腎臓病(CKD)の食事で気をつけることは?塩分6g未満、ステージ別たんぱく質の目安とカリウム・リンの注意

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが少しずつ落ちていく病気です。初めのうちは症状がほとんどなく、健康診断の尿検査や血液検査で見つかることが多い病気です。進行を遅らせるためには、薬による治療とあわせて、食事の見直しが大切になります。

この記事では、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)と、日本腎臓学会の慢性腎臓病に対する食事療法基準2026年版・エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023をもとに、慢性腎臓病の食事で気をつけること(食塩・たんぱく質・エネルギー・カリウム・リン)を説明します。

ここで紹介する量は、医師や管理栄養士が一人ひとりの状態に合わせて決めるときの目安です。腎臓の病気で治療を受けている人は、自分で判断して制限を始めたりやめたりせず、主治医や管理栄養士に相談してください。

 

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病は、尿にたんぱくが出るなど腎臓の障害を示す所見があるか、腎臓の働き(糸球体ろ過量、GFR)が低下した状態が、3か月を超えて続く病気です。診療では、血液のクレアチニンの値と年齢・性別から計算する推算GFR(eGFR)がよく使われます。

日本腎臓学会の推定では、日本の慢性腎臓病の患者は2015年に約1,480万人でした。食事療法基準2026年版によると、患者の約75%は65歳以上です。腎臓の働きは年齢とともに低下するため、高齢者の多くは自覚がないまま腎臓の働きが落ちていると考えられています。

ステージ(重症度)の分け方

慢性腎臓病の重さは、原因の病気、GFRの区分、尿たんぱく(尿アルブミン)の区分を組み合わせて評価します。GFRの区分は次のとおりです。

慢性腎臓病のGFR区分

区分 腎臓の働き GFR(mL/分/1.73m²)
G1 正常または高値 90以上
G2 正常または軽度低下 60〜89
G3a 軽度〜中等度低下 45〜59
G3b 中等度〜高度低下 30〜44
G4 高度低下 15〜29
G5 高度低下〜末期腎不全 15未満

※日本人の食事摂取基準(2025年版)の表をもとにしています。実際のステージは、尿たんぱくの量もあわせて決まります。

GFRが60未満であることや、尿にたんぱく・アルブミンが出ていることは、末期腎不全だけでなく、心臓や血管の病気で亡くなるリスクとも関係しています。

健康診断で受診をすすめられる目安

慢性腎臓病は、末期腎不全に近づくまで症状が出ないことが多い病気です。日本腎臓学会のガイドラインでは、健康診断で次の結果が出た人に、医療機関の受診をすすめています。

  • 尿たんぱくが(1+)以上
  • 尿たんぱくの(±)が2年続いた
  • eGFRが45未満(40歳未満では60未満)

 

食事と慢性腎臓病の関係

慢性腎臓病の治療には、末期腎不全になるのを防ぐ(遅らせる)こと、心筋梗塞や脳卒中などを防ぐこと、貧血や骨・ミネラルの異常などの合併症を防ぐこと、の3つの目的があります。食事はそのどれにも関わります。

食事摂取基準(2025年版)は、栄養素と慢性腎臓病の重症化の関係を、次のように整理しています。

  • 食塩の摂りすぎは血圧を上げ、慢性腎臓病の悪化につながる
  • たんぱく質の摂りすぎは腎臓に負担をかけ、リンの摂りすぎにもつながる
  • エネルギー(炭水化物・脂質)の摂りすぎは肥満を通して、高血糖や脂質異常症を招き、慢性腎臓病の悪化につながる

ただし、高血圧・脂質異常症・糖尿病と比べると、栄養素と慢性腎臓病の関係を調べた研究は少なく、結果が一致していないものも多いとされています。病気の重さによって関係が変わる場合もあります。

日本腎臓学会の食事療法基準2026年版も、すべての人に同じ制限をするのではなく、年齢や体格、栄養状態、ほかの病気に合わせて決める必要があるとしています。特に高齢の人では、「制限」と言われたことで食事の量が減り、筋肉が落ちて体が弱る(サルコペニア・フレイル)おそれがあると注意しています。

 

食塩:1日6g未満が目標

食事摂取基準(2025年版)では、高血圧と慢性腎臓病の重症化予防のための食塩相当量を、男女とも1日6.0g未満としています。日本腎臓学会の食事療法基準2026年版も、慢性腎臓病のすべての人(透析を受けていない人)に食塩を減らすことをすすめ、目標を1日6g未満としています。

食塩を減らすと、血圧が下がり、尿に出るたんぱくも減ります。食事療法基準2026年版が紹介している研究のまとめでは、食塩を1日4.9g減らすごとに、上の血圧が6.10mmHg、下の血圧が3.47mmHg下がり、尿たんぱくは41%減っていました。一方で、食塩を減らすことが末期腎不全や死亡を直接減らすかどうかを示す研究は、まだ限られています。

令和5年国民健康・栄養調査では、成人の食塩摂取量の平均は男性10.9g、女性9.3gで、6gとの差はまだ大きいのが現状です。食事療法基準2026年版は、一度に6g未満を目指すより、段階的に減らすことをすすめています。たとえば1日15gから10gに減らすだけでも、意味のある改善が得られることが少なくないとしています。

減らしすぎにも注意が必要です。高齢の人や、筋肉が落ちて体が弱っている人では、食塩を減らしすぎると血圧が下がりすぎたり、食欲が落ちて栄養が不足したりするおそれがあります。夏に屋外で長く働くなど汗を多くかくときは、医師の判断で一時的に目標をゆるめることもあります。

減塩の工夫は1日の食塩(塩分)は何gまで?目標量と減塩で下がる血圧|高血圧と食事で説明しています。

 

たんぱく質:ステージによって考え方が違う

たんぱく質が体の中で使われると、窒素を含む老廃物ができ、腎臓から尿に出ていきます。腎臓の働きが落ちると、この老廃物がたまりやすくなるのが問題です。また、たんぱく質を摂りすぎると腎臓の糸球体に負担がかかり、尿たんぱくが増える原因になります。このため、慢性腎臓病の食事療法では、たんぱく質の量を調整することが中心になります。

ステージごとのたんぱく質の目安

日本腎臓学会の食事療法基準2026年版は、たんぱく質を制限する場合の目安を次のように示しています。

慢性腎臓病でたんぱく質を制限する場合の目安(1日、標準体重1kgあたり)

ステージ 標準的な治療 サルコペニアがある場合の上限の目安
G1・G2 摂りすぎを避ける(上限の目安1.3g) 摂りすぎを避ける(1.5g)
G3a 0.8〜1.0g 制限をゆるめる場合1.3g、制限を優先する場合1.0g
G3b 0.6〜0.8g 制限をゆるめる場合1.3g、制限を優先する場合0.8g
G4・G5 0.6〜0.8g 原則として制限を優先し、状態によりゆるめる(0.8g)

※日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2026年版」の表3をもとにしています。体重は、基本的に標準体重(BMI=22になる体重)です。1回の検査の結果だけで、たんぱく質の制限を始めることは避けるとされています。

標準体重は「身長(m)×身長(m)×22」で計算します。たとえば身長160cmの人の標準体重は約56kgなので、1kgあたり0.8〜1.0gなら、1日のたんぱく質は約45〜56gになります。

G1・G2の人については、摂りすぎを避けることはすすめられていますが、制限はすすめられていません。日本人の食事摂取基準(2025年版)のたんぱく質の推奨量は、18〜64歳の男性で65g、女性で50gです。くわしくはたんぱく質の働きと1日の摂取量は?推奨量・目標量の表と摂りすぎ・不足の影響を見てください。

たんぱく質を減らす効果はどこまで分かっているか

食事摂取基準(2025年版)によると、たんぱく質を制限すると尿たんぱくが減ることは、複数の研究のまとめで示されていて、一定の効果があると考えられています。一方、腎臓の働きの低下を遅らせる効果や、末期腎不全を減らす効果については、効果があったという報告と、差がなかったという報告があり、はっきりした結論は出ていません。糖尿病が原因の腎臓病でも、結論は一致していません。

たんぱく質の制限は、長く続けるのが難しいことも多いとされています。

たんぱく質を減らすときはエネルギーを十分に摂る

たんぱく質を減らしているときにエネルギーが足りないと、体の筋肉などのたんぱく質が分解されてしまいます。食事療法基準2026年版は、たんぱく質を制限するときは、エネルギーを1日に標準体重1kgあたり30kcal以上摂ることが望ましいとしています。1kgあたり0.6g以下の低たんぱく食を行うときは、腎臓専門医と管理栄養士を含む医療チームの管理のもとで行うことが必要です。

高齢の人は制限より栄養の確保が優先になることも

高齢の慢性腎臓病の人では、末期腎不全になるリスクより、亡くなるリスクのほうが高い場合が多いとされています。ステージG1〜G3で平均78歳の高齢者4,789人を追いかけた研究では、たんぱく質を多く摂っている人ほど死亡のリスクが低いという関係がみられました。

このため食事療法基準2026年版は、筋肉が落ちている(サルコペニアがある)人では、尿たんぱくの量や腎臓の働きが下がる速さを見て、たんぱく質の制限をゆるめることも考えるとしています。どちらを優先するかは、医師と相談して決めます。

たんぱく質と病気の関係はたんぱく質と病気の関係は?フレイル・腎臓病・糖尿病・脳卒中と摂る量の目安でも説明しています。

植物性のたんぱく質

最近は、たんぱく質の「質」も注目されています。慢性腎臓病の人を対象にした観察研究では、たんぱく質のうち植物性の割合が高い人ほど、亡くなるリスクが低いという結果でした。食事療法基準2026年版は、植物性のたんぱく質を減らしすぎるのは好ましくない可能性があるとしています。ただし、慢性腎臓病の人で植物性のたんぱく質を中心にする食事の効果と安全性は、まだ十分に確かめられていません。

 

エネルギーと体重

食事療法基準2026年版は、慢性腎臓病の人のエネルギー摂取量を、1日に標準体重1kgあたり25〜35kcalとしています。たとえば標準体重56kgの人なら、1日1,400〜1,960kcalです。実際の量は、体重の変化や活動量、糖尿病や肥満があるかどうかを見て、医師や管理栄養士が決めます。

肥満は慢性腎臓病が悪くなる原因の1つです。食事摂取基準(2025年版)によると、慢性腎臓病の人の体重の上限はBMI 25未満が妥当という考えです。一方、やせすぎも亡くなるリスクを高めるため、下限はBMI 20以上が望ましいとされています。エネルギーの摂りすぎも摂りなさすぎも、死亡や慢性腎臓病の進行と関係すると報告されています。

1日に必要なエネルギーの目安は1日に必要なカロリーは?年齢・性別・活動量別の早見表と目標BMIで説明しています。

 

カリウム:血液の値が高い人だけ制限する

腎臓の働きが正常なら、ふだんの食事のカリウムで、血液のカリウムが多くなりすぎる(高カリウム血症)ことはありません。慢性腎臓病が進むと、腎臓からカリウムを出す力が落ちるため、高カリウム血症が起こりやすくなります。血液のカリウムが高くなりすぎると、不整脈を起こし、命に関わることがあります。

ただし、日本腎臓学会の食事療法基準2026年版は、高カリウム血症がない人にカリウムの制限は必要ないとしています。早い段階の慢性腎臓病の人が野菜や果物を控えると、むしろ腎臓や心臓によくない可能性があることも紹介しています。高カリウム血症がない場合の参考は、食事摂取基準(2025年版)の目安量(成人男性2,500mg、女性2,000mg)です。

血液のカリウムの値が高く、制限が必要になった場合は、医師と管理栄養士が相談したうえで、次の量を目安にします。

  • G3b:1日2,000mg以下
  • G4・G5:1日1,500mg以下

高カリウム血症は、食事だけが原因とは限りません。血圧の薬の一部(レニン・アンジオテンシン系阻害薬など)や便秘でもカリウムが体にたまりやすくなります。野菜を水にさらしたりゆでこぼしたりするとカリウムは減りますが、それで高カリウム血症がよくなるかは確かめられておらず、ビタミンも失われるため、全員に必要な方法ではないとされています。

カリウムの働きと目安量はカリウムの働きと1日の摂取量は?目安量・目標量と腎臓病や血圧の薬を使う人の注意、高カリウム血症の症状はカリウムは摂りすぎても大丈夫?耐容上限量と高カリウム血症の症状、腎臓病・血圧の薬・代替塩の注意で説明しています。

塩化カリウムを使った「代替塩」に注意

食塩の一部を塩化カリウムに置きかえた減塩調味料(代替塩)には、カリウムが多く含まれています。食事療法基準2026年版は、腎臓の働きが落ちているG3〜G5の人には、高カリウム血症のおそれがあるため、減塩のための代替塩の使用をすすめていません。使う前に医師に相談してください。

 

リン:加工食品の添加物に注意

体の中のリンの約85%は骨にあります。慢性腎臓病が進むと、リンを尿に出す力が落ちて血液のリンが高くなり、骨や血管に異常が起こりやすくなります(CKDに伴う骨ミネラル代謝異常)。

リンは肉、魚、卵、乳製品、豆類など、たんぱく質の多い食品に多く含まれています。そのため、たんぱく質を減らすと、リンも減ります。食事療法基準2026年版によると、ふだんの食事のリンは、たんぱく質1gあたり12〜14mgです。

リンの吸収されやすさは、何に含まれているかで違います。

  • 肉や魚などに含まれるリン:吸収率は約40〜60%
  • 豆類や穀類に含まれるリン:多くは吸収されにくい形(フィチン酸)
  • 食品添加物のリン(無機リン):吸収率は90%以上

添加物のリンは、ハムやソーセージなどの肉の加工品、かまぼこなどの練り製品、リン酸塩を使ったコーラなどの炭酸飲料に多く含まれます。リンは食品の栄養成分表示の対象ではないため、加工食品にどれくらい入っているかは分かりにくいのが現状です。食事療法基準2026年版は、加工食品や炭酸飲料はできるだけ控えるとしています。

一方で、血液のリンの値が正常な段階でリンを制限する根拠は乏しく、リンを減らそうとしてたんぱく質が足りなくなると、栄養状態が悪くなるおそれがあります。食事療法基準2026年版は、血液のリンの値を基準の範囲に保つことを目標に、栄養状態を見ながら個別に管理するとしています。同じたんぱく質の量でリンが少ない食品の例は鶏もも肉、ぶり、卵、リンが多い食品の例は牛乳、ベーコン、しらす干しです。

リンの働きはリンの働きと1日の摂取量は?目安量・耐容上限量と加工食品の添加物の注意、加工食品のリンはリンの摂りすぎで起こること|加工食品とカルシウムのバランス、耐容上限量で説明しています。

 

野菜・果物は一律に控えなくてよい

以前は、慢性腎臓病の人には、カリウムを減らすために野菜や果物を控えるよう指導されることがありました。今はこの考え方が見直されています。

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023は、体が酸性に傾く状態(代謝性アシドーシス)がある人に、野菜や果物などを摂ることを提案しています。食事療法基準2026年版も、野菜や果物を摂ると慢性腎臓病の進行を抑える可能性があるという研究を紹介し、一律に制限するのではなく、血液のカリウムの値を確かめながら少しずつ増やすのが現実的だとしています。

ただし、果汁飲料やスムージーは、生の野菜や果物よりカリウムが吸収されやすくなる可能性があります。血液のカリウムの値が高い人は、医師や管理栄養士に相談してください。

 

気をつけたいこと

  • 食事療法の量は、腎臓の働き、尿たんぱくの量、年齢、栄養状態、ほかの病気によって一人ひとり違います。自分で判断して、たんぱく質やカリウムを極端に減らすことは避けてください。
  • 糖尿病がある人は、血糖の管理もあわせて考える必要があります。糖尿病の食事で気をつけることは?糖質制限・果物・食物繊維・お酒と血糖値の関係も見てください。
  • カリウムやリンなどを含むサプリメントや健康食品、代替塩は、腎臓の働きが落ちている人では体にたまりやすくなります。使う前に医師や薬剤師に相談してください。
  • 子どもの慢性腎臓病では、成長に影響するおそれがあるため、CKD診療ガイドライン2023はたんぱく質の制限を行わないことを提案しています。
  • 透析を受けている人の食事は、この記事で紹介した基準とは別に決められます。

 

まとめ

  • 慢性腎臓病は、腎臓の障害やGFRの低下が3か月を超えて続く病気で、症状が出にくいため健康診断での尿検査・血液検査が大切です。
  • 食塩は、高血圧と慢性腎臓病の重症化予防のために1日6g未満が目標です。高齢の人などでは減らしすぎにも注意します。
  • たんぱく質は、G1・G2では摂りすぎを避け、G3a以降は医師や管理栄養士の管理のもとで制限を考えます。制限するときはエネルギーを十分に摂ります。
  • カリウムは、血液の値が高い人だけ制限します。野菜や果物を一律に控える必要はありません。
  • リンは、加工食品や炭酸飲料に含まれる添加物のリンを控えるのが基本です。

 

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