トランス脂肪酸とは?多い食品と1日の目安(約2g)、体に悪いといわれる理由

トランス脂肪酸は、脂質に含まれる脂肪酸の一種です。マーガリンやショートニング、それらを使ったパンやお菓子に含まれることがあり、摂りすぎると心臓の病気のリスクが高まることが知られています。

この記事では、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)と、農林水産省・食品安全委員会の資料をもとに、トランス脂肪酸とは何か、多く含む食品、1日の目安、体によくないといわれる理由、日本人の摂取量と気をつけたいことを説明します。

 

トランス脂肪酸とは

脂肪酸のうち、炭素どうしの二重結合をもつものを不飽和脂肪酸といいます。不飽和脂肪酸には、二重結合のまわりの形の違いによって「シス型」と「トランス型」があります。自然界の不飽和脂肪酸のほとんどはシス型です。トランス型の二重結合を1つ以上もつ不飽和脂肪酸を、まとめてトランス脂肪酸と呼びます。トランス脂肪酸には、たくさんの種類があります。

食品に含まれるトランス脂肪酸は、でき方によって大きく2つに分けられます。

  • 油脂の加工でできるもの:液体の植物油などに水素を加えて、半固体や固体の油脂にする「水素添加」という加工の途中でできます。部分的に水素添加した油脂を使ったマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料にしたパン、ケーキ、ドーナツ、揚げ物などに含まれることがあります。植物油の臭いを取り除くために高温で処理する工程でもできるので、サラダ油などの精製した植物油にも微量に含まれます。
  • 天然にできるもの:牛や羊などの反芻(はんすう)動物の胃の中で、微生物の働きによってできます。そのため、牛肉、羊肉、牛乳、乳製品にも微量に含まれます。

トランス脂肪酸は、体の中でつくれない必須脂肪酸ではありません。食事摂取基準は「必要量は存在しない」としています。脂質と脂肪酸の種類については脂質の種類とは?単純脂質・複合脂質と飽和・不飽和脂肪酸、n-3系・n-6系の違いで説明しています。

 

トランス脂肪酸を多く含む食品

油脂の加工でできるトランス脂肪酸を含む食品

農林水産省は、市販の油脂や、油脂を原材料に使った加工食品のトランス脂肪酸の量を調べています。令和4・5年度の調査結果から、主な食品の値を示します。

油脂・加工食品のトランス脂肪酸(食品100gあたり、中央値)

食品 トランス脂肪酸 調べた製品での範囲
マーガリン 0.65g 0.33〜1.3g
ファットスプレッド 0.48g 0.20〜1.3g
ショートニング 0.61g 0.52〜0.86g
植物性油脂 0.64g 0.17〜1.5g
カレー・シチューなどのルウ 0.46g 0.09〜7.0g
ウエハース 0.46g 0.08〜1.3g
マヨネーズ 0.39g 0.09〜1.2g
クロワッサン 0.20g 0.12〜2.3g
ビスケット 0.18g 0.09〜1.1g
ドーナツ 0.16g 0.08〜0.35g
食パン 0.03g 0.03〜0.16g

※中央値は、調べた製品の値を小さい順に並べたときに真ん中にくる値です。マヨネーズにはマヨネーズタイプのドレッシングを含みます。調べた製品の数は限られているので、おおよその目安として見てください。

同じ食品でも、製品によって量に大きな差があります。たとえば、ルウは0.09gから7.0gまで、クロワッサンは0.12gから2.3gまで開きがありました。

食品会社がトランス脂肪酸を減らす取り組みを進めてきたため、量は以前より少なくなっています。平成18・19年度の調査ではマーガリンの中央値は8.7gでしたが、令和4・5年度の調査では0.65gでした。農林水産省は、以前の調査と共通する26品目のすべてで、値が同じか低くなっていたと報告しています。

天然のトランス脂肪酸を含む食品

牛肉や乳製品のトランス脂肪酸は、農林水産省の平成18・19年度の調査で調べられています。

牛肉・乳製品のトランス脂肪酸(食品100gあたり、中央値)

食品 トランス脂肪酸
バター 1.9g
生クリーム 1.1g
プロセスチーズ 0.89g
ナチュラルチーズ 0.81g
和牛(サーロイン) 0.77g
和牛(モモ) 0.29g
牛乳 0.089g
ヨーグルト 0.087g

※平成18・19年度の調査の値です。その後の調査は油脂の加工でできるトランス脂肪酸を含む食品が対象で、牛肉やバターなどは調べていません。

牛肉や乳製品のトランス脂肪酸の量は、製品による差が小さいと報告されています。

食品の100gあたりの量が多くても、1回に食べる量が少なければ、摂る量は多くなりません。農林水産省も、食品に含まれる濃度だけでなく、その食品を食べる量も考える必要があるとしています。

 

1日にどれくらいまでならよいか

食事摂取基準には目標量がない

日本人の食事摂取基準(2025年版)は、トランス脂肪酸の目標量を決めていません。日本人の摂取量は欧米より少ないと考えられ、日本人での健康への影響についての報告がまだ十分でないためです。

ただし2025年版は、これは今の摂取量のままでよいという意味ではないとしています。そのうえで、参考の値として、トランス脂肪酸は1日の総エネルギー摂取量の1%未満にとどめ、1%未満でもできるだけ少なくすることが望ましいとしています。

1%はおよそ2g

1%未満という目安は、WHO(世界保健機関)などが勧めている値です。農林水産省によると、日本人が1日に摂るエネルギーの平均は約1,900kcalで、その1%にあたるトランス脂肪酸の量は約2gです。

日本人の摂取量

食品安全委員会は、日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量を、総エネルギーの約0.3%と推定しています。厚生労働省のQ&Aによると、摂取量の多い上位5%の人でも、男性0.70%、女性0.75%で、1%を下回っていました。食品安全委員会の資料では、アメリカの平均は2.2%です。

食品安全委員会は、2012年の評価で、日本人の大多数は1%未満で、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられると結論しています。

 

トランス脂肪酸が体によくないといわれる理由

LDLコレステロールを上げ、HDLコレステロールを下げる

トランス脂肪酸を摂ると、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増え、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減ります。2025年版によると、同じ量を摂った場合、LDLコレステロールとHDLコレステロールの比を上げる影響は、トランス脂肪酸のほうが飽和脂肪酸より2倍ほど大きいとされています。

心臓の病気(冠動脈疾患)との関係

2025年版は、トランス脂肪酸を冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など、心臓に血液を送る血管の病気)のはっきりした危険因子の1つとしています。多くの人を追いかけた研究(コホート研究)をまとめた分析では、油脂の加工でできるトランス脂肪酸を最も多く摂っていた人たちは、最も少ない人たちに比べて、冠動脈疾患になるリスクが1.3倍でした。

カナダの研究者が観察研究をまとめた2015年の分析でも、トランス脂肪酸を多く摂る人ほど、亡くなるリスクが34%、冠動脈疾患で亡くなるリスクが28%、冠動脈疾患になるリスクが21%高いという結果でした(de Souza ほか、2015年)。冠動脈疾患との関係について、結果の確かさは「中等度」と評価されています。脳梗塞や2型糖尿病とは関係がみられませんでした。

これらの研究は、日本人よりトランス脂肪酸を多く摂っている欧米の人を主な対象にしたものです。日本人が摂っている程度の量で病気のリスクが高まるかどうかは、まだ分かっていません。

認知症との関係を調べた日本の研究

福岡県久山町の60歳以上の住民1,628人を約10年追いかけた研究では、血液中のエライジン酸(トランス脂肪酸の一種)が多い人ほど、認知症やアルツハイマー病になる人が多いという結果でした(Honda ほか、2019年)。2025年版もこの研究を取り上げています。ただし、関係があることを示した観察研究で、トランス脂肪酸が認知症の原因だと確かめたものではありません。

糖尿病とは関係がみられていない

2025年版によると、介入試験をまとめた分析では、トランス脂肪酸を摂っても数週間のうちの血糖値に変化はありませんでした。コホート研究をまとめた分析でも、糖尿病になる割合との関係はみられていません。

天然のものと加工でできるものの違い

上の2015年の分析では、冠動脈疾患との関係がみられたのは油脂の加工でできるトランス脂肪酸で、牛肉や乳製品に含まれる天然のものでは関係がみられませんでした。研究者は、加工でできるものを摂る量のほうが多いためと考えています。

一方、2025年版と農林水産省は、天然のものと加工でできるもので体への影響が違うかどうかは、まだ十分に分かっていないとしています。WHOのファクトシートは、どちらも同じように害があるとしています。

なお、2025年版は、油脂の加工でできるトランス脂肪酸が人の体の役に立つことは知られていないとしています。

 

トランス脂肪酸を減らすための食べ方

脂質全体の摂りすぎに気をつける

日本人の多くはトランス脂肪酸の摂取量が1%未満ですが、脂質の多い食事をしている人は、トランス脂肪酸も多く摂っている可能性があります。2025年版も、脂質の多いお菓子を食べすぎるなど、偏った食事をしている人は注意が必要としています。

農林水産省は、トランス脂肪酸だけに注目するより、日本人が摂りすぎの傾向にある脂質そのものや食塩を控えることを優先すべきとしています。令和5年の調査では、脂質から摂るエネルギーの割合が目標量(20%以上30%未満)を超えていた人は、成人男性の約37.4%、成人女性の約46.4%でした。脂質の目標量は脂質の働きと1日の摂取量は?目標量(エネルギーの20〜30%)と飽和脂肪酸・n-3系・n-6系の基準、食塩は1日の食塩(塩分)は何gまで?目標量と減塩で下がる血圧|高血圧と食事の記事で説明しています。

具体的には、次のようなことが役に立ちます。

  • マーガリン、ショートニングを使ったパン、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、スナック菓子、揚げ物を毎日たくさん食べることを避ける。
  • いろいろな食品をバランスよく食べ、同じものばかりを食べない。
  • パンやお菓子は、商品によってトランス脂肪酸の量に差があるので、表示がある場合は確かめる。

飽和脂肪酸に置き換えない

トランス脂肪酸を減らした食品では、代わりに飽和脂肪酸が増えることがあります。食品安全委員会は、飽和脂肪酸の摂取量が目標量の上限を超えている年代があることに注意が必要としています。2025年版も、トランス脂肪酸を飽和脂肪酸に置き換えずに、平均の摂取量をさらに減らすことが望まれるとしています。

マーガリンをやめてバターにすればよいわけでもありません。上の表のとおり、バターにも天然のトランス脂肪酸が含まれ、調べた年は違いますが、その量(1.9g)は今のマーガリン(0.65g)より多い値でした。飽和脂肪酸の目標量は飽和脂肪酸とは?1日の目標量と摂りすぎによるコレステロール・心臓病への影響で説明しています。

WHOは、油脂の加工でできるトランス脂肪酸を含む油脂の代わりに、多価不飽和脂肪酸、次に一価不飽和脂肪酸の多い油を使うことを勧めています。多価不飽和脂肪酸についてはn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の記事で説明しています。

 

食品の表示と海外の規制

日本では、食品のトランス脂肪酸について、表示の義務も、量の基準値もありません。消費者庁は2011年に「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」を出し、食品会社に自主的に量を示すよう求めています。農林水産省によると、消費者庁は、食品100gあたり0.3g未満であればトランス脂肪酸を「0g」と表示できるとしています。

海外では、トランス脂肪酸の表示を義務にしたり、部分的に水素添加した油脂を食品に使うことを規制したりしている国があります。アメリカでは2018年から、部分的に水素添加した油脂を食品に使うにはFDA(米国食品医薬品局)の承認が必要になりました。

WHOは2018年に、油脂の加工でできるトランス脂肪酸をなくすための行動計画「REPLACE」を出し、各国に規制を呼びかけています。WHOのファクトシートによると、油脂の加工でできるトランス脂肪酸が原因で、世界で毎年27万8千人以上が亡くなっています。

 

脂質異常症や心臓の病気がある人は

LDLコレステロールが高い人や、心臓の病気がある人は、トランス脂肪酸だけでなく、飽和脂肪酸やコレステロールの摂り方にも気をつける必要があります。食事の内容は、医師や管理栄養士に相談してください。脂質異常症の食事については脂質異常症の食事とは?LDLコレステロール・中性脂肪を下げる食べ方と控えるもので説明しています。

 

関連記事

脂質の摂り方と生活習慣病の関係は?飽和脂肪酸・n-6系・n-3系・トランス脂肪酸と心臓病

脂質の種類とは?単純脂質・複合脂質と飽和・不飽和脂肪酸、n-3系・n-6系の違い

脂質の働きと1日の摂取量は?目標量(エネルギーの20〜30%)と飽和脂肪酸・n-3系・n-6系の基準

飽和脂肪酸とは?1日の目標量と摂りすぎによるコレステロール・心臓病への影響

n-6系脂肪酸(オメガ6・リノール酸)とは?働きと1日の目安量、心臓病・血圧との関係

n-3系脂肪酸(オメガ3)とは?EPA・DHAの働きと1日の目安量、多く含む食品

食事のコレステロールは1日どのくらいまで?多く含む食品と卵・心臓病の関係、脂質異常症の人の目安

脂質異常症の食事とは?LDLコレステロール・中性脂肪を下げる食べ方と控えるもの

 

タイトルとURLをコピーしました