大豆イソフラボンは1日何mgまで?豆腐・納豆の含有量と摂りすぎの注意、効果の根拠

大豆イソフラボンは大豆、特に大豆の胚芽に多く含まれる成分です。化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)に似ていることから、「植物エストロゲン」とも呼ばれます。豆腐、納豆、みそ、豆乳など、大豆からつくる食品のほとんどに含まれています。

大豆イソフラボンは、体に欠かせない栄養素(必須栄養素)とはされていません。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、摂る量の基準は定められていません。この記事では、食品安全委員会や厚生労働省などの資料をもとに、大豆イソフラボンの働き、食品に含まれる量、安全性の面から示されている1日の上限の目安、効果についての研究の結果、注意したい人を説明します。

 

大豆イソフラボンとは

大豆イソフラボンには、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインの3種類があります。食品の中では、ほとんどが糖の結合した形(配糖体)で含まれています。糖が外れた形は「アグリコン」と呼ばれ、みそや納豆などの発酵食品に多く含まれています。

配糖体として食べた大豆イソフラボンは、腸内細菌の働きなどでアグリコンになり、腸から吸収されます。そのため、食品安全委員会は大豆イソフラボンの量をアグリコンに換算して評価しています。配糖体の量に約0.625をかけると、アグリコンの量になります(例:配糖体10mgはアグリコン6.25mg)。この記事で示す量はすべてアグリコンに換算した量です。

 

大豆イソフラボンの働き

大豆イソフラボンのアグリコンは、エストロゲンと形が似ているため、細胞にあるエストロゲンの受容体(エストロゲンが結合して働く場所)に結合します。結合すると、エストロゲンに似た働きをしたり、反対にエストロゲンの働きを妨げたりします。

食品安全委員会「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」によると、この働きにより、骨粗しょう症の予防や更年期障害の軽減などに役立つと言われています。ただし、ヒトでの研究の結果は次の「期待されている効果と研究の結果」で説明するように、効果がはっきりしないものもあります。

 

大豆イソフラボンを多く含む食品

食品安全委員会の資料には、大豆食品100gあたりの大豆イソフラボンの量(平均)が示されています。原料の大豆の種類や製造方法によって、量は大きく変わります。

大豆食品に含まれる大豆イソフラボンの量(アグリコン換算)

食品 100gあたりの量(平均) 調べた製品の幅
きな粉 266.2mg 211.1~321.4mg
揚げ大豆 200.7mg 1製品のみ
大豆 140.4mg 88.3~207.7mg
凍り豆腐 88.5mg 1製品のみ
納豆 73.5mg 65.6~81.3mg
煮大豆 72.1mg 69.0~74.7mg
みそ 49.7mg 12.8~81.4mg
油揚げ類 39.2mg 28.8~53.4mg
豆乳 24.8mg 7.6~59.4mg
豆腐 20.3mg 17.1~24.3mg
おから 10.5mg 1製品のみ
しょうゆ 0.9mg 0.7~1.2mg

※厚生科学研究「食品中の植物エストロゲンに関する調査研究」(1998年)の値で、食品安全委員会のQ&Aに掲載されているものです。

厚生労働省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」では、豆腐1丁を350g、納豆1食を45g程度としています。表の平均値で計算すると、豆腐1丁で約71mg、納豆1パック(45g)で約33mgになります。

日本人が大豆食品から摂っている大豆イソフラボンの量は、2002年の国民栄養調査からの試算で、1日16~22mg(中央値)です。多く摂っている人(上位5%)では、1日64~76mgでした。

 

1日に摂ってよい大豆イソフラボンの量

食事摂取基準には基準がない

大豆イソフラボンは栄養素ではないため、食事摂取基準には推奨量も耐容上限量(これ以上摂ると健康障害のリスクが高まる量)もありません。「1日にこれだけ摂るとよい」という公的な目安はありません。

食品安全委員会が示した上限の目安

食品安全委員会は2006年に、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品(トクホ)の安全性を評価しました。その中で、次の2つの量を示しています。

食品安全委員会が示した大豆イソフラボンの量(アグリコン換算)

項目 量 意味
安全な一日摂取目安量の上限値 1日70~75mg 食事とサプリメントなどを合わせた、1日の摂取量全体の上限の目安
安全な一日上乗せ摂取量の上限値 1日30mg ふだんの食事に加えて、トクホなどで上乗せして摂る量の上限

※どちらも「この量を摂るとよい」という量ではなく、「この量までにとどめる」という上限です。

70~75mgという値は、次の2つの考え方から決められました。

  • 日本人が大豆食品から長年摂ってきた量で、はっきりした健康被害は報告されていない。大豆食品から多く摂っている人(上位5%)の量が1日70mgだった。
  • イタリアで、閉経後の女性が大豆イソフラボンの錠剤を1日150mg、5年間摂り続けた試験で、子宮内膜増殖症(子宮の内側の膜が厚くなる病気)が起こる割合が高かった。この量の半分の75mgを上限とした。

上乗せの30mgは、閉経前の女性がふだんの食事に加えて大豆イソフラボンを摂った試験で、1日57.3mgを摂ったときに、血液中の女性ホルモンの濃度が下がり、月経の周期が長くなったことをもとに決められています。

豆腐や納豆を食べすぎても問題ない?

厚生労働省は、豆腐、納豆、煮豆、みそなどの伝統的な大豆食品については、長く食べてきた経験があり、大豆イソフラボンによる健康への悪い影響が問題になったことはないため、心配する必要はないとしています。食品安全委員会も70~75mgの上限値を超えたからといって、すぐに健康被害につながるわけではないとしています。

食品安全委員会が注意を呼びかけているのは、錠剤やカプセルなどのサプリメントで、大豆イソフラボンだけを食事に上乗せして摂る場合です。トクホ以外の健康食品は評価の対象になっていませんが、食品安全委員会は、同じ考え方を参考に摂りすぎないよう注意してほしいとしています。厚生労働省の指針でも、大豆イソフラボンを濃縮・強化した錠剤やカプセルなどの食品は、トクホと同じように扱うとされています。

大豆食品は、良質なたんぱく質のほか、カルシウムなども含む食品です。食品安全委員会は、大豆イソフラボンの量を気にするよりも、栄養素のバランスに気をつけて食べることをすすめています。

 

期待されている効果と研究の結果

効果についての研究は「大豆食品を食べること」を調べたものと、「大豆イソフラボンのサプリメントを摂ること」を調べたものに分かれます。結果は同じではないので、分けて考える必要があります。

更年期のほてり

米国国立衛生研究所(NIH)の国立補完統合衛生センター(NCCIH)「Soy」によると、大豆イソフラボンのサプリメントや大豆たんぱく質は、更年期のほてりの回数や強さを減らす可能性があります。ただし、効果は小さく、研究の結果は一貫していません。食品安全委員会のQ&Aでも、米国心臓協会が「更年期の症状を減らす効果は見られなかった」と評価したことが紹介されています。

骨の健康

NCCIHは、大豆イソフラボンは閉経後の女性の骨密度におそらく良い効果があるとしています。一方、米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)は2005年に、骨への効果には裏付けがないとしていました。骨粗鬆症を防ぐには、まずカルシウムやビタミンDなどを食事で十分に摂ることが基本です(骨粗鬆症の記事)。

コレステロール

NCCIHによると、ほかのたんぱく質の代わりに大豆たんぱく質を摂ると、コレステロールが少し下がる可能性があります。ただし、大豆イソフラボンだけでは同じ効果がないかもしれないとされています。コレステロールと食事の関係は脂質異常症の記事で説明しています。

大豆食品と病気の関係(日本人の研究)

国立がん研究センターは、日本人を含む研究をまとめて、生活習慣と病気の関係の根拠の強さを評価しています。2026年3月の評価結果では、大豆製品を多く食べることについて、次のように判定しています。

  • 循環器病(脳卒中・心筋梗塞)のリスクを下げる:女性で「確実」、男性で「確実」(ただし日本人の研究は不足)
  • 糖尿病のリスクを下げる:「ほぼ確実」
  • 死亡、乳がん、認知機能の低下・認知症のリスクを下げる:「可能性あり」

これは大豆食品を食べることについての評価で、大豆イソフラボンのサプリメントについての評価ではありません。また、大豆食品にはたんぱく質や食物繊維なども含まれているため、大豆イソフラボンの効果かどうかは分かりません。

乳がん

国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)では、大豆イソフラボンを多く摂っている女性ほど、乳がんになるリスクが低いという関連がみられました。この関連は閉経後の女性で特にはっきりしていました。

ただし、これは食事と病気の関係を調べた観察研究で、大豆イソフラボンが乳がんを防ぐと確かめたものではありません。NCCIHも、サプリメントで乳がんのリスクが下がることは示されていないとしています。米国心臓協会は、乳がんや前立腺がんなどの予防と治療について、大豆イソフラボンの効果と安全性は確立していないとしています。

 

大豆イソフラボンを摂るときの注意

サプリメントで摂るとき

  • サプリメントは、食事で摂る分に加えて1日30mgを超えないようにする(食品安全委員会の上乗せの上限)。製品の表示で、アグリコンに換算した量を確かめる。
  • NCCIHによると、副作用として、おなかの張り、便秘、下痢、吐き気がみられることがあります。
  • 大豆アレルギーのある人は、大豆を使った食品やサプリメントを避けてください。

妊娠中・子ども

食品安全委員会は、妊婦(妊娠している可能性のある人を含む)、乳幼児、子ども(15歳未満)が、トクホなどで大豆イソフラボンを食事に上乗せして摂ることはすすめられないとしています。動物に大豆イソフラボンを大量に与えた試験で、胎児や子どもの生殖機能への影響を示す報告があり、ヒトで安全な量が分かっていないためです。

豆腐、納豆、みそなどの伝統的な大豆食品は、大人と同じように、ほかの食品とバランスよく食べていれば心配ないとされています。

乳がんの治療中・乳がんになったことがある人

食品安全委員会のQ&Aによると、フランスの食品衛生安全庁は2005年に、乳がんの患者と、本人や家族に乳がんになった人がいる場合は、大豆イソフラボンの摂取を制限すべきとしています。乳がんの治療中の人や、乳がんになったことがある人は、サプリメントを使う前に医師に相談してください。

薬を飲んでいる人

NCCIHによると、豆腐やしょうゆなどチラミンという成分を多く含む大豆製品と、抗うつ薬の一部(MAO阻害薬)をいっしょに摂ると、血圧が危険なほど上がることがあります。病気で治療中の人や薬を飲んでいる人は、サプリメントを使う前に医師・薬剤師に相談してください。

 

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