ポリフェノールは1日どれくらい必要?多い食品と効果の根拠、鉄の吸収やサプリの注意

ポリフェノールは植物に含まれる成分の大きなグループです。お茶のカテキン、大豆のイソフラボン、ベリーのアントシアニン、コーヒーのクロロゲン酸などがこの仲間で、ひとつの成分の名前ではありません。

厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)では、ポリフェノールの基準は定められていません。この記事では、日本食品標準成分表、米国の大学や公的機関の解説、系統的レビュー、大規模な試験をもとに、種類と多い食品、1日の量の考え方、効果を調べた研究の結果、注意点を説明します。

結論を先に書くと、「1日にこれだけ必要」という公的な量はありません。ポリフェノールを多く含む食事をとっている人に死亡や心臓病が少ないという観察研究はありますが、ポリフェノールそのものの効果かは分かっていません。病気を防ぐ目的でサプリメントを使うことを支持する、確かな根拠もありません。

 

ポリフェノールとは

ポリフェノールは、フェノールという構造を分子の中に複数もつ化合物の総称で、植物に広く含まれます。米国のオレゴン州立大学ライナス・ポーリング研究所の解説によると、その中のフラボノイドだけでも5,000種を超えます。植物の中では、受粉する昆虫を引き寄せる、微生物などのストレスから身を守る、細胞の成長を調節するといった役割をもっています。

ビタミンやミネラルと違い、ポリフェノールは必須栄養素とはされておらず、食事摂取基準にも値がありません。

 

主な種類と含まれる食品

ポリフェノールは大きくフラボノイド、フェノール酸、スチルベン、リグナンなどに分けられます。種類によって構造も体の中での動きも違うため、ひとつの種類で分かったことを、ポリフェノール全体に当てはめることはできません。

主なポリフェノールと食品の例

分類 成分の例 主な食品
フラバン-3-オール(フラボノイド) カテキン、プロアントシアニジン お茶、ココア、チョコレート、ブドウ、りんご
アントシアニン(フラボノイド) シアニジン、デルフィニジンなど ベリー類、赤や紫のブドウ、赤ワイン
フラボノール(フラボノイド) ケルセチン、ケンフェロール 玉ねぎ、ねぎ、ケール、ブロッコリー、りんご
フラバノン(フラボノイド) ヘスペレチン、ナリンゲニン オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類
フラボン(フラボノイド) アピゲニン、ルテオリン パセリ、セロリ、唐辛子
イソフラボン(フラボノイド) ダイゼイン、ゲニステイン 大豆、大豆食品
フェノール酸 クロロゲン酸 コーヒー
スチルベン レスベラトロール ブドウ、赤ワイン、ピーナッツ
リグナン セコイソラリシレシノールなど アマニ、ごま、全粒穀物

※ライナス・ポーリング研究所の解説などをもとに作成しました。

お茶のカテキンは「茶カテキンの効果は?緑茶に含まれる量と体脂肪・コレステロールへの研究結果、サプリの注意」、大豆のイソフラボンは「大豆イソフラボンは1日何mgまで?豆腐・納豆の含有量と摂りすぎの注意、効果の根拠」で詳しく説明しています。

 

ポリフェノールが多い食品

文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年には、ポリフェノールの欄はありません。一部の食品の備考欄に量が書かれています。

成分表の備考欄にあるポリフェノールの量(100gあたり)

食品 ポリフェノール
ピュアココア(粉末) 4.1g
スイートチョコレート(カカオ増量) 2.2g
スイートチョコレート 1.4g
黒大豆(国産、乾) 1.1g
ミルクココア(粉末) 0.9g
ミルクチョコレート 0.7g
カシス(冷凍) 0.6g
黒米(穀粒) 0.5g
アサイー(冷凍、無糖) 0.4g
干しぶどう 0.4g
ぶどう(皮つき、生) 0.2g
ホワイトチョコレート Tr(微量)

※備考欄に量がある食品の一部です。お茶やコーヒーには、ポリフェノールでなくタンニンの量が書かれています(100gあたり、コーヒーの浸出液 0.25g、紅茶の浸出液 0.10g、せん茶の浸出液 0.07g)。

世界の食品データをまとめた研究(2010年)では、100gあたりの量が多いのは香辛料と乾燥ハーブ、ココア製品、色の濃いベリー、アマニ、ナッツの一部などでした。ただし、香辛料やハーブは一度に食べる量がわずかです。

ふだんの食事では、飲み物が大きな割合を占めます。日本人8,768人の飲み物の調査(2009年)で測られた100mLあたりの総ポリフェノールは、コーヒー200mg、緑茶115mg、紅茶96mg、トマト・野菜ジュース69mg、ココア飲料62mg、ウーロン茶39mg、果汁飲料34mg、麦茶9mgでした。この方法はポリフェノール以外の成分にも反応するため、実際より高い値になる傾向があります。

 

1日にどれくらい摂ればよいか

公的な基準はない

ポリフェノールには、食事摂取基準のような摂る量の基準がありません。「1日1,500mgが目安」という数字を紹介する記事や企業の調査もありますが、この記事で調べた範囲では、公的機関がこの量を基準として示したものは見当たりませんでした。

種類ごとに働きが違う成分をまとめた量なので、合計の数字だけを追っても、健康への影響は判断できません。

日本人が摂っている量

国立がん研究センターなどの多目的コホート研究の参加者を調べた報告(2021年)では、食事記録から計算した1日の摂取量の中央値は、男性で1,061~1,172mg、女性で942~1,024mgでした。約半分はお酒以外の飲み物からです。

これは調べた人が摂っていた量で、摂るべき量ではありません。先ほどの飲み物の調査では、飲み物から摂る量の50%がコーヒー、34%が緑茶でした。

食事ではどうすればよいか

野菜、果物、豆類、お茶などを日々の食事でとっていれば、ポリフェノールも自然に摂ることになります。ひとつの食品やサプリメントで量を増やすことより、食事全体を整えることを基本にしてください。

 

体の中での働き

吸収される量は少ない

ライナス・ポーリング研究所によると、ポリフェノールの多くは吸収される量が少なく、体の中で速やかに形を変えて排出されます。イソフラボンは比較的吸収されやすい一方、アントシアニンはごくわずかしか吸収されません。腸内細菌が分解してできた物質が吸収されることもあり、腸内細菌の違いで吸収や代謝に差が出ます。

「抗酸化作用」は体の中ではごく小さいとみられる

ポリフェノールの説明でよく使われる抗酸化作用は、おもに試験管の中で確かめられたものです。同じ研究所の解説では、とても多く摂っても血液や細胞の中の濃度はビタミンCなどのほかの抗酸化物質の100~1,000分の1程度で、体の中の抗酸化への寄与はごく小さいか、無視できる程度とみられています。

いま注目されているのは、細胞の中の信号の伝わり方に影響する働きです。ただ、その多くは細胞や動物の実験の結果で、ヒトの病気を減らすことに直接つながるとは言えません。

 

期待されている効果と研究の結果

死亡との関連

ポリフェノールの総摂取量と死亡を調べたコホート研究7件(178,657人)のメタアナリシス(2024年)では、摂取が多い人で死亡のリスクが7%低くなっていました。フラボノイドを調べた前向き研究22件のメタアナリシス(2017年)でも、多く摂る人で死亡が少なくなっていました。心血管の病気のリスクが高い7,447人を調べた報告(2014年)でも総摂取量が最も多いグループで死亡が少なくなっていましたが、フラボノイドやフェノール酸に分けると統計的に意味のある関連はありませんでした。

これらは観察研究で、効果を確かめたものではありません。ポリフェノールを多く摂る人は野菜や果物を多く食べ、生活習慣も違う可能性があります。

心臓や血管の病気

観察研究:前向きコホート研究39件(約150万人)のメタアナリシス(2021年)では、フラボノイドを多く摂る人に心血管疾患が少なくなっていました。一方、ライナス・ポーリング研究所によると、米国の研究では野菜や果物の摂取、食事全体の質を調整すると、統計的に意味のある関連がなくなりました。

ココアと血圧:コクランの系統的レビュー(2017年)では、35件の試験(1,804人、おもに健康な人、2~18週)をまとめ、フラバノール(カテキンなどの仲間)の多いココア製品で血圧が平均1.76mmHg下がっていました。わずかな差で、試験ごとの結果にはばらつきがあります。

ココア抽出物の大規模試験:米国の高齢者21,442人を対象にしたCOSMOSでは、ココア抽出物(フラバノール1日500mg)を中央値で3.6年摂っても、主な評価項目である心血管の病気全体は、統計的に意味のある差で減りませんでした(410人と456人)。心血管の病気による死亡は少なくなっていましたが、これは副次的な評価項目で、著者らも追加の研究が必要としています。

ケルセチンと血圧:7件の試験(587人)のメタアナリシス(2016年)では、血圧がわずかに下がっていました(収縮期で平均3.04mmHg)。1日500mgを超える量に限られる可能性があり、この量は試験の条件で、摂るとよい量ではありません。

高血圧の食事は「1日の食塩(塩分)は何gまで?目標量と減塩で下がる血圧|高血圧と食事」で説明しています。血圧やコレステロールが高いと言われた人は、治療や減塩の代わりにポリフェノールの食品やサプリメントを使わないでください。

赤ワイン

フランスでは飽和脂肪酸を多く摂るのに心臓病が少ないという「フレンチパラドックス」から、赤ワインのポリフェノールが注目されました。ライナス・ポーリング研究所によると、レスベラトロールの量は赤ワインでは少なくばらつきも大きく、アルコールの影響を超える利益があるかは分かっていません。

イタリアの65歳以上783人を9年追跡した研究では、尿から調べた食事由来のレスベラトロールの量は、死亡、炎症、心血管疾患、がんのいずれとも関連しませんでした。酵母やマウスなどでは寿命を延ばしたという報告がありますが、ヒトで同じことが起こるかは分かっていません。

厚生労働省の健康に配慮した飲酒に関するガイドラインは、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などは、少量の飲酒でも発症のリスクが上がるとしています。ポリフェノールを摂る目的でお酒を飲むことはすすめられません。

糖尿病

ライナス・ポーリング研究所によると、フラボノイドの摂取と糖尿病の関連を調べた観察研究では、関連がある種類とない種類があり、緑茶カテキンの試験をまとめた研究でも血糖への効果は結果が分かれています。糖尿病の食事は「糖尿病の食事で気をつけることは?糖質制限・果物・食物繊維・お酒と血糖値の関係」で説明しています。

がん

動物実験ではがんを抑えたという報告がありますが、同じ解説によると、ヒトの観察研究はフラボノイドを多く摂ることで大きくリスクが下がるという説得力のある根拠を示していません。胃がんと大腸がんをまとめた研究でも、予防の根拠はほとんどありませんでした。

認知機能

ココアのフラバノールなどで認知機能のテストの一部が改善した試験がある一方、効果がなかった試験もあります。認知症のリスクを下げるかは分かっていません。

目(ブルーベリーのアントシアニン)

ブルーベリーの仲間であるビルベリーの抽出物と夜間の視力を調べた偽薬対照試験12件の系統的レビューでは、新しい4件のランダム化比較試験はいずれも効果がありませんでした。方法が厳密な研究ほど効果が出ておらず、健康な人の夜の見え方を良くするという考えは支持されないと結論しています。目の病気の人については、厳密な研究がありません。2004年の報告で、新しい研究を含めた結論ではありません。

ウコンのクルクミン

クルクミンもポリフェノールの一種です。米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)の解説は、ひざの痛みなどで肯定的な初期の結果はあるものの、ウコンやクルクミンが何らかの健康目的に役立つと断定できるほどの知見はないとしています。

 

抗酸化サプリメントについて

NCCIHの解説は、加齢黄斑変性を除いて、抗酸化サプリメントが慢性の病気に役立つという根拠はないとしています。野菜や果物をよく食べる人の健康が良いのは、ほかの成分や生活習慣によるのかもしれません。

ビタミンA・C・E、β-カロテン、セレンのサプリメントを調べたコクランの系統的レビュー(2012年)でも、死亡を減らす効果はありませんでした。このレビューにポリフェノールは含まれませんが、「抗酸化」という言葉だけで効果を判断できないことを示しています。

 

副作用と安全性

食品から摂る場合

ライナス・ポーリング研究所によると、植物性の食品からフラボノイドを多く摂って害が出たという報告はありません。吸収が少なく、速やかに排出されるためと考えられています。ただし、チョコレートやココアの飲み物には脂質や砂糖も含まれ、コーヒーやお茶にはカフェインが含まれます。量は食品全体で考えてください。カフェインについては「カフェインは1日何mgまで?コーヒー・お茶の含有量と摂りすぎの症状、妊娠中の目安」で説明しています。

鉄の吸収を妨げる

ポリフェノールは植物性の食品などに含まれる非ヘム鉄の吸収を妨げます。ヒトの研究(1999年)では、パンの食事と一緒に飲み物をとったとき、紅茶で鉄の吸収が79~94%、ココアで71%減りました。ミルクを入れても、ほとんど変わりませんでした。

ライナス・ポーリング研究所によると、ビタミンCはこの働きを打ち消します。貧血と言われた人や鉄が不足しやすい人は、お茶やコーヒーを食事と同時に飲むのを避け、ビタミンCの多い野菜や果物を組み合わせるとよいでしょう。鉄の吸収については「ヘム鉄と非ヘム鉄の違いは?鉄の種類と吸収のしくみ、機能鉄・貯蔵鉄の働き」で説明しています。鉄剤を飲んでいる人は、飲み方を医師・薬剤師に確認してください。

サプリメントで報告されている害

薬を飲んでいる人

ライナス・ポーリング研究所によると、サプリメントなどでフラボノイドをとても多く摂ると、薬の体内での動きに影響するおそれがあります。ワルファリンやアスピリンなど血液を固まりにくくする薬では、理論上、出血のリスクが高まる可能性があります。

グレープフルーツは85種以上の薬の血中濃度を上げるおそれがあります。主な原因はフラボノイドよりも、フラノクマリンという別の成分と考えられています。スタチンや免疫抑制薬など、飲んでいる薬との組み合わせは医師・薬剤師に確認してください。

妊娠中・授乳中

同じ研究所は、妊娠中・授乳中のフラボノイドのサプリメントは安全性が確立していないとしています。NCCIHも妊娠中のウコンのサプリメントは安全でない可能性があるとしています。この時期はサプリメントを避け、ふだんの食事から摂ってください。

 

ポリフェノールを摂るときの注意

  • ポリフェノールには摂る量の基準がありません。合計の量を目標にする必要はありません。
  • 野菜、果物、豆類、お茶などを食事に取り入れることが基本です。
  • サプリメントで病気を防げるとは言えません。使うときは表示の量を守り、同じ成分の製品を重ねないでください。
  • 病気の治療中の人、薬を飲んでいる人は、サプリメントを使う前に医師・薬剤師に相談してください。
  • 貧血と言われた人は、食事のときのお茶やコーヒーの飲み方に気をつけてください。
  • 妊娠中・授乳中の人は、サプリメントでなく食品から摂ってください。

 

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