妊娠中・授乳中に必要な栄養は?時期別の付加量の一覧と葉酸・鉄の摂り方、避けたい食品

妊娠中と授乳中は、赤ちゃんの成長や母乳のために、ふだんより多くのエネルギーと栄養素が必要になります。必要な量は栄養素ごと、妊娠の時期ごとに違います。

この記事では、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)の数値を使って、妊娠初期・中期・後期と授乳中に増やしたい量を一覧にします。あわせて、葉酸や鉄の摂り方、サプリメントの注意、控えたい食品を説明します。

結論を先に書くと、基本は食事で主食・主菜・副菜をそろえることです。サプリメントが公的に勧められているのは、妊娠を計画している時期から妊娠初期の葉酸です。鉄などのサプリメントや薬は、医師に相談して決めてください。

 

妊娠中・授乳中に増やしたい量の一覧

食事摂取基準では妊娠の時期を初期(~13週6日)、中期(14週0日~27週6日)、後期(28週0日~)に分けています。

次の表は妊娠前の量に足す「付加量」です。エネルギーは推定エネルギー必要量、そのほかは推奨量(ほとんどの人が必要量を満たす量)の付加量を示しています。

項目(単位は1日あたり) 妊娠初期 妊娠中期 妊娠後期 授乳中
エネルギー(kcal/日) +50 +250 +450 +350
たんぱく質(g/日) +0 +5 +25 +20
ビタミンA(µgRAE/日) +0 +0 +80 +450
ビタミンB1(mg/日) +0.2 +0.2 +0.2 +0.2
ビタミンB2(mg/日) +0.3 +0.3 +0.3 +0.6
ナイアシン(mgNE/日) +0 +0 +0 +3
ビタミンB6(mg/日) +0.2 +0.2 +0.2 +0.3
葉酸(µg/日) +0 +240 +240 +100
ビタミンC(mg/日) +10 +10 +10 +45
カルシウム(mg/日) +0 +0 +0 +0
マグネシウム(mg/日) +40 +40 +40 +0
鉄(mg/日) +2.5 +8.5 +8.5 +2.0
亜鉛(mg/日) +0 +2.0 +2.0 +3.0
銅(mg/日) +0.1 +0.1 +0.1 +0.6
ヨウ素(µg/日) +110 +110 +110 +140
セレン(µg/日) +5 +5 +5 +20
モリブデン(µg/日) +0 +0 +0 +3.5

※エネルギーの必要量は、体格や妊娠中の体重の増え方、赤ちゃんの発育の状況を見て判断します。

妊娠前の量は年齢によって違います。たとえば18~49歳の葉酸の推奨量は240µg/日なので、妊娠中期・後期は480µg/日、授乳中は340µg/日です。鉄は、月経なしの推奨量6.0mg/日に付加量を足すので、妊娠初期は8.5mg/日、中期・後期は14.5mg/日、授乳中は8.0mg/日です。年齢ごとの量は、下の「関連記事」にある各成分の記事で確かめてください。

妊娠中も授乳中も1日の量で示されているもの

次の栄養素は付加量ではなく1日あたりの目安量(不足が起こりにくいと考えられる量)で示されています。

栄養素 妊娠中 授乳中
n-6系脂肪酸(g/日) 9 9
n-3系脂肪酸(g/日) 1.7 1.7
ビタミンD(µg/日) 9.0 9.0
ビタミンE(mg/日) 5.5 5.5
ビタミンK(µg/日) 150 150
ビタミンB12(µg/日) 4.0 4.0
パントテン酸(mg/日) 5 6
ビオチン(µg/日) 50 50
カリウム(mg/日) 2,000 2,000
リン(mg/日) 800 800
マンガン(mg/日) 3.0 3.0
クロム(µg/日) 10 10

目標量は妊娠前の女性とほぼ同じ

生活習慣病の予防のための目標量は次のとおりです。2025年版では妊娠していない女性、授乳中でない女性と同じとされ、妊婦に合わせた目標量が必要かどうかは今後の課題とされています。

項目 妊娠中 授乳中
たんぱく質(%エネルギー) 初期・中期13~20、後期15~20 15~20
脂質(%エネルギー) 20~30 20~30
飽和脂肪酸(%エネルギー) 7以下 7以下
炭水化物(%エネルギー) 50~65 50~65
食物繊維(g/日) 18以上 18以上
食塩相当量(g/日) 6.5未満 6.5未満
カリウム(mg/日) 2,600以上 2,600以上

エネルギーの割合については「PFCバランスとは?理想の割合(目標量)とグラム数の計算方法」で説明しています。

 

妊娠中の体重はどのくらい増えればよいか

体重の増え方の目安は妊娠前の体格(BMI)で変わります。BMIは体重(kg)を身長(m)で2回割った値です。次の表は、日本産科婦人科学会の目安で、厚生労働省の妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針でも使われています。

妊娠前の体格 体重増加の目安
低体重(やせ):BMI18.5未満 12~15kg
普通体重:BMI18.5以上25.0未満 10~13kg
肥満(1度):BMI25.0以上30.0未満 7~10kg
肥満(2度以上):BMI30.0以上 個別に対応(上限5kgまでが目安)

この指針によると、増え方が足りないと早産や、赤ちゃんが小さく生まれるリスクが高まります。増えすぎると、赤ちゃんが大きく生まれるリスクが高まります。

ただし、増加量を厳しく一律に指導する根拠は十分ではないとされており、個人差を考えたゆるやかな指導が前提です。赤ちゃんが2人以上の場合も、この表の目安とは違います。増え方が心配なときは、医師や助産師に相談してください。

 

妊娠中・授乳中に不足しやすい栄養素

食生活指針の解説によると、妊婦の摂取量を2015年版の基準と比べたところ、ビタミンA・D・B1・B2・B6、葉酸、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など多くの栄養素が少ない状況でした。授乳中の人についても、エネルギーやたんぱく質、多くのビタミン・ミネラルの摂取が少ない状況が報告されています。日本人女性で特に不足しがちなのは葉酸と鉄です。

妊娠してから急に食事を変えるのは難しいため、妊娠前からの食生活が大切だとされています。

葉酸はいつから摂るか

葉酸は、胎児の脳や脊髄のもとになる神経管ができるのに関わるビタミンです。神経管は受胎後およそ28日でできるので、多くの人は妊娠に気づく前にこの時期を迎えます。

2025年版では、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸を400µg/日摂ることが望まれるとしています。「通常の食品以外の食品」とは、サプリメントや葉酸を強化した食品のことです。食品安全委員会の資料では、時期を妊娠の1か月前から妊娠3か月までとしています。

コクラン・レビューでは、受胎の前後に葉酸のサプリメントを飲んだ女性は、神経管閉鎖障害のリスクがおよそ3分の1になっていました。ただし、この病気は遺伝などさまざまな要因で起こるので、葉酸を摂れば必ず防げるわけではありません。

サプリメントなどからの葉酸の耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)は、18~29歳で900µg/日、30~49歳で1,000µg/日です。

食品安全委員会の資料によると、妊娠中期以降はサプリメントなどで摂る必要はなく、増えた分は食事から摂ります。葉酸は緑黄色野菜や豆類、海藻などに含まれます。量は「葉酸が多い食品ランキング|100gあたりの含有量を食品群別に一覧」で調べられます。詳しくは「葉酸の働きと1日の摂取量は?推奨量・耐容上限量と妊娠を計画する女性が摂りたい量」をご覧ください。

鉄は妊娠中期から大きく増える

妊娠中は、胎児の成長に使う鉄、へその緒や胎盤にたまる鉄、血液の量が増えることで赤血球をつくるのに使う鉄が必要になります。そのため中期・後期の付加量は+8.5mg/日と大きくなっています。

こども家庭庁の母子健康手帳の資料では、貧血を防ぐために、吸収率が高いヘム鉄を多く含む赤身の肉や魚を取り入れ、吸収を高めるたんぱく質やビタミンCを含む食品もあわせて摂ることを勧めています。食品ごとの量は「鉄分が多い食品ランキング|100gあたりの含有量を食品群別に一覧」で調べられます。

サプリメントについては2024年のコクランの系統的レビュー(57試験、48,971人)で、毎日の鉄のサプリメントにより貧血や出産時の鉄の不足が減る可能性が報告されています。ただし、根拠の確かさは低いと評価されています。鉄剤やサプリメントを使うかどうかは、健診の検査結果を見て主治医と決めてください。貧血の症状や検査については「鉄が不足すると起こる病気は?鉄欠乏性貧血の症状と不足しやすい人、検査と治療」で説明しています。

カルシウムは付加量がなくても不足に注意

カルシウムの付加量は+0です。妊娠中は腸からの吸収率が上がり、胎児に蓄えられるためです。

ただし、日本人女性のカルシウムの摂取量はもともと少なく、十分に摂れていない状況が長く続いています。食生活指針では乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などから摂ることを勧めています。18~49歳の推奨量は650mg/日です。

妊娠中にカルシウムのサプリメント(1日1g以上)を飲んだ試験をまとめたコクラン・レビューでは、妊娠高血圧腎症(妊娠中に血圧が上がり、尿にたんぱくが出るなどの病気)が少なくなっていました。ただし、効果がはっきりしていたのはふだんの食事でカルシウムが少ない女性で、根拠の質は低いとされています。サプリメントを使うときは医師に相談してください。

授乳中に増えるビタミンA・Cと亜鉛

授乳中は母乳に含まれる分を補うため、ビタミンAやビタミンC、亜鉛、ヨウ素などの付加量が妊娠中より大きくなります。一方、特にたくさん食べなければならない食品はありません。

 

毎日の食事の整え方

食生活指針などで勧められている内容をまとめます。

  • 主食・主菜・副菜がそろった食事を1日2回以上とる。そろった食事が2回以上あると、それ未満の人より栄養素の摂取量が適正になると報告されています。
  • エネルギーは主食(ごはん、パン、めん類)を中心に摂る。一度に食べられないときは、間食におにぎりを足す方法もあります。
  • たんぱく質は肉、魚、卵、大豆製品を組み合わせて摂る。
  • ビタミンとミネラルは野菜、いも、豆類、きのこ、海藻の副菜で摂る。
  • 付加量は毎日きっちり満たそうとせず、数日単位で食事を見直して調整する。

授乳中は無理な減量を避け、水や麦茶などでこまめに水分を補います。水分については「1日に必要な水分量はどれくらい?年齢・男女別の摂取量と脱水のサイン・熱中症対策」もご覧ください。

子どものアレルギーを防ぐために、妊娠中や授乳中に特定の食品を避けたり、多く摂ったりする効果は示されていません。自己判断で食品を除くと栄養が偏ることがあります。

 

妊娠中に注意したい食品と成分

食品安全委員会の資料は、避けるものを避けて、それ以外をバランスよく適量食べていれば、食事で大きな問題は起こらないとしています。

生ハムや加熱していないナチュラルチーズ

妊娠中は免疫の働きが下がり、食中毒にかかりやすくなります。特に注意が必要なのはリステリアという菌です。厚生労働省の資料は、加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、スモークサーモン、生ハムを妊娠中に避けたほうがよい食品として挙げています。

リステリアは冷蔵庫の中でも増えます。妊娠中に感染すると、早産や流産の原因になったり、胎児に影響が出たりすることがあります。ふだん加熱しないで食べるものも、妊娠中はできるだけ加熱して食べてください。プロセスチーズは加熱して殺菌されています。

加熱が足りない肉

トキソプラズマという寄生虫は、加熱が足りない豚や羊などの肉、ネコのふんに含まれていることがあります。妊娠中に初めて感染すると、流産や死産、胎児の水頭症などを起こすことがあります。肉は中心部までしっかり加熱し、動物を触ったあとや調理・食事の前には手を洗ってください。

一部の大型の魚

魚はたんぱく質やEPA・DHAの大切な供給源なので、食べないようにする必要はありません。ただし、一部の魚介類には水銀が多く含まれます。厚生労働省の注意事項では、妊婦が食べる量の目安を次のように示しています。

1回約80gとして 魚介類
週に2回まで キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ、ヨシキリザメ、イシイルカ、クロムツ
週に1回まで キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチ、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ
2週間に1回まで コビレゴンドウ
2か月に1回まで バンドウイルカ

※刺身1人前、切り身1切れがそれぞれ80g程度、寿司や刺身の1貫・1切れが15g程度です。

キハダ、ビンナガ、メジマグロ、ツナ缶はふつうに食べてかまいません。サケ、アジ、サバ、イワシ、サンマ、タイ、ブリ、カツオなども特に注意は必要ありません。

厚生労働省によると、心配されている胎児への影響は、音への反応が1,000分の1秒以下のレベルで遅れるようなものです。食べすぎたときは次の回や次の週に減らせばよく、妊娠に気づいた段階から気をつければ一定の効果が期待できます。授乳中の人はこの注意事項の対象ではありません。

n-3系脂肪酸については「n-3系脂肪酸(オメガ3)とは?EPA・DHAの働きと1日の目安量、多く含む食品」で説明しています。

レバーとビタミンAのサプリメント

ビタミンAは胎児の発達に必要ですが、妊娠初期に非常に多く摂ると、胎児の先天異常が起こる懸念があります。18~49歳の女性の耐容上限量は2,700µgRAE/日です。

食品安全委員会の資料によると、鶏や豚のレバーには100gあたりおよそ14,000µgRAEのビタミンAが含まれ、およそ20gで耐容上限量を超えます。妊娠を計画している人や妊娠初期の人は、レバーをなるべく控えてください。ただ、耐容上限量は1回超えただけで危険という値ではないので、気づかず食べてしまっても心配しすぎず、その後控えれば十分です。

葉酸のサプリメントやマルチビタミンにビタミンAが入っていることがあるので、成分名と含有量を確かめてください。緑黄色野菜に多いβ-カロテンなどは体内でビタミンAに変わりますが、これによる過剰症の心配はありません。詳しくは「ビタミンAの摂りすぎで起こること|過剰症の症状と耐容上限量、妊娠中の注意とβ-カロテン」をご覧ください。

昆布とヨウ素

妊婦と授乳中の人のヨウ素の耐容上限量は2,000µg/日で、ほかの成人(3,000µg/日)より低く決められています。ヨウ素は母乳に移るため、摂りすぎると赤ちゃんの甲状腺の働きに影響する可能性があります。一方、海藻を避け続けるとヨウ素が不足することもあります。詳しくは「ヨウ素の摂りすぎで起こること|昆布と甲状腺、耐容上限量と妊娠中・薬の注意」をご覧ください。

大豆イソフラボンのサプリメント

豆腐や納豆などの大豆食品はふつうに食べてかまいません。食品安全委員会は、妊婦について、日常の食生活にさらに上乗せしてイソフラボンを摂ることは勧められないとしています。詳しくは「大豆イソフラボンは1日何mgまで?豆腐・納豆の含有量と摂りすぎの注意、効果の根拠」をご覧ください。

カフェイン

カフェインをまったく摂らないようにする必要はありませんが、妊娠中はいつも以上に摂りすぎに注意します。海外の機関の目安などは「カフェインは1日何mgまで?コーヒー・お茶の含有量と摂りすぎの症状、妊娠中の目安」にまとめています。

お酒とたばこ

妊娠中の飲酒は赤ちゃんの発育不全や中枢神経の障害などを起こす胎児性アルコール・スペクトラム障害の原因になることがあります。飲む量、時期、お酒の種類について安全な範囲はないと考えられています。妊娠が分かってから授乳が終わるまで、お酒は避けてください。

食生活指針のリーフレットによると、授乳中の人が食べてはいけない食品は、お酒のほかにはありません。

たばこは受動喫煙も含めて避けてください。妊娠中の喫煙は、早産や赤ちゃんの低体重などとの関連が報告されています。やめるのが難しいときは、専門の医療機関に相談してください。

 

つわりや持病があるとき

つわりで吐き続けて水分や食事がとれないときは、早めに受診してください。重いつわりでは、ビタミンB1の不足からウェルニッケ脳症(意識や目の動き、歩行の障害が起こる病気)になることがあり、系統的レビューでも報告されています。詳しくは「ビタミンB1が不足すると起こる病気は?脚気・ウェルニッケ脳症と糖尿病・心不全との関係」をご覧ください。

ビタミンB6がつわりに効くと聞くことがありますが、コクランの系統的レビューでは、ビタミンB6を含めてどの方法にも効果を示す質の高い根拠は足りないとされています。

妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、糖尿病、腎臓病、貧血などがある人や、薬を使っている人は、この記事の一般的な目安がそのまま当てはまらないことがあります。食事やサプリメントは主治医や管理栄養士に相談してください。

 

まとめ

  • 付加量は時期で変わります。エネルギーは後期に+450kcal/日、鉄は中期・後期に+8.5mg/日、葉酸は中期・後期に+240µg/日です。
  • 授乳中はエネルギーが+350kcal/日で、ビタミンA・C、亜鉛、ヨウ素などが増えます。
  • 妊娠を計画している時期から妊娠初期は、食事に加えて葉酸を400µg/日摂ることが望まれます。
  • 妊娠中はリステリア、トキソプラズマ、水銀が多い一部の魚、レバーなどのビタミンAの摂りすぎに注意します。お酒は授乳が終わるまで避けます。

 

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