の人を対象にしています。
大規模な試験
米国のGAIT試験は、膝の痛みがある1,583人を、グルコサミン1,500mg、コンドロイチン1,200mg、その両方、痛み止めのセレコキシブ、プラセボのいずれかに分けて24週間調べました。
痛みが20%以上減った人の割合の、プラセボ(60.1%)との差
| 摂ったもの | プラセボとの差 | 統計的に意味のある差か |
|---|---|---|
| グルコサミン | 3.9ポイント高い | なし |
| コンドロイチン | 5.3ポイント高い | なし |
| グルコサミン+コンドロイチン | 6.5ポイント高い | なし |
| セレコキシブ | 10.0ポイント高い | あり |
全体では、グルコサミンもコンドロイチンも、プラセボと統計的に意味のある差はありませんでした。プラセボでも60.1%の人で痛みが減っている点は、「飲んで楽になった」という実感を考えるときの参考になります。
中等度から重度の痛みがある人では、併用で痛みが減った人の割合が79.2%と、プラセボの54.3%より高くなっていました。これは探索的な解析で、確かめるには別の試験が必要でした。そこで中等度から重度の痛みがある164人を調べた別の試験(2017年)では、6か月後の痛みの減り方は併用のほうがプラセボより小さい結果でした。
同じGAIT試験の参加者の一部を2年間調べた結果でも、どの治療もプラセボと比べて臨床的に意味のある差はありませんでした。
研究をまとめた結果
- 10件の大規模な試験(3,803人)をまとめたネットワークメタアナリシス(2010年)では、痛みの差は小さく、臨床的に意味があるとされた差に届きませんでした。企業の資金によらない試験では、企業の資金による試験より効果が小さくなっていました。
- コクランのグルコサミンのレビュー(2005年)では、割り付けの方法が適切な8件に限ると、痛みと機能への効果は認められませんでした。特定の製薬会社の製剤(Rotta社)の試験では効果がみられ、それ以外の製品の試験では差がありませんでした。
- コクランのコンドロイチンのレビュー(2015年)(43件、4,962人)では、短期間の試験で痛みが100点中8点ほど多く減りました。ただし質の低い研究が中心で、大規模な試験や企業の資金によらない研究に限ると効果ははっきりしませんでした。
- 試験をまとめたメタアナリシス(2018年)では、グルコサミンとコンドロイチンをそれぞれ単独で摂ると痛みの評価の一つで改善がみられ、併用では差がありませんでした。関節の症状を総合的に評価する別の指標では改善がありませんでした。
一方、医薬品の品質のコンドロイチン800mgを調べた604人の試験(2017年)では、6か月後の痛みの減り方がプラセボより大きく、セレコキシブと同じ程度でした。NCCIHによると、コンドロイチンは製品によって結果が異なる可能性も指摘されています。この結果を、市販のサプリメント全般に当てはめることはできません。
軟骨がすり減るのを防ぐか
結果は分かれています。グルコサミン硫酸塩を3年間調べた試験(2001年)では、関節のすき間の狭まり方がプラセボより小さいと報告されました。日本整形外科学会の資料は、この論文が大きな影響を与えたとしています。
その後、オーストラリアの605人の試験(2015年)では、併用で2年後の狭まりが0.10mm少なかった一方、単独ではこの差がなく、痛みはどれもプラセボと差がありませんでした。NCCIHが紹介する米国の2年間の試験では、関節のすき間にプラセボとの差がありませんでした。
NCCIHは関節の構造に影響があるかは不確かだとしています。
「効果なし」と言われる理由
- 大規模で質の高い試験ほど、プラセボとの差が小さくなる傾向があります。
- 初期に効果を示した研究の多くは、NCCIHによると、方法に偏りのおそれがあり、発表から20年以上たち、製薬企業の資金で行われたものです。
- 痛みはプラセボでも大きく減ることがあり、飲んで楽になったと感じても、成分の働きとは限りません。
ガイドラインの評価
学会の評価は一致していません。下の表は日本整形外科学会の変形性膝関節症診療ガイドライン2023、英国NICEのガイドラインと、NCCIHがまとめた各学会の評価です。
| 学会など | 評価 |
|---|---|
| 日本整形外科学会(2023年) | 参考資料のメタアナリシスで、鎮痛、機能改善、生活の質の改善の効果は認められず、軟骨を保護する作用も明らかでないとし、有効性は否定的としている |
| 英国NICE(2022年) | 変形性関節症にグルコサミンを勧めない |
| 米国リウマチ学会・関節炎財団(2019年) | 膝には、グルコサミンもコンドロイチンも使わないよう強く勧める。手にはコンドロイチンを条件付きで勧める |
| 国際変形性関節症学会 OARSI(2019年) | 膝には、グルコサミンもコンドロイチンも使わないよう強く勧める |
| 米国整形外科学会(2021年) | 軽度から中等度の膝で役立つ可能性のあるサプリメントの一覧に入れているが、根拠は一貫しないと注意している |
| 欧州の学会 ESCEO(2019年) | 処方用の結晶グルコサミン硫酸塩と処方用のコンドロイチン硫酸を強く勧め、ほかの製品とは区別している |
日本整形外科学会の資料は、有害事象の起こりやすさはプラセボと差がないものの、臨床的な改善が見込まれない以上、費用は患者にとって受け入れられるものとはいえないと考えるとしています。ESCEOが勧めているのは処方用の製品で、市販のサプリメントをそのまま勧めているわけではありません。
膝以外の関節とそのほかの効果
股関節・手など
NCCIHによると、膝以外の関節の研究はわずかです。
- 股関節:222人を2年間調べた試験で、グルコサミン硫酸塩はプラセボと差がありませんでした。
- 手:162人を6か月調べた試験で、コンドロイチンでは痛みと機能がプラセボより改善しました。MSDマニュアルは手の変形性関節症に処方強度のグルコサミン硫酸塩を追加すると、ある程度の利益が得られる可能性を示した2022年の研究を紹介しています。
- 顎関節:グルコサミンの8件の研究(538人)をまとめたレビューは、はっきりした結論を出せませんでした。
健康な人の関節
欧州食品安全機関(EFSA)は2011年の評価で、グルコサミンを摂ることと関節の維持の間に因果関係は確立していないと結論しています。膝に症状がない人が将来のために飲むことを勧める根拠にはなりません。
心臓の病気や死亡
英国の約47万人を追跡した観察研究(2019年)では、グルコサミンを習慣的に使う人で心臓や血管の病気が少なくなっていました。観察研究を集めたメタアナリシス(2026年)でも、死亡などとの関連が報告されています。
ただし、このレビュー自身が観察研究では因果関係を示せず、サプリメントを使う人に健康的な生活習慣が多いことなどで説明できる可能性を挙げています。これらの病気を防ぐ目的で飲むことを勧める結果ではありません。
副作用と安全性
副作用
NCCIHによると、大規模な研究では安全性の大きな問題は確認されていません。
MSDマニュアルによると、グルコサミンではかゆみ、胸やけ、下痢、吐き気などの消化器の症状がよく起こります。コンドロイチンでは胃の痛み、吐き気などがみられます。
注意が必要な人
- ワルファリンを飲んでいる人:グルコサミンやコンドロイチンで出血のリスクが上がる可能性があります。症例の報告をまとめた論文(2008年)は、血液の固まりにくさを示す数値が上がった報告を、米国FDAで20件、WHOのデータベースで21件挙げています。MSDマニュアルは抗凝固薬を飲んでいる人はコンドロイチンを避けるべきだとしています。飲んでいる人は、使う前に医師・薬剤師に相談してください。
- 甲殻類アレルギーの人:甲殻類から取り出したグルコサミンでアレルギー反応が起こることがあります。
- 糖尿病の人や血糖値が高めの人:NCCIHは一部の人で血糖値が上がる可能性があるとしています。系統的レビュー(2011年)の結果は分かれており、血糖の調節に問題がある人を含む研究で影響が出やすい傾向がありました。使う前に主治医に相談してください。糖尿病の食事については「糖尿病の食事で気をつけることは?糖質制限・果物・食物繊維・お酒と血糖値の関係」で説明しています。
- 肝臓の病気がある人:MSDマニュアルは可能であればグルコサミンを避けるべきだとしています。
- ぜんそくの人:MSDマニュアルは急に悪化した人がいたとしています。
- 妊娠中・授乳中の人:安全性はほとんど分かっていません。
コンドロイチンは動物の軟骨が原料のことがあり、MSDマニュアルは医薬品の品質でない製品では細菌、ウイルス、プリオンによる感染症の可能性があるとしています。
膝の痛みがあるときにすること
日本整形外科学会の解説は変形性膝関節症の日常生活での注意として、太ももの前の筋肉を鍛える、正座をさける、肥満であれば減量するといったことを挙げています。治療には痛み止めの内服薬や外用薬、ヒアルロン酸の注射、運動器リハビリテーションなどがあります。
米国リウマチ学会・関節炎財団のガイドラインも、運動と、過体重や肥満の人の減量を強く勧めています。体重を見直すときは「1日に必要なカロリーは?年齢・性別・活動量別の早見表と目標BMI」が参考になります。
痛みが続くとき、腫れや水がたまるとき、歩きにくいときは、サプリメントで様子をみず、整形外科を受診してください。日本整形外科学会のガイドラインの資料も、これらのサプリメントは食品に分類され、法律上、効能や効果をうたうことは許されないと説明しています。広告の表現をそのまま受け取らないようにしてください。
グルコサミン・コンドロイチンを使うときの注意
- 摂る量の基準はありません。
- 変形性膝関節症の治療の代わりにしないでください。
- それでも試すときは、表示の量を守り、同じ成分を含む製品を重ねて摂らないでください。
- 痛みが変わらないときは、続ける意味があるかを医師に相談してください。
- 薬を飲んでいる人、持病のある人、妊娠中・授乳中の人は、使う前に医師・薬剤師に相談してください。
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